2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a polarization- and frequency-controllable circularly polarized antenna by means of zero-phase-shift line actualized by cross-shape-loop structures
Project/Area Number |
17K06426
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
松永 真由美 東京工科大学, 工学部, 准教授 (30325360)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 円偏波アンテナ / ミリ波アンテナ / 偏波制御 / 指向性制御 / 多周波多偏波アンテナ / 内蔵アンテナ / 第5世代移動通信システム |
Outline of Annual Research Achievements |
アンテナをクロスループ構造とすることでもたらされる物理的効果と、そのメカニズム、そして効果的な応用に関する研究を行っている。 昨年度までに、クロスループ構造は、位相回路を用いず1点給電で円偏波を送受信できるアンテナの設計に有効であることを示した。また、これはクロスループ構造には零位相分散特性があることに起因しており、零位相となる周波数前後では、アンテナの偏波特性が、直線-->右旋円偏波-->左旋円偏波と変化し、その後再び直線偏波となることを明らかにした。今年度は、まず、アンテナエレメント上の電流分布の細かな分析を行い、零位相分散特性の効果であることを示し、また、インピーダンスの周波数分析を行い、周期的に接続されたインダクタンスとコンダクタンスの等価回路を用いて説明できることを明らかにした。つまり今年度得られた考察により昨年度までに提案理論により設計した様々なアンテナの理論的動作原理を物理的に説明する事ができたということである。 これらの物理的効果とメカニズムの解明に基づく知見を基に、効果的な応用として、多周波多偏波アンテナや第5世代移動通信システム(5G)のアンテナへの応用が適していると判断し、今年度はその実用化設計と実験的検証も行った。 昨年度までは、150MHzから2GHzまでの幅広い帯域の複数の周波数で所望の旋回方向の円偏波や直線偏波をもつ多周波多偏波アンテナの設計に成功していた。今年度は、これを応用し5Gに対応した6GHzまでの多周波アンテナの設計を行った。 昨年度は特に、28GHz帯のアンテナ設計と、そのメインピームの放射方向を制御する研究に取り組んだ。今年度は、携帯端末内蔵用のアンテナ設計に成功し、携帯機器の筐体や周辺回路の影響を受けにくいアンテナ構造、配置方法、給電方法を提案した。今後は、所望の方向へ指向性を制御できるアンテナ構造の提案とその実証実験を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物理的なメカニズムに基づくアンテナ開発やその周辺回路の設計については順調に進展している。また、申請時に予定していた2GHzまでの移動通信機器用アンテナの設計とその試作および特製実験も概ね完了している。 しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、昨年度および今年度、当初の計画以上に進展するために設計した、5GHzから28GHzの5G移動通信機器用アンテナについて、その試作およびその特性実験が実施できず、実証実験やその結果に基づくフィードバック研究の実施ができなかったことから、おおむね順調に進呈していると区分した。 現在開発中のアンテナは、プリント基板を用いて製作しており、そのエッチング加工は外注している。また、東京工科大学には伝搬暗室がないため、研究の中心課題である偏波特性の実証実験は、京都大学において実施している。しかし、緊急事態宣言が発出された地域間の出張が禁止された期間が長かったため、エッチングの外注や京都大学における測定をほとんど実施することができなかった。 次年度予定している研究内容は、当初の計画以上に進展した成果として得られている5GHzから28GHzの5G移動通信機器用アンテナの試作と実験であり、これが完了すれば、本課題によって得られる研究結果の波及効果は高くなるため、今年度実施できなかった部分については、当初の計画以上に進展した成果の部分の遅れであり、全体的には現在までに概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに設計した5G移動通信機器用アンテナの試作と実証実験を実施し、提案しているクロスループ構造を用いたアンテナ設計法と実用化例の公開を行う。 開発中のアンテナは、プリント基板を用いて試作し、また、京都大学生存圏研究所が所有する電波暗室A-Metlabにおいて実証実験を行う。 試作アンテナを用いた実証実験は、繰り返し行い、詳細なデータ分析によりアンテナ性能を実用化可能なレベルに高度化する。また、これらの実証実験結果により裏付けされたアンテナの特性を学術論文として発表し、クロスループ構造を用いたアンテナ設計法と実用化例を広く公開する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で当初実施する予定であった、開発中のアンテナの試作および実証実験をほとんど実施することができず、学術論文として発表するために必要な測定データを得る事ができなかった。このため、次年度使用額が生じた。 本課題の期間延長申請をし、次年度への延長が認められている。次年度使用額については、課題延長期間において、本年度ほとんど実施できなかった開発中のアンテナ試作とそれを用いた実証実験の必要として用いる予定である。また、研究成果の公表を行う為の学術誌への投稿費としても支出する予定である。
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