2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K06449
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三好 誠司 関西大学, システム理工学部, 教授 (10270307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶川 嘉延 関西大学, システム理工学部, 教授 (30268312)
本仲 君子 関西大学, システム理工学部, 助教 (70781772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統計力学 / 信号処理 / 適応信号処理 / ボルテラフィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、統計力学的アプローチにより適応信号処理の挙動を理論的に解明し、新しいパラダイム「信号統計力学」を創生することをその目的としている。2年目である2018年度は2017年度の成果をもとに特に未知システムが非線形性を有する場合の適応信号処理について研究を進展させることができた。 2017年度は未知システムPとして2次のボルテラフィルタを対象とし、これを同じく2次のボルテラフィルタとして構成される適応フィルタHで同定する場合のシステムのふるまいについて、統計力学的な手法を用いて解析した。2018年度はその解析をボルテラフィルタの次数に関して一般化し、未知システムPと適応フィルタHがともにk次(一般次)である場合に適応フィルタHをLMSアルゴリズムで更新する場合の二乗平均誤差の動的振る舞いを記述する連立微分方程式を、タップ長無限大の極限を考えることにより決定論的に導出し、これを解析的に解くことができた。これにより、k次ボルテラフィルタを用いる適応信号処理システムの二乗平均誤差の動的振る舞いを定量的に説明することに成功した。 特に重要な点として、2次のボルテラフィルタの場合から予測されたようにk次のボルテラフィルタの場合には更新回数をタップ長Nのk乗でスケーリングすることによりタップ長に依存しない議論が可能になることが明らかになったことがあげられる。このことは高次ボルテラフィルタの本質的な遅さを理論的に示したことを意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄に書いたように、未知システムが非線形性を有する場合、具体的にはk次のボルテラフィルタである場合の適応信号処理についてその解析に取り組み、二乗平均誤差の動的振る舞いを記述する連立微分方程式を導出できたこと、また、それを解析的に解くことに成功したことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度、2018年度の二年間で一般次のボルテラフィルタから構成される適応信号処理システムの統計力学的解析に成功したが、解析を可能とするためにボルテラ核は乱数が密に詰まったベクトル、行列(3次以上ではテンソル)を仮定している。しかし実際の非線形システムのボルテラ核はそのような性質を有するとは限らない。そこで、今後はボルテラ核がたとえば帯テンソルであるような場合の解析に取り組む。また、能動騒音制御の解析への展開として、システムが二次経路を含む場合の解析に取り組む。これらの解析を通じて、統計力学的手法を用いて、信号処理の洞察的理解を目指す。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況: 学内経費等の有効活用により,物品費を使用する必要がなくなったため。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画: 2019年8月にタイで開催される国際シンポジウムや同月に米国で開催される国際会議で成果の発表を行うための旅費として使用する予定である。
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