2018 Fiscal Year Research-status Report
移動通信の3次元セル構成のためのビル間干渉量推定の研究
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17K06428
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
市坪 信一 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30457452)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電波伝搬 / 伝搬損失 / 建物侵入損失 / 周波数特性 / 移動通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
携帯電話のサービスエリアを空間的に構成する3次元セル構成では、異なるビル内にある基地局間の干渉量の推定が必要である。このため本研究では屋内から屋内への伝搬損失の推定法の確立を目的にしている。これまでに150MHz, 440MHz, 1.2GHz, 5.8GHzの建物侵入損失の周波数特性を明らかにしてきた。この検討で150MHzや440MHzの低い周波数では窓から室内に入るに従って損失が増えることがわかっている。この原因について平成30年度は検討を行った。 低い周波数で損失が増える原因を調べるために室内の配置物(机や椅子)の影響を調べた。150MHzと440MHzを用いて窓からの距離を4m~14mまで変えて、机や椅子が有る場合と無い場合の侵入損失を測定した。この結果、机や椅子の有無による差は見られず、机や椅子は原因ではないことがわかった。 実際の部屋では原因がわからないため、部屋の環境を変えられるスケールモデル実験を行った。コンクリートブロックを用いて1/30の縮尺の室内を作成した。室内は空洞であり、窓枠や天井、床、側壁から構成される。これにより天井や床などが有る場合と無い場合を比較することで、これらの影響を調べることができる。実験では5.8GHzを用いたので、得られる損失は1/30の193MHzに相当する。1/30の部屋では実環境と同程度の結果が得られ、スケールモデルで実環境を再現できることがわかった。また、窓枠だけの場合は物理光学近似の計算結果と合うことを確認した。しかし、窓枠と床だけの場合は窓枠だけと同じ結果になり、床の影響がみられなかった。床や天井、側壁の反射波の影響を取り除くために、複数の窓枠を並べただけの環境を作って測定したが、1枚の窓枠だけの結果と同じになった。このように、スケールモデル実験を行ったが、低い周波数で損失が増える原因を明らかにするには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度には実際の都市での測定を行い伝搬データを順調に収集することができた。平成30年度には都市での追加測定や侵入損失の物理的なメカニズムの検討も行ってきた。実際の室内における測定だけではなくスケールモデルによる実験も新たに追加して行った。しかし、まだ低い周波数で損失が増加する物理的なメカニズムを明らかにするまでは至っていない。この点は進捗が遅れている。実際の室内での実験においては、遠方の送信点から室内までが見通しで、室内の窓から部屋の奥までが15m以上ある環境が必要である。この実験条件に合う部屋を確保するのが難しい点も検討が遅れている要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は最終年度でありまとめを行う計画であった。しかし、物理的なメカニズムが明らかでないので、引き続き実験や検討を行い伝搬特性のモデル化まで進める。スケールモデルを用いた実験では周波数や部屋の材質、スケールサイズなどを変えた実験が考えられるので、これらの実験を進めていく。また、物理光学近似によるシミュレーションも検討する価値があると思われるのでスケールモデル実験と合わせて進めていく。
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