2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on an AC 100V quantum voltage standard device
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17K06481
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山森 弘毅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (00358293)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電圧標準 / ジョセフソン接合 / 窒化ニオブ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画書では電圧標準チップの高電圧出力化の手法として、ジョセフソン接合の高集積化と、マイクロ波分配回路の小型化の2点を目標としていた。ジョセフソン接合の高集積化については、接合アレー単位長さ当たりの接合数について2倍の高集積化を実現し、マイクロ波分配回路の小型化については、従来の15mm×4mmから15mm×2.5mmと約40%の専有面積の小型化に見通しを付けた。 高集積化を実現した次のステップとして、チップの総接合数を増やすのか、チップサイズを小さくしてウェハー当たりのチップ生産量を増やすのかについて、引き続き測定データを評価して判断する必要があり、この方針の決定必要なデザインを2次元電磁界シミュレータを用いて作成し、チップ作製に必要なレチクルの準備を終えた。 また、高出力電力化と同時に、動作マージンの改善の検討も行った。これまでは素子内のマイクロ波導波路の特性インピーダンスは50Ωで統一されていたが、これまでより2倍の特性インピーダンスである100Ωのマイクロ波導波路を用いることで動作マージンを改善する提案を行い、国際シンポジウムでポスター発表を行った。 加えて、素子の冷凍機への実装において、従来から問題となっていた熱応力による素子の破損について、安価で簡易な手法を提案し、数値計算で効果を検証した。また実際に素子を冷凍して熱応力による破損がないことを確認した。今後、素子の極低温評価を数多く実施する際にこの手法は大きく貢献すると考えており、本成果をH30年度に口頭発表と紙上発表を行うべく準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画では、電圧標準チップの高電圧出力化の手法として、ジョセフソン接合の高集積化と、マイクロ波分配回路の小型化の2点を目標としていた。ジョセフソン接合の高集積化については、3.4ミクロン角の正方形であったジョセフソン接合を、1.8μm×4μmと長方形とし、接合の長さを約半分に短縮することで、単位長さ当たりの接合数を約2倍の集積度向上を達成した。 一方、マイクロ波分配回路についても小型化のめどをつけることができた。電圧標準チップには多くのローパスフィルタやハイパスフィルタが使用されており、これらのサイズは1/4λに依存する分布定数回路であるため、小さくすることが難しい。そこで、分布定数回路を集中序数回路に置き換えて小さくする方法をマイクロ波分配回路に試した。具体的には、コプレーナ導波路とスリット導波路を組み合わせた集中定数型の電力分配回路を設計してレチクルを作製し電圧標準チップを作製した。設計には市販の電磁界シミュレータSonnetを用いた。まず、小型の回路で試作しその特性を評価したところ、均等にマイクロ波電力が分配できることを確認し、マイクロ波分配回路が小型化できることを実証した。 続けて、実際の規模のチップである10V出力のチップにおいてもこのデザインを導入し試作した。現在その特性を詳しく評価しているところであるが、このマイクロ波分配器とは別の部分で修正が必要であることがわかった。ただし、致命的なエラーではないので、さらなる改善点も同時に取り入れたデザインの修正を行い、次年度の実験の準備をした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は電圧標準素子の高出力電圧化に必要な、ジョセフソン接合の高集積化とマイクロ波分配回路の小型化について、シミュレーションによるデザインの検討と試作による評価でめどをつけた。H30年度は引き続き、動作マージン改善のためのいくつかの設計のアイディアを検討する。また計画書に記載の通り、電極材料である超伝導体の高品質化について、まずは基板材料にサファイアを用いてエピタキシャル薄膜を用いる等の手法で電極の品質改善を試みる。さらには作製歩留まりの評価・改善に取り組んで、研究期間内に100V量子交流電圧の実現に必要な電圧標準素子の開発にめどをつける。
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