2019 Fiscal Year Research-status Report
時間・空間を制御した励起磁場からの微弱磁気信号イメージによる微小欠陥特定
Project/Area Number |
17K06467
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
作田 健 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (70221273)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 磁場制御 / SQUID / 雑音制御 / 磁気シールド |
Outline of Annual Research Achievements |
励起磁場を空間的時間的に制御することにより対象とする物体に磁場を印加して,磁化された対象物から発する磁気信号を検出することで,磁性異物や欠陥を検出することを目的とする本研究課題において,微小な信号をいかに効率よくかつ高速に検出するかが課題となる.当初からこの点について環境雑音対策が大きな問題となっていた.すなわち,環境雑音が大きいにもかかわらず,微小信号を検出するためSQUID磁束計の感度を高くすると,雑音磁場によって,フィードバック制御が効かなくなり,いわゆるSQUID FLL回路のロックがはずれる状態が頻繁に起きている.そこで,引き続き効率よく雑音を抑制するシステムの構築を進めるとともに,ディジタル計測システムの構築を進めた.雑音抑制について,これまでの,環境雑音成分の周波数領域処理とあわせて,高透磁率材を用いた磁気シールドボックスを併用したシステムの検討を行った. キャンセルコイルのレイアウトについて重点的に検討した.コイルをシールドボックス内部に配置したものが低周波域においての良好な提言が得られた.ただし,高周波域に過補償とみられる信号が発生しており,過剰な雑音低減は逆に信号帯域に影響を及ぼしている.そのため,この成分に対する対処の必要性があることが分かった. また,SQUID FLL回路のディジタル化にともない,計測システムもFPGA等によるディジタル化を図った.サンプリング速度と分解能のトレードオフさらに,データ記憶領域と転送速度などを検討したが,データ記憶と転送による遅延により,雑音除去など,必要なデータ信号処理を行うパラメータの最適化が必要であることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験環境の再構築に手間取られ,その結果測定器の不具合があり,システムの設計検討を十分行うことができなかった.このため,進捗状況は上記と判断した. 環境雑音対策について,従来から実施している動的雑音制御について,工業用途を考えたときにはコスト低減策として,動的雑音制御を主としていたが,実際には環境次第では,十分な雑音低減が実現できないケースもあり,高透磁率材料による磁気シールドを併用した場合の検討を行った.この磁気シールドボックスに動的雑音制御を付加することで,さらに20dB程度の雑音低下が実現した.この制御が信号検出に及ぼす影響も検討する必要はあるが,(信号強度の低下,ひずみの増加など),全体の雑音制御も有効に行えると考える. さらにSQUIDのFLL回路のディジタル化にともない,測定システム全体のディジタル化について検討を行った.DSPボードを利用して高速の信号処理により,データ収集,リアルタイム雑音低減処理,データ信号処理等を,一括してディジタル処理を行うことを目指した.リアルタイムで高精度の雑音処理を行うための,AD変換処理と信号データ処理のための大量のデータ保存の両立がボトルネックとなり,分解能と速度のトレードオフをうまく最適化する必要がわかった.今後,これらの最適化を図ったシステムを構築する. 位置特定処理においては,実測値との比較による性能向上に加え,AIによる機械学習を用いたシステムに拡張する準備を検討している.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの予定で実施が遅れている,核磁気共鳴システムの構造設計および磁気画像イメージの再構築を実施する.微小磁気信号検出において,常に問題となる環境雑音ではあるが,一定レベルのめどがついたと判断して,信号検出技術について,検討をすすめる予定である.システムの設計について,シミュレーションおよび実験データの収集により効率よく最適条件を求め,システムの構築を進める.そのため,ディジタル計測システムの構築をおこなう.ボトルネックとなるDA変換速度(サンプリングレート)と取得信号の転送保存速度のトレードオフについて,目的とするリアルタイム雑音低減処理とデータ信号からの磁気信号抽出に対する信号量について,検討に基づき,できるだけ最適化されたアルゴリズムによるプログラムフローの作成を行う. 一方,磁気画像イメージおよび欠陥イメージの再構築に関して,逆問題を解く様々なアルゴリズムを再検討し,磁場再構成に適したフーリエ変換,グリーン関数や可能であれば主成分分析や独立成分分析といった信号分離を図った上での再構成手法を取り入れ,より高速・高精度のアルゴリズムの採用を図るとともに,より簡単な処理でのイメージを推定手法も総合的に検討し,磁気イメージ像再構築の各手法を考案し性能を評価する. また,位置検出手法として,機械学習による位置検出のプログラムを設計する.磁気イメージとシミュレーションによって作成した学習用データを用いて,AIによる機械学習を用いた位置検出の最適を図るとともに,信号の特徴から物質の特性評価が行えないか検討を進める.
|
Causes of Carryover |
当初,SQUID磁束計による信号検出システムを使用して,購入予定の高周波発信器から信号を発生させる予定であった.しかし,予想以上に環境雑音が大きく,予定した発振器での信号検出の実現の可能性を確認する必要があると考えた.調査していくと,環境磁場測定システムに使用していたセンサの動作が不安定で,そのため十分な雑音処理ができていなかった.さらのより高度な信号処理を行うためのシステムについて動作仕様を明確にし,より適切なシステム構築のため来期に必要な資材の購入を行うこととした.
|
Research Products
(1 results)