2018 Fiscal Year Research-status Report
礫河川の土砂移動・河床近傍流れ・水温の通年・多地点モニタリング技術開発と現地計測
Project/Area Number |
17K06574
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
椿 涼太 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80432566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 祐嗣 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60301173)
尾花 まき子 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10447831)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 礫河川 / 圧力変動 / 河床 / 掃流砂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,礫河川が抱える河床環境上の問題発生要因を分析するため,平水から中小出水まで通年で,地点毎に異なる土砂移動や河床近傍の乱流を,素過程から定量的かつ緻密に把握する新たな計測技術を確立することである. 平成30年度は,河床近傍の乱流を計測する実用的な手法を開発した.具体的には,河床の粗面に作用している水圧の高精度・高周波数での計測を,実河川で実施するためのデバイスを,Dr.Jeffrey Tuhtan, Dr.Juan Fran Fuentes-Perez (the Tallinn University of Technology)と共同で開発した.デバイスは5cm角程度の水密容器に格納されたコントローラーと3つの絶対圧センサーにより構成され,20~50Hzでの計測が可能であり,3カ月程度のスタンバイが可能である.スタンバイからの復帰や再スタンバイは,水圧の閾値設定により調整可能である.このスタンバイ機能を実装することで,出水時のみ計測できるため,バッテリーや記憶容量を有効利用しつつ高周波数での計測が可能となる. これまで利用していた水圧センサーでは2Hzで半日程度しか連続計測ができず,また複数の水圧センサーの同期をとることができず,差圧を算定できなかった.新たに開発したデバイスでは,いつ起きるか事前に知ることができない自然出水を対象とした計測が可能であり,3つの全圧センサーは同時計測ができるため,差圧が算出でき,圧力変動を介した乱流現象の分析を実河川で実用的に実施できるようになった. 想定していたより高機能のデバイスを作成することができたが,水理実験や実河川での計測については最終年度に持ち越すこととなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は調査を予定していた出水イベントが実施されず,平成30年度は,作成していたデバイスの完成が年度内に終わらなかったため,水理実験や実河川での圧力変動の計測についてはとりかかれていない.圧力変動の計測デバイスは想定していたより高機能のものを作成することができた. その他に,平成30年度では,水中音響通信を用いたセンサーネットワークの基礎研究を行った.具体的には,M系列の疑似ランダム信号で位相変調したパルス信号の時間間隔によりデータ転送を行う通信方式を,平水時の河川において試験して,150m程度の距離で10%程度の欠測が確認された.平成29年度に実施した単側波帯振幅変調を用いた通信では100mの通信距離で13%程度の欠測が確認されたことから,位相変調したパルス信号方式は,送付できるデータ量は少ないが,実環境での通信可能距離が大きいことが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
圧力変動の計測デバイスを用いて6月に実施予定の出水イベントで現地調査を行う予定である.4台分の圧力変動計測デバイスを作成中であり,ハイドロフォン式土砂移動検出デバイスと組み合わせ,水深・流速の異なる地点に配置し,水位・流量の変化と,河床近傍の乱流や土砂移動状況との関係を実測する.6月の出水イベントの後は,直線的な河道区間において自然出水の計測を目指した連続観測を行う予定である. 連続計測と並行して,室内の開水路を用いて,河床近傍の圧力の計測を行って,その実験結果をもとに,現地調査で得られた計測結果の解釈を行う予定である. 以上の成果をもとに,(1)センサーネットワーク型の計測方法をベースとした礫河川の河床環境の実測方法を確立し,(2)出水時の河床で起きている土砂移動と乱流の相互関係を実証的に分析する.特に圧力変動を視点とした河床近傍の乱流の検討は,研究例が少ないが,本研究により実用的な実測が可能になったこともあり,多様な展開が期待できる.
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Causes of Carryover |
平成30年度中に執行予定であった,圧力計測デバイスの材料費などの,エストニアの共同研究者への送金が次年度に繰り越された.また,本年度に現地調査や学会発表を予定しておりその経費として使用する.
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