2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K06528
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
茂木 秀則 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80261882)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ロックフィルダム / 伝播速度 / 減衰定数 / NIOM法 |
Outline of Annual Research Achievements |
荒砥沢ダム(宮城県栗原市)は岩手・宮城内陸地震(2008/6/14,M7.2)や東北地方太平洋沖地震(2011/3/11,M9.0)などの著しい強震動を受けており,特に,荒砥沢ダムのほぼ直下で発生した岩手・宮城内陸地震では監査廊L1では1gを超える最大加速度が観測されている.本年度は既存の解析に加え,2019年12月までの観測記録を解析し,地震波の伝播速度を調べるとともに,減衰定数の変化を検討し,減衰定数の評価値が貯水位の変化に強く影響されることなどを述べた. その結果,(1)1997年1月から2001年10月までの地震記録の解析から得られた強震動以前の上区間のS波速度(上下流方向成分)は449m/s,P波速度(鉛直成分)993m/s,下区間ではそれぞれ608m/s,1,538m/sであること,(2)岩手・宮城内陸地震では主要動において上区間のS波速度は158m/sまで減少したこと,また,(3)その後の小地震では経過日数の対数にほぼ比例して伝播速度が増加し,ほぼ初期値まで回復するまで3年ないしそれ以上の時間を要したこと,(4)2011年東北地方太平洋沖地震においても同様の変化がみられるものの,主要動直後に残留する伝播速度の低下は岩手宮城内陸地震の場合よりも小さく,堤体に東北地方太平洋沖地震の大きな影響はないものと判断されること,また,(5)岩手・宮城内陸地震の主要動において上区間のせん断弾性係数が400MPaから50MPa程度まで低下(最大せん断歪0.1%)しており,下区間と比べて顕著な変化を示すのに対して,減衰比は下区間で岩手・宮城内陸地震の主要動部において10%以上の増加を示し,上区間と比べて顕著な変化を示すことなどを指摘した.上記の結果をまとめた論文を英文誌へ投稿し,現在査読中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
観測記録の解析はほぼ完了しているものの,遅れていた英文誌への投稿論文の執筆に向けて研究期間の延長を行い,本研究の最終結果と適用事例として英文の投稿論文を作成したが,予期できない学内業務の増加に伴い投稿が2021年1月になってしまった.現在査読中であるが,NIOM解析に基づく減衰比の評価についてより詳細な議論がもとめられており,減衰比をあらかじめ想定した波形の組を作成しNIOM解析を行うことで,解析の妥当性を検討している状況である.掲載の可否は不明であるが善処したい.
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Strategy for Future Research Activity |
投稿論文に対する修正意見への対応に集中したい.具体的には,上記の減衰比の評価に関わるより詳細な検討と,解析手法の妥当性を評価する上で不可欠となる震源の諸元や観測波形,堤体と堤体の位置する地盤条件に関わる詳細な説明の追加を行う予定である.
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Causes of Carryover |
予期できない学内業務の増加に伴い最終結果としてまとめる英文誌への投稿論文の執筆が遅れたため,次年度使用額が生じた.2021年度は修正原稿のrewriteなどの成果公表に関わる使用,ならびに,関連するソフトウェアなどの計算機用消耗品へ使用する予定である.
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