2018 Fiscal Year Research-status Report
Framework Establishment of Bayesian Methodologies for QoE Estimation and Prediction in Multimedia Communications
Project/Area Number |
17K06454
|
Research Institution | Nagoya Industrial Science Research Institute |
Principal Investigator |
田坂 修二 公益財団法人名古屋産業科学研究所, 研究部, 研究員 (80110261)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | マルチメディア通信 / QoE / ユーザ体感品質 / ベイズ統計モデル / ベイジアンネットワーク / インターネット高度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,マルチメディア通信におけるQoE (Quality of Experience: ユーザ体感品質)を,各種要因を考慮して推定・予測するベイズ的方法論の枠組みを構築することである. 本年度(平成30年度)は,まず,研究実施計画に従って,(a) 単一QoE尺度について,ベイジアンネットワーク(BN)モデルとベイズ統計(BS)モデルとの比較の継続研究,(b)多次元QoE尺度ベイズ構造方程式モデル(SEM)の枠組み完成(力覚・音声・ビデオ通信)を行った.更には,当初の実施計画になかった,(c)力覚・音声・ビデオ通信におけるユーザ援用型QoS制御によるQoE向上方式の実験データ取得を行った. (a)は,当初実験計画から,基本的に全年度(3年間)に亘るものであったが,予想以上に難題であることが分った.平成29年度に一応の成果は得られたものの,今年度になってからBN・BSの各モデルによるQoE推定・予測値のp値や平均二乗誤差の計算,欠損評点数の予測精度への影響の評価などの必要性が明らかになり,これらの課題の研究を行った. (b)については,5段階評点をそのままカテゴリカルデータとして扱ったベイズSEMを構築した.オブジェクト移動とカスタネット叩きの二つの作業を対象とした.構成概念(因子)の識別可能性問題に焦点を合わせて,単位負荷係数法(unit loading)と単位分散法(unit variance)とを用いてモデルを解析した.オブジェクト移動作業の成果については,IEEE ICC2019に投稿し採録されたので,令和元年(2019年)5月に発表する. (c)は,次年度における目標“QoE因果効果の解明と因果推論”の数理モデル構築のための基礎データを取得したものである.この成果は,平成31年4月に電子情報通信学会コミュニケーションクオリティ研究会で発表された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「平成30年度の研究実施計画」は,すべて実施された.しかし,平成29年度から開始した“ベイジアンネットワークモデルとベイズ統計モデルとの比較”については,当初予想よりも難題であることが分り,平成30年度も研究を継続した.それでもなお明確でない点も残っているので,平成31年度(令和元年度)も引き続き検討を行う. 一方,当初の実施計画になかった,“力覚・音声・ビデオ通信におけるユーザ援用型QoS制御によるQoE向上方式”の実験データ取得は,平成31年度計画“QoE因果効果の解明と因果推論”の前倒し実施であり,計画よりも早く進展している. 以上を総合して,おおむね順調に進展していると判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書と交付申請書に記載のように,本研究の目標は,次の4点である.(1)単一QoE尺度ベイズ統計回帰モデルの枠組み完成(音声・ビデオ通信).(2)多次元QoE尺度ベイズ構造方程式モデルの枠組み完成(力覚・音声・ビデオ通信).(3)ユーザ属性や影響要因からQoEへの因果効果の解明と因果推論. (4)ベイジアンネットワークのようなグラフィカルモデリングとベイズ統計モデルとの併用による強力なQoE推定・予測手法の確立.目標(4)の達成は2段階で行う. 目標(1),(2)は,当初計画通り,それぞれ,平成29年度,30年度に達成された.目標(4)の 前半部分は,前述のように概ね達成されたものの,なお課題が残っているので,平成31年度(令和元年度)にも継続研究を行う.目標(4)の後半部分“グラフィカルモデリングとベイズ統計モデルとの併用による強力なQoE推定・予測手法の確立”については,平成30年度に関連研究の調査を行ったところ,現在の世界的研究状況の中では,因果推論のための構造的因果モデル(Structural Causal Model: SCM)の観点から捉えるのが適切であることが分った.そのため,目標(4)後半部分を目標(3)に吸収合併して,研究を推進する方策を取ることにした. なお,「研究実績の概要」に記載した“(c)力覚・音声・ビデオ通信におけるユーザ援用型QoS制御によるQoE向上方式の実験データ取得”は,名古屋工業大学・布目敏郎准教授との共同研究による成果である.これは平成31年度計画“QoE因果効果の解明と因果推論”の準備ともいえる.そのため,布目敏郎准教授を,平成31年4月から研究分担者とすることとした.この研究分担者追加は,平成31年2月26日付けで,日本学術振興会から承認を受けている(学振助―第892号).
|
Causes of Carryover |
「研究実績の概要」の箇所で述べたように,“(b)多次元QoE尺度ベイズ構造方程式モデル(SEM)の枠組み完成(力覚・音声・ビデオ通信)”の成果を,令和元年(2019年)5月に,IEEE ICC (International Conference on Communications)で発表する予定である.そのための出張旅費などを,次年度繰り越しとした. 次年度分助成金の使用計画は当初通りである.
|
Research Products
(2 results)