2018 Fiscal Year Research-status Report
電磁力によるトルク計測技術を用いた万有引力定数の精密測定に関する研究
Project/Area Number |
17K06482
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
西野 敦洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (40415724)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 力学量計測 / 超精密計測 / キッブルバランス / 電磁力 / 万有引力定数 / 基礎物理定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電磁力による超微小トルクの計測技術によって、万有引力定数の精密な評価をすることが目的である。本研究の代表者は、先行研究においてプランク定数の絶対測定に関する研究で用いられているキッブルバランス法を応用した電磁力によるトルク発生装置(JSPS科研費1518018K)を開発している。本装置では、電圧測定モード(一様な磁場中に設置された矩形コイルを一定の角速度で回転させ、そのときに生じる誘導起電力と角速度から、矩形コイルを貫く全磁束及び誘導起電力が最大となる角度位置を求める)と、電流測定モード(先述の矩形コイルに電流を流してトルクを発生させる)の2つの実験を行い、国際単位系SIにトレーサブルなトルクを発生させることができる。初年度は、一様な磁束密度を形成するためのヘルムホルツコイルの設計・製作、高精度角速度・角度位置決め装置の開発をするなど、より微小かつ精密なトルクを発生させるために、先行研究で開発した装置の大幅な改良を行った。当該年度は、より精密な地場を形成するために、半導体レーザ、プログラマブル信号発生器、セシウム蒸気セル等を用い、ゼーマン効果による磁気測定システムを構築して地磁気の影響を評価した。そして、地磁気の影響をキャンセルするための三軸ヘルムホルツコイルを開発した。また、万有引力定数を評価するための重力源及び試験体を吊るすためのモーメントアームを設計・製作し、精密な長さの評価を行った。さらに、本装置で発生するトルクを用いたトルク変換器の評価方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、1 nN m以下への範囲拡大方法と不確かさ低減方法に関する研究開発を行う計画である。不確かさ低減については、前年度に開発した高精度角速度・角度位置決め装置について、自己校正型ロータリーエンコーダの原理に基づいた計測用ソフトウエアを開発した。また、半導体レーザ、プログラマブル信号発生器、セシウム蒸気セル等を用いた磁気測定システムを構築し、地磁気の影響を評価した。そして、その評価された地磁気をキャンセルするための三軸のヘルムホルツコイルを開発した。さらに、万有引力定数を評価するための重力源及び試験体を吊るすためのモーメントアームについて低膨張材を用いて製作し、精密な長さ評価を行った。この他、本装置が発生するトルクを用いたトルク変換器の様々な評価方法を開発し、それらの成果をまとめた論文を投稿した。なお、本研究の評価に使用したトルク変換器は、国内企業との共同研究で開発されたものである(特許出願中)。
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Strategy for Future Research Activity |
改良した電磁力によるトルク発生装置を用いた1 nN m以下のトルクの発生と、不確かさ評価を進める。万有引力定数の評価装置については、重力源及び試験体の選定及び装置への設置方法を決定する。さらに、その2物体間の中心間距離の測定方法に関する研究をすすめ、万有引力定数の評価実験を開始することを目標とする。
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Causes of Carryover |
平成30年度に開発を検討していた「万有引力による超微小トルク発生装置(重力源、試験体、テーブル等) 一式」について、装置の設計を見直し、部品ごとに製作する方針に変更をした。そのため、導入が遅れた部品についての次年度使用額が生じた。 使用計画については、個別に設計をすすめている部品について、早期に設計をまとめて製作を開始する計画である。
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Remarks |
西野 敦洋、日刊工業新聞「技術で未来拓く・産総研の挑戦(65)キログラム定義改定」、URL:https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00505403、2019/2/7
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