2017 Fiscal Year Research-status Report
不飽和粘土の水分および密度評価を目的とした超音波トモグラフィー技術の開発
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17K06534
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木本 和志 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30323827)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 粘土 / 超音波 / 水分量 / 密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベントナイト(クニピアF)粘土を用いて、所定の含水比を持つペレット状の水分不飽和供試体を作成する手順を確立した。具体的には、再現性のある計測を行うために、乾燥ベントナイトと純水を正確に計量して小型ミキサーで混合し、円筒状のモールド内で圧縮成型することで、直径30mm、厚さ10mm程度の円柱状供試体を作成した。今年度は、含水比17~25%の試料を計30体作成し、各々の試料について、実際の含水比を全ての実験が終了した後、炉乾燥を行って測定した。 このようにして作成した粘土試料を用いた超音波計測では、試料厚み方向に透過する縦波と横波について、弾性波速度と水分量及び密度の関係を調べた。超音波波形の測定には、周波数500kHz~1MHzの圧電超音波探触子を用い、パルス透過法によって実施した。得られた波形データは、周波数領域で解析することで、縦波および横波の群速度を算出した。その結果、縦波音速は300m/sec~1200m/sec、横波音速は250m/sec~550m/sec程度の値をとり、水分量と密度に対してともに増加傾向を示すことが明らかとなった。また、超音波計測は、試料作成直後と7日後に実施し、両者の結果を比較した。その結果、試料作成7日後に計測を行なった場合の方が、水分量と弾性波速度の関係がより明確であり、試料内の水分分布を均質化するための緩和時間をとることで、より信頼性の高い音速測定が可能となることが分かった。なお、水分量の指標には、飽和度や含水比、体積含水比等を用いることができるが、縦波計測結果は飽和度との相関がもっとも一貫しており、水分測定には縦波の利用が特に有効であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施した研究の結果、所定の含水比を持つ不飽和粘土試料を、正確かつ再現性を持って作成できることが示された。また、粘土試料は超音波に対して高減衰材として振る舞うものの、現有の標準的な超音波探傷装置で、縦波、横波ともに透過波を十分な信号強度で計測できることが分かった。さらに、計測波形を周波数領域で解析することで、客観的かつ定量的に縦波、横波速度が算出でき、その結果として得られた音速値は、密度と水分量に明らかな相関があることも明らかにすることができた。以上により、試料作成と弾性波速度測定は、研究計画時に想定した方法で実際に行なうことができ、計測結果も概ね期待した通りに試料密度と水分量に関する情報を含むことを確認できたことから、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立した試料作成および超音波計測の手順に従い、引き続き弾性波速度の測定を行い、十分なデータの蓄積を行う。これにより、試料密度および水分と、弾性波速度の定量的な関係を明らかにする。また、透過波計測は、試料の厚み方向だけでなく今後は幅方向に対しても行い、試料の音響異方性についての評価も行なう。同時に、実験によって得られた超音波の伝播挙動をより正確に理解するために、いくつかの代表的な試料については、X線回折試験と電気伝導度計測を行い、粘土鉱物と間隙水の微視的な水和状況を調べる。これら一連の計測データを元に、不飽和粘土における弾性波伝播メカニズムを詳細に調べ、弾性波伝播に影響を与える本質的なマクロパラメータを特定するとともに、その逆推定の可能性について検討を行う。
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Causes of Carryover |
H29年度の研究の結果、弾性波伝播挙動の解釈には、粘土の微視構造に関する情報を超音波計測以外の方法でも調べておくことが重要であることが分かった。そこで、当初購入(機能拡張)を予定していたレーザー振動計の代わりに、ケミカルインピーダンスアナライザを購入した。また、空間的に高解像度で正確な超音波計測を行うためには、レーザー振動計よりも圧電型のミニチュアプローブが適しているとの知見が、初年度の研究過程において得られた。ただし、ミニチュアプローブはオーダーメイドのものが必要となり、比較的高額であるため、H29年度予算の一部を用いて、H30年度に適切な製品を設計、購入することとした。以上が、次年度使用額が生じた理由である。
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Research Products
(2 results)