2017 Fiscal Year Research-status Report
Measurements of piezoelectric properties in cancellous bone under ultrasound irradiation
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17K06479
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Research Institution | Akashi National College of Technology |
Principal Investigator |
細川 篤 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00321456)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海綿骨 / 圧電信号 / 超音波 / 電極 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、主として、超音波照射時に海綿骨で生じる圧電信号を検出するための「圧電セル」の改良と高音圧の超音波音源の作製を行った。 圧電セルは海綿骨試料を圧電素子として用いた超音波センサの一種であるが、従来の構造では海綿骨試料ごとに圧電セルを作製する必要があった。そこで、海綿骨試料を容易に交換できる構造を考案した。さらに、作製方法・手順をマニュアル化することで、常に一定水準のS/Nと精度の圧電セルが作製できるようにした。この方法・手順に基づいて実際に作製した圧電セルにおいて、海綿骨における圧電信号を観測できることを確認した。また、海綿骨試料の取り付け・取り外しを行った際に、圧電信号の振幅のばらつきは最大でも8%であった。さらに、海綿骨試料に取り付ける電極としてさまざまな材質、厚さの金属箔を用いた場合の圧電信号を比較して、圧電信号をより明瞭に観測することができる電極について検討を行った。 高音圧の超音波音源として、市販の圧電セラミックス(PZT)振動子を用いて、圧電セルと同様の静電遮蔽を施した構造の超音波送波器を作製した。以前に作製・使用していた超音波送波器と比べて、漏洩する電磁ノイズを1/10以下に抑えることができた。 これらの圧電セルと超音波送波器を用いて、海綿骨における圧電信号の振幅の測定を行い、海綿骨の間隙率および骨梁・間隙の平均横切長(MIL)との相関関係について検討を行った。その結果、圧電信号の振幅は主として間隙率に依存するが、微細構造の影響も無視できないことが示された。 さらに、試作の時間領域差分法(FDTD法)による圧電シミュレーションプログラムを用いて、圧電信号波形の数値シミュレーションを行い、実験で得られた波形と比較した。プログラムの修正を行うことで、シミュレーション波形と実験波形の間に定性的な一致が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の主要な目的である、圧電セルの改良と高音圧の超音波音源の作製を行うことができた。圧電セルについては、一定水準のS/Nと精度のものが作製できるだけでなく、海綿骨試料を容易に交換することができるようになった。海綿骨試料の容易な交換は、今後の効率的な実験進行につながると考えられる。加えて、従来の圧電セルでは困難であった実験(例えば、同一の骨試料に対して超音波照射の方向を変化した場合の圧電信号を比較する実験)も可能になった。高音圧の超音波音源については、当初の計画通りに、電磁ノイズの大幅な抑制を実現することができた。 さらに、平成30年度以後の研究で行う予定であった圧電シミュレーションプログラムの修正に着手することができた。 一方、当初に計画していた圧電特性の周波数測定については、圧電セルの改良に時間を費やしたことと想定よりもそれぞれの実験に時間を要したため、実施することができなかった。 以上のように、主要な目的については当初の計画通りに果たすことができた。また、当初の計画以上に進展した研究内容がある反面、計画通りに実施できなかった研究内容もある。これらを総合して、おおむね順調な進行であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、当初の研究計画通りに研究を進める予定であり、海綿骨における圧電測定の詳細な測定と圧電シミュレーションを行う。 圧電信号の測定については、まず、実施することができなかった圧電信号の周波数特性を測定して、周波数が圧電信号い及ぼす影響について検討を行う。次に、骨梁配向に対して超音波照射の方向を変化させた場合の圧電信号の変化について検討する。当初の計画では、圧電セルにおける海綿骨試料の交換が困難であったため、複数の異なる骨試料を用いて実験を行う予定であった。しかし、海綿骨試料の容易な交換が実現できたため、海綿骨試料の取り付ける方向を変化させることで超音波照射の方向を変化させて、同一の海綿骨試料で実験を行うことにした。ただし、想定よりもそれぞれの実験に時間を要することが判明したため、総合的に要する時間は当初の計画と大差がないと予測している。さらに、当初の計画とは異なり、海綿骨の間隙を満たしている流体の影響について検討する予定である。従来の圧電セルでは、海綿骨試料の間隙は空気(気体)で満たす必要があったが、実際の海綿骨は液体(骨髄)で満たされている。改良した圧電セルでは液体を満たすことも可能であると考えられるので、圧電セルの構造についてさらなる検討・改良を行った後に、海綿骨試料を空気以外の流体で満たした場合の圧電信号の観測を行う。 圧電シミュレーションプログラムの修正は、平成29年度に前倒しで着手することができた。しかし、シミュレーション結果は実験結果と定性的(傾向的)に一致しているが、定量的に一致しているとは言えない。したがって、シミュレーション結果が実験結果と定量的に一致するように、プログラムのさらなる修正を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年3月20日に行った研究発表(2018年電子情報通信学会総合大会)の旅費の確定が遅くなったため、購入物品の決定・注文が遅れて納品が4月になり、次年度予算からの使用となった。 実験用の機器と数値シミュレーション用計算機の周辺機器の購入によって、25万円程度をすでに使用している。残金の1万円程度については、4~5月に材料等の購入に使用する予定である。
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