2018 Fiscal Year Research-status Report
Measurements of piezoelectric properties in cancellous bone under ultrasound irradiation
Project/Area Number |
17K06479
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Research Institution | Akashi National College of Technology |
Principal Investigator |
細川 篤 明石工業高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (00321456)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海綿骨 / 圧電信号 / 超音波 / 間隙流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、超音波照射時に海綿骨で生じる圧電信号の実験的観測を行い、以下の三点について検討した。 1)海綿骨の間隙を満たしている流体の影響について:昨年度の実験では、海綿骨の間隙を空気で満たした状態で実験を行っていたが、実際の海綿骨の間隙は骨髄で満たされている。本年度の実験では、超音波特性が骨髄と類似している水で満たした状態で実験を行うことにした。海綿骨における圧電信号の観測は海綿骨を圧電素子とみなした一種の超音波センサ(「圧電セル」と呼称)によって行っているが、この圧電セルの構造を改良して、海綿骨の間隙を液体で満たすことを可能にした。改良した圧電セルを用いて、海綿骨の間隙を空気で満たした場合と水で満たした場合の圧電信号の比較を行った。その結果、水で満たした場合の圧電信号の振幅は、空気で満たした場合よりも数倍以上大きくなることが分かった。 2)圧電特性と超音波特性との関係について:海綿骨中を伝搬する超音波は、海綿骨の骨梁(固体)部分を伝搬する「高速波」と間隙(流体)部分を伝搬する「低速波」に分離することが知られているが、これらの二種類の波の伝搬と圧電信号の関係について検討した。その結果、圧電信号は主として、低速波の伝搬によって発生することが示唆された。 3)圧電感度の周波数特性について:圧電特性の周波数依存性を明らかにするために、周波数1~5 MHzにおいて間隙を空気で満たした場合の海綿骨の圧電信号の観測を行った(これまでの圧電信号の観測は1 MHzのみで行っていた)。その結果、周波数に対して圧電信号の振幅が減少する傾向が見られたが、これは超音波の照射面積が小さくなるためと考えられた。また、圧電信号のS/Nが低いことによって測定結果に大きなばらつきが生じており、圧電特性の明確な周波数依存性は観測できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は、海綿骨の構造および超音波特性が海綿骨で発生する圧電特性に及ぼす影響を明らかにすることを当初の計画に挙げていた。超音波特性が及ぼす影響についてはある程度検討できたが、構造が及ぼす影響については十分に検討できなかった。その原因として、圧電セルの作製および実験データの解析に時間を要したことが挙げられる。構造が及ぼす影響について検討するためには多数のさまざまな構造の海綿骨試料を用いた圧電セルを作製する必要があるが、一定水準のS/Nと精度の圧電セルを実現するためには丁寧な作製が必要であった。作製を簡略化して精度やS/Nが低くなると、データの解析に支障が生じる結果となった。 以上のように、当初の計画の一部は達成することはできなかった。しかし、実験に時間を要することは当初から想定しており、この問題は数値シミュレーションの実施によって解消することを来年度の計画に挙げている。したがって、「遅れている」ではなく「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度達成できなかった計画を実施する。具体的には、海綿骨の構造が海綿骨で発生する圧電特性に及ぼす影響を明らかにするための実験を行う。ただし、多数の海綿骨試料を用いて実験することは困難なので、代表的な構造の試料のみを用いることにする。また、本年度の成果において、海綿骨の間隙を満たす流体によって圧電特性が大きく変化することが示されたので、さまざまな流体で満たした場合の圧電信号の観測も行う予定である。その結果より、海綿骨における圧電信号の発生原理について検討を行う。 昨年度未達成の計画実施と並行して、当初の計画通りに数値シミュレーションを行う。特に、海綿骨の間隙を満たす流体の振る舞いは、圧電信号の発生原理において重要であると考えられるため、数値シミュレーションの支配方程式に追加する予定である。昨年度の圧電シミュレーションプログラムの試行において、シミュレーション結果は実験結果と定量的には一致しなかったが、この流体の振る舞いが考慮されていないことが原因であると考えられるので、その確認を行う。シミュレーション結果と実験結果がある程度一致するプログラムが作成できれば、実験では実施できなかったさまざまな構造の海綿骨における圧電信号の観測を数値シミュレーションによって実施して、海綿骨の構造が圧電特性に及ぼす影響の解明に役立てる。
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Causes of Carryover |
実験が計画よりも少し遅れており、実験後に行う数値シミュレーションの本格的な実施も遅れることになった。そのため、計算機周辺機器については、必要な時期に最新のものを購入するために次年度に使用することにした。
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