2017 Fiscal Year Research-status Report
大規模通信系における通信容量の拡大と性能向上に関する研究とその応用
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17K06415
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
安 昌俊 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (90453208)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | チャネル推定法 / パイロットコンタミネーション抑制 / チャネル優先順位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はMassive MIMOシステムにおけるチャネル推定の性能向上と、挿入する参照信号の大幅な削減による通信容量の拡大、さらにMIMOシステムの検出法として広く検討されるQRM-MLD法のチャネルランキング順位の不完全性を低減し、常に最適なチャネル優先順位を得ることができる手法の確立を目指した研究開発である。 まず、直交化・多重化による参照信号削減方法についてですが、基本的冗長信号である参照信号を多く挿入することにより正確なチャネル応答を推定することができる。しかし、通信容量は挿入した参照信号に反比例し、減少してしまう。その問題を解決するため、研究代表者が既に提案した時間領域の周期性を利用した推定法に加えて、異なるチャネル間の応答を直交化・多重化することでさらに50%以上の参照信号の削減を可能にする方法を提案し、その有効性を示した。その結果は電子情報通信学会論文誌に採録された。 他にパイロットコンタミネーションの除去法についてですが、既知の参照信号を用いてチャネル推定を行なう際に他のセルからの信号による干渉を受けるため、正しく推定できない問題がある。多重セル環境下で複数のユーザーのチャネル状態を正確に推定するためには、他のセルからの干渉を除去する必要がある。さらに送信信号が他のセルにも干渉をあたえないように送信信号を制御する必要があるため、最適な送信ビームが選択されない可能が考えられる。その際、伝送量も制限されるため、送信ビームや送信電力制御と適応変調のような変調レベルの制御を組合せることで、他のセルに影響を与えない最適信号送信法と、他のセルからの干渉を除去する低演算・低遅延信号処理法を検討し、その有効性を示した。その結果は論文誌 Elesevier ICT expressに採録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した初年度の研究項目に対して、既に研究結果が得られており、おおむね順調に進展している。研究成果としても国内学会発表9件、国際会議の発表が5件、論文誌も2件と当初計画した研究成果を既に達成しております。
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Strategy for Future Research Activity |
Massive MIMOは約100本程度の送信アンテナからそれぞれ異なるデータが送信されるため、送られた信号の分離・復元に膨大な演算が必要となる。特に参照信号を減らした推定法では信号の分離・復元を繰り返し判定することで性能を改善しているために膨大な演算と大きな処理遅延が生じてしまう。そのため、複数のチャネル応答を簡単な演算でリアルタイムに処理する方法の提案が必要不可決である。その対策として平成29年度に検討した推定法に繰り返し判定を行なわず、時間領域でチャネル応答と雑音比に閾値を設けることで雑音の影響を減らす低演算推定法の提案とその有効性を明確にする。 また、今後IoTの普及に伴い急速な端末数の増加が予測される。IoTに用いられる端末には、簡易デバイスの使用が検討されている。提案チャネル推定法と検出法を協調通信やIoTに応用する際には、使用される簡易デバイスの個体差による信号の振幅と位相の変化が問題となる。特にA/D変換器の信号波形の揺らぎ(ジッタ)とI相やQ相信号の不平衡(IQインバランス)によるアナログ信号の不完全性から提案チャネル推定法において悪影響が及ぶため、簡易デバイスの個体差から生じるA/D変換器のジッタとIQインバランスによるアナログ信号の不完全性下でも正確なチャネル推定を可能にするアルゴリズムの提案とその有効性を示す。
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Causes of Carryover |
本年度、購入を計画したLabVIEW開発システムが当初計画額と比べ高騰しており、購入せず実験装置として利用可能な日本ナショナルインスツルメンツのComm Sys MIMO Teaching Bundleを購入したため、その差額が残った。平成30年度にはアカデミック版のLabVIEWと電子回路部品を購入し、研究を進める予定である。また、予算の一部は学会等での成果の発表などにも利用する予定である。
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Research Products
(17 results)