2018 Fiscal Year Research-status Report
Robust control system design of large-scale dynamical systems based on multi-dimensional hierarchical network modeling
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17K06487
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
小島 千昭 富山県立大学, 工学部, 講師 (00456162)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 階層的ネットワークシステム / デスクリプタシステム / 電力ネットワーク / 分散・協調制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、大規模な電力ネットワーク、交通ネットワーク、水道ネットワークに代表される社会インフラシステムを想定したシステムに対する消散性・受動性と安定性に関する検討を行った。 準備的な取り組みとして、大規模異種電力ネットワークのダイナミクスを効率的に捉えることができる理論的な枠組みの構築に関する考察を行った。このような電力ネットワークを数学的に抽象化したシステムの枠組みとして、サブシステムとネットワークシステムからなるネットワーク化された非線形デスクリプタシステムの定式化を行った。このシステムのデスクリプタ表現によって、ネットワーク構造を維持しながら、システムの効率的な解析と制御を行うことが可能となる。主要結果として、サブシステムの消散性に基づき、部分的な状態の局所漸近安定性と同期のための十分条件を導出した。また、構造保存モデルで記述された電力ネットワークにこの十分条件を適用し、電力ネットワークの制御系設計におけるそれらの有効性を示した。特に、この成果は非線形性を有する大規模複雑なシステムに対して、本研究課題の枠組みが有効に働く点を示唆するもので、本研究課題の今後の方向性を大きく切り開くものとなった。この成果は、国際論文誌SICE JCMSIに掲載された。 なお、上記の成果の交通ネットワーク、水道ネットワークを含む大規模社会インフラシステムへの拡張に関するモデリングや有限周波数特性に関して予備的な成果は得たものの、理論的に十分に整理された成果には至らず、平成30年度内での外部発表は見送った。この拡張に関しては、平成31年度以降の課題として残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に計画していた交通ネットワーク、河川ネットワークを含む大規模社会インフラシステムへの拡張については、「研究実績の概要」で述べたようにいくつかの予備的な成果を得たものの理論的に十分に整理された成果には至らず、平成31年度以降の課題として残った。電力ネットワークとこれらのネットワークの大きな違いは「流れ」を記述するダイナミクスが偏微分方程式を用いた流体力学モデルによって記述される点である。流体力学モデルを理論的にきちんと取り扱うためには、導出や結果の整理に時間がかかる点が想定される。さらに空間的な振る舞いに関する有限周波数特性や消散性についても明確化の必要がある。これらの点については平成31年度前半に時間を確保し、丁寧に結果の整理や検討を行うことで理論的な十分な成果に結実することが期待される。当初の予定では平成31年度はシミュレーションと実験による検証を想定していたため、本研究課題はやや遅れていると考えられるが、詳細な検討を丁寧に遂行することによって、平成31年度にキャッチアップできるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度 (H31) は、本研究課題の核として、「多次元階層的ネットワークシステムのロバスト制御系設計」に主として着手する。平成30年度において今後の課題として残っている多次元階層的ネットワークシステムの有限周波数特性に基づくロバスト制御系設計に関する検討のテーマ(i)を平成31年度の前半で遂行する。その後、応用に関するテーマ(ii),(iii)を進める。また、平成30年度に得られた予備的成果を整理することによって、外部発表も積極的に行う。 (i) 多次元階層的ネットワークシステムの有限周波数特性に基づくロバスト制御系設計の枠組みを構築する。さらに、階層性とネットワーク性の特徴を的確に盛り込んだ分散・協調的な設計法を導く。さらに、分散・協調的な多次元有限周波数KYP補題を導出することによって、本テーマで考えるロバスト制御系設計へと生かす。 (ii) 電力ネットワーク、交通ネットワーク、水道ネットワークからなる社会インフラシステムを考え、需要家の振る舞いや自然環境による不確かさに対しても頑健な制御系を構築する。特に、これらのインフラネットワークの運用のための施設(発電施設、上・下水処理場など)の配置やネットワーク構造を明確化する. (iii) (i)で説明した各種インフラネットワークはそのスケールの大きさのため、送電線、水道管などのインフラの内部状態の予測はとても難しい問題である。これらの予測に対して、多次元階層的ネットワーク性やこれまで得た分散・協調カルマンフィルタの知見を活用した予測と制御の技術を確立し,画像処理による可視化の可能性も検討する。
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Causes of Carryover |
本研究課題の申請当初は、提案する多次元階層的ネットワーク性に基づくロバスト制御系設計の適用対象として、大規模水道ネットワークを想定していた。しかし、平成30年度の取り組みの結果でとして、電力ネットワークや交通ネットワークも含むより広い社会インフラシステムへの適用可能性が判明した。この適用可能性によって提案する制御系設計を実社会に還元できる可能性が増加したこともあり、詳細に検討を行う必要がある。よって、平成30年度の助成金の一部を平成31年度に使用することとした。
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Research Products
(2 results)