2018 Fiscal Year Research-status Report
不確かな伝送遅延時間を持つサンプル値結合非線形システムの同期パターン制御
Project/Area Number |
17K06503
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小口 俊樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50295474)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 制御工学 / 複雑系 / 同期 / 非線形系 / サンプル値系 / ネットワーク / むだ時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,不確かな時変伝送遅延時間を持つサンプル値結合非線形システムの同期パターン制御のための理論構築を目的に,3つの差婦テーマの下で研究を遂行している.本年度は,3つのサブテーマのうち a) サンプル値遅延結合ネットワークシステムの同期問題 b)不確かな時変むだ時間サンプル値非線形システムの安定解析法,について主に検討を行った.特に,次の新たな結果を得た. まず二つの同一ダイナミクスをもつカオス系を同期サンプリングの下でサンプル値結合したシステムに対し,サンプリングタイムと同期条件の間の関係を検討し,サブシステムの強準受動性と収束的性質を保証するDemidovich条件の下で,同期条件としてサンプリングタイムと結合強度との間の関係式を導出した.この条件式は,遅延結合の際の結合強度とむだ時間に関する同期条件と同様の条件式として導出された.こレらの結果は,一部を国内会議で発表済みであり,その後の結果を現在,国際会議へ投稿している. また,実システムでの通信経路の一時的な断絶などを考慮するため,時変ネットワーク構造下での同期問題についても検討を行った.特に,非連結なグラフ構造を切り替えることにより,ネットワーク全体の完全同期が発生するための条件について検討した.ハイブリッドシステムの安定論を拡張し,同期問題と融合させることにより,ネットワーク完全同期のための十分条件と,それぞれの非連結グラフ構造での必要な滞留時間を導出し,得られた条件を数値例題で検証した.この結果については,国内会議で発表を行った. さらに,不確かな時変むだ時間サンプル値非線形システムの安定解析法について,近似線形化可能なクラスの非線形システムについて拡張した結果を学術雑誌に発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,研究実施計画に基づき,予定していた主要課題をほぼ解決して進んでいる.今年度は,結合を同期サンプリングによるサンプル値結合として検討を行ったが,各サブシステムの出力を非同期サンプリングにより実装した場合に対しても,1年目の結果と結びつけることで,拡張できることがわかっており,今後の遂行に特に問題は生じない.また,同期・非同期サンプリングのそれぞれの場合について,次年度検討する同期パターンについても,現在の方針通りで進められる見通しがついていることから,おおむね順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究経緯から,従来の計画通りに研究を遂行することを予定している. 2019年度は,本研究課題の最終年度であり,2017年度,2018年度の2年間に得た知見をもとに,サブテーマc)「不確かな伝送遅延結合を持つサンプル値結合非線形システムの同期パターン制御」に取り組む.本サブテーマで検討すべき課題は,さきの2年間で実施した二つのサブテーマの結果を融合することにより解決できる見通しであり,結果として,不確かな伝送遅延時間を持ち,同期・非同期サンプリングによるサンプル値結合により実現される非線形サンプル値結合ネットワークにおいて生じる同期の条件と,発生する同期パターン制御に対する理論を構築する. また,可能であれば,サンプル値結合について,これまでと異なるタイプのサンプル値結合について,遅延を含めずに結合のタイプの違いで生じる同期パターンの差異について解析を行うことを検討している.このことにより,実装されうる2タイプのサンプル値結合について,タイプの違いにより生じる同期パターンへの影響について明らかにすることができる. さらにこれらと並行して,サブテーマb)で得られた安定条件を用いて,移動ロボットの同期制御実験への実装を行い,本研究課題の実用的側面としての適用例を示し,本研究課題を通して得られた成果の実用性を検証する. 最後に,3年間を通じて,3つのサブテーマに基づき行った研究の結果をまとめ,成果の発表を行い,本研究課題のまとめとする.
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Causes of Carryover |
データバックアップ用メディア等の消耗品の購入時期を遅らせたために,次年度使用額が生じた.次年度に購入し,計画通りに作業を行う.
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Research Products
(9 results)