2018 Fiscal Year Research-status Report
非接触音響探査を用いたコンクリートの強度評価に関する研究
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17K06542
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
大平 武征 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (10744526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 和子 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60642171)
杉本 恒美 桐蔭横浜大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80257427)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非接触音響探査法 / コンクリート硬さ測定 / 振動エネルギー比 / スペクトルエントロピー / レーザドップラ振動計 / 長距離音響発生装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化が近年社会問題となり,そのメンテナンスとマネージメントが重要視されている。特にコンクリート構造物の維持管理のため,欠陥検査だけでなく強度評価も必要とされている。提案している非接触音響探査法は,コンクリート構造物のコンクリート表層内部の欠陥を,遠隔から検出するための非破壊検査法として研究されている。コンクリート内部のひび割れ・剥離・空洞などの欠陥を検出するためには,実は,コンクリート健全部の評価が不可欠であることが次第に分かってきた。我々の測定では,遠隔から非接触で,コンクリート面を音響加振し,レーザドップラ振動計による2次元的な振動速度分布を計測する。一般的なコンクリート健全部においてはデータ解析から得られた2つの音響学的特徴量(振動エネルギー比とスペクトルエントロピー)の統計分布が正規分布を示す事実を明らかにしてきた。今までの実験から,某トンネルの天井部と側壁部のコンクリート健全部において,音響学的特徴量の分布に差があり,弾性波速度やシュミットハンマーによる硬さ測定結果と相関していることが判明した。以上までの結果は,国内外の複数の学会で報告され,学術論文にも掲載された。 コンクリートはセメント・水・骨材・混和材料などで構成される複合材料で,形成材料の種類・品質・構成割合だけでなく,施工方法・養生方法・材齢などの条件が,コンクリートの強度を左右する。欠陥部に比べて,コンクリート健全部の2つの音響学的特徴量の分布の差は極めて小さいが,統計的に有意に差があるのかどうかを,硬さの異なるコンクリート供試体を用いて実験し,データ解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度(2年度目)は,3種類の異なる硬さ(設計基準強度16,30,45[N/平方ミリメートル])のコンクリート供試体を製作してコンクリート供試体における強度計測実験を行った。コンクリート強度は,水とセメントの水和反応によって時間をかけて発現する。水が供給され続ければ,水和反応は進行し,時間経過とともに強度は増大していく。コンクリート中の水が乾燥などによってなくなれば,水和反応は停止する。そのため、コンクリートは材齢28日を超えると,次第に硬さの変化が少なくなり,定常値に推移していくことが既に判明している。そこで,硬さだけでなく,養生ありと養生なしのグループに分け,作成直後からの材齢(1日,2日,1週間,2週間,28日,…)の硬さの経時変化を,非接触音響探査法による2次元面の振動速度の測定だけでなく,コンクリートコア圧縮強度試験・弾性波速度の測定を併用して計測した。また、それぞれの設計基準強度に達したコンクリートに対して非接触音響探査法により2次元測定も実施した。これらの結果より、経時変化する2次元的なコンクリート健全部の音響学的特徴量の分布情報を得ることができる。現在はデータ量が膨大なために、順次データ処理を行っている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は,コンクリートが時間経過とともに硬化して,養生期間後に硬さが安定してから,本測定に入る予定であった。しかしながら,研究関係者からの意見もあり,コンクリート強度供試体の打込み→締固めの後,養生(封かん養生)あり・なしの過程での経時変化も測定することになった。その結果,膨大な測定データを得ることとなったが,データ解析に時間を要し,まだ十分にデータを整理できていない状況である。引き続き,これらのデータ解析を進めるとともに,硬さの異なるコンクリート供試体の実験結果を比較検討して,統計処理に基づいた解析を行う予定である。今後の解析結果より,コンクリートの硬さ(強度)によって2つの音響学的特徴量の2次元分布に統計的に有意な差が見られれば,その結果を,過去に測定した実構造物のコンクリート健全部に対する測定データに適用できるのではないかと考えている。非接触音響探査法では,送信音波の作成条件(周波数帯域,周波数パルスの並び)や表面音圧,音源やレーザドップラ振動計から測定面までの距離といった条件も絡んでくるため,慎重に検討していきたいと考えている。また非接触音響探査法では,レーザドップラ振動計を用いた測定を行うため,コンクリート表面に凸凹がない状態が良い。コンクリートが十分硬化完了してから,シュミットハンマーで表面を傷める前に非接触音響探査法の測定を行った。最後に,シュミットハンマーによる硬さ測定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初はシュミットハンマーを物品費に計上して購入を予定していたが,硬さの異なるコンクリート(健全部)試験体を製作する外注費がどの程度かかるかが不明であったことと、実験回数による交通費および人件費の変化等に対応するために,購入を見送ったことが主な理由である。2019年度(3年度目)は圧縮強度との比較を行うためにシュミットハンマーを使用する予定ではあるが、研究の最終年度でもあるため,研究成果の国内外の学会シンポジウム等の発表を優先し、予算不足と思われる場合にはシュミットハンマーの借用も考慮する予定である。
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