2017 Fiscal Year Research-status Report
Massive MIMO高密度ネットワークに関する研究
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17K06435
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
林 海 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40336805)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 無線ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
スマートフォン等の高性能かつ多機能な携帯無線通信端末の普及に伴い,近年,移動通信の通信量が爆発的に増大し,また近い将来IoTに生じる大規模接続を考慮すると,膨大な通信量に対応できる無線システムの開発は急務である.無線通信分野の最新研究動向は現在の千倍ものネットワークスループットを目指し,主に使用帯域の拡張,スペクトル効率,ネートワック構成の三方面から対策を考えていく.通信容量の大幅増加を達成するには,上記技術の組み合わせが必要となる.その中で,BSやアクセスノード密度の増大,即ち高密度ネットワークの効果は特に顕著である.一方,従来のMIMO方式から発展した超多素子アンテナを利用するMassive MIMO方式はスペクトル効率向上の他に,エネルギー効率や信頼性などにも大幅に性能向上ができ,近年のMIMO技術のブレイクスルーとして認識されている.素子を密集する超多素子アンテナは,波長が短いマイクロ波帯あるいはミリ波帯を使用する必要があり,Massive MIMO方式はユーザとBS間の距離が短いスモールセルに適切である.
本年度はMassive MIMO方式のBSとスモールセルの両方を用いたマイクロ波帯の高密度ネットワークを研究した.マイクロ波帯の高密度ネットワークにおいては,ニアフィールドとファーフィールドではパスロス指数が変化し,より精度の高いDual-slopeパスロス関数を考慮する必要がある.本研究では,ダウンリンクでの信号対干渉雑音比にDual-slopeパスロスモデルやポアソン点過程を導入し,性能評価指標であるカバレッジ確率を新たに導出した.また,導出した関係式を用いて,カバレッジ確率に対する基地局密度や基地局アンテナ数の影響を分析した.さらに,マイクロ波帯とミリ波帯両方に適応可能なハイブリッドプレコーディング法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はMassive MIMO方式のBSを用いた高密度ネットワークを対象とし,その性能を分析し,適切なダウンリンクプレコーディング方式を提案するものである.そのため,高密度ネットワークの正確なモデリングが最も重要である.素子を密集する超多素子アンテナは,波長が短いマイクロ波帯あるいはマイクロ波帯を使用する.マイクロ波とミリ波の伝搬特性が異なるため,それぞれの高密度ネットワークの分析が必要である.
一般的にマイクロ波帯の伝搬損失は、ある一定のパスロス指数に従って減衰するとしてモデル化される.しかし,高密度環境では通信距離の長いところ(ファーフィールド)と短いところ(ニアフィールド)ではパスロス指数が異なるため,2種類のパスロス指数で表現することが適切である.マイクロ波帯の高密度ネットワークの分析においては,このパスロス指数の変化を考慮し,より精度の高いDual-slopeパスロス関数を採用する必要がある.本年度はDLでの信号対干渉雑音比にDual-slopeパスロスモデルやポアソン点過程を導入し,性能評価指標であるカバレッジ確率を新たに導出した.また,導出した関係式を用いて,カバレッジ確率に対する基地局密度や基地局アンテナ数の影響を分析した.
一方,超多素子アンテナに必要な回路規模が大きく,プレコーディングの一部を位相シフタのみのアナログプレコーディングで実現するハイブリッドプレコーディングは有効なコスト削減策である.本年度は,アレー信号処理の視点から,新たにアナログプレコーディングとデジタルプレコーディングの設計法を開発し,ハイブリッド構造における低複雑度のチャネル推定法を提案した.提案法はチャネルの基本的な物理特性を活用し,非直交角度領域からチャネルを推定し,プレコーディングを設計することによって,高い性能を持ち,マイクロ波とミリ波の高密度ネットワークに適応可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画は以下の三方面から研究を推進していく予定である.まず,チャネル推定誤差を考慮した高密度ネットワークの性能を分析する.チャネルコヒーレント時間内に直交するパイロットの個数が限られているため,チャネル推定にはパイロット信号の再利用が必要となる.隣接するセル間のパイロット再利用はパイロット干渉問題を引き起こし,特にMassive MIMO方式ではパイロット干渉が固有な難題とされている.今までの研究では理想的なユーザチャネル情報を仮定しており,カバレッジ確率の分析にパイロット干渉の影響が考慮されていない.本研究はパイロット干渉が発生した際,信号対干渉雑音比の関係式を導出し,カバレッジ確率を分析する予定である.
次に,ハイブリッド構造におけるビームフォーミング誤差の影響を研究する.ハイブリッドプレコーディングはアナログビームフォーミングを行うため,実装中には位相シフタの精度により,生成するアナログビームに解像度の制限があります.ユーザの位置がビームの間に角度ずれがあった場合,チャネル推定と信号対干渉雑音比の両方に無視できない大きな影響が起こる.本研究はこの角度ずれがもたらした効果を数学モデリングし,チャネル推定精度やビームフォーミング利得,さらにカバレッジ確率への影響を考察する予定である.
最後に,高密度ネットワークではセル構造が不規則であるため,通常の規則形状のセル配置よりセル間干渉が強くなる場合が多い.複数BSが形成するBSクラスターを協調し,ユーザ群へ送信する,即ち仮想セルを構成するのは干渉を抑圧し,通信容量向上に有効な手法である.仮想セルにおけるパイロット干渉を考慮したチャネル推定とプレコーディングの関係を解明し,パイロットを共有するユーザで形成する多層仮想セルのレベルでネットワーク性能の分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
シミュレーションソフトのライセンスの購入は次年度8月に変更したため
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Research Products
(10 results)