2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on Landslide Disaster Monitoring Networks using 920 MHz Band Wireless Links
Project/Area Number |
17K06437
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
西 正博 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30316137)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 土砂災害 / 920MHz / 無線ネットワーク / 電波伝搬 / ガスセンサ / 土壌水分量センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではIoT無線ネットワーク技術として現在注目されている920MHz帯特定小電力無線リンクを用いた土砂災害前兆モニタリングネットワークを開発することを目的としている.本ネットワークでは山林に分散配置したセンサノードと外部ネットワークへ接続されているゲートウェイ間を920MHz帯無線リンクで接続し,面的に土砂災害の危険地域を監視することが重要である.またセンサノードとしては地鳴りや山鳴りを対象とした音圧や振動センサ,土砂の異様なにおいを対象としたにおいセンサ,および降雨により土砂に含まれた水分量を対象とした土壌水分量センサを設置し,長期連続観測を行い,各センサ値と土砂災害前兆現象との関連性を定量的に評価し,土砂災害の前兆をいち早く検知するシステムの開発を目指している.2018年度においては, 920MHz帯無線モジュールとシングルボード小型コンピュータ,およびGPSを利用した電波受信強度測定機により.実際に山中において送受信期間の距離を様々に変化させたときの電波受信強度を測定した結果から,伝搬距離損失特性を評価した成果を中国支部連合大会にて研究発表することができた.さらに複数のカメラシステムを920MHz帯無線リンクにて中継して,画像データを転送するシステムの開発も新たに行った.また,センサを用いた長期連続観測においては,本学の傾斜地に試験的なモニタリングシステムを構築し,2017年度より長期的に安定してガスセンサと土壌水分量センサデータを取得してきた.また2018年7月には広島市周辺で豪雨災害が生じており,システム周辺では土砂移動は伴っていない状況ではあるが,降水量が急増した際のデータを取得することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,920MHz帯特定小電力無線リンクを用いた土砂災害前兆モニタリングネットワークを開発することを目的として,初年度には920MHzの山中における電波伝搬特性の評価を始め,ネットワーク化のためのセンサ部を実装したノードの開発を行う予定であった.920MHz帯通信モジュールを組み込んだ小型コンピュータをベースとし,電波伝搬特性を評価できる機器を開発した.通信モジュールの特性を調査し,送受信期間の電波減衰量を見積もり,測定で得られた電波受信強度から,伝搬環境のみで生じる伝搬損失を導出した.これにより,山間部の傾斜地における920MHz帯の伝搬特性を評価することを可能と下.また,複数のカメラシステムを920MHz帯無線リンクで中継して画像データを転送するシステムを同じ小型コンピュータをベースに開発した.920MHz帯無線リンクでは32バイトでのパケット通信を基本単位としており,画像データを分割して受信機側で統合する機能を新たに開発した.しかしながら,通信速度が低いため,1枚の画像データを転送し終わるために1分間かかるため,今後は転送時間の短縮が課題と考える.本学に設置したモニタリングシステムにおけるセンサの長期的なデータ取得においては,豪雨時でのデータを取得できたが,土砂災害の前兆につながる変化は今のところ見つかっていない.ガスセンサについては気象(気温,湿度,風速)の影響を受けることが明らかとなり,今後,他のセンサの利用を含め,気象の影響を受けにくいセンサの開発を進めていく必要がある.また,地下の状況を把握するために地下20cmから15cm間隔で地下80cmまで計5つ設置した土壌水分量センサからは,深いほど降水量に対する反応が遅く,ある程度地下の土壌水分量の変化を定量化できた.浅いセンサにおいては,土壌水分量が晴天時に1日周期で変動することも確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた知見を基に,最終年度である今年度には,土砂災害前兆モニタリングネットワークを危険が予想される地域に実際に構築する.本ネットワーク設置箇所については,我々の研究グループが既に設置し,運用しているモニタリングシステムを候補とする.本システムを利用することで,新たに小型コンピュータとネットワーク機器を設置するのみで,モニタリングネットワークと外部ネットワークを接続するゲートウェイが実現できる.そして,土砂災害危険箇所の山林を面的にモニタリングするため,920MHz帯無線リンクを用いて,センサノードとゲートウェイを接続する.一つのゲートウェイに対して,複数のセンサノードを山林に配置することを想定し,920MHz 帯無線の電波伝搬距離特性を基に,通信可能距離範囲内に設置する.並行して,尾根や谷といった山地の中でも異なる環境での920MHz帯電波伝搬特性を実測することで,汎用的な伝搬モデルの確立を目指す.モニタリングネットワークが安定的に稼働させながら,複数年連続して土砂災害前兆と考えられているにおいに関するデータをガスセンサにより取得する.得られたデータは,3G回線およびインターネットを介して,広島市立大学のサーバに自動的にアップロードする仕様とし,各データを降水量などの気象データとの比較を行い,土砂災害の危険度との関係性を調査する.また,各センサから得られたデータの季節変動のみならず,センサノードとゲートウェイ間の920MHz帯電波のRSSIも長期連続で測定し,電波伝搬の季節変動もあわせて明らかにする.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,学会発表に他の助成金や大学の教員研究費が利用できたことが挙げられる.今年度には,新たに現地にてモニタリングシステムを設置する予定であり,現地での無線ネットワーク構成のための機器や新たなセンサのための物品費,および成果発表のための旅費,新たなモニタリングシステムのための通信費の予算を執行していく予定である.
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Research Products
(5 results)