2019 Fiscal Year Research-status Report
適合格子細分化によるシームレス津波・高潮氾濫モデルの開発
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17K06577
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
李 漢洙 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (10535082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 適合格子細分化 / 津波伝播 / 津波遡上 / 津波変形 / シームレス氾濫モデル / 高潮氾濫 |
Outline of Annual Research Achievements |
津波・高潮などの長波数値計算では,水深が浅くなるにつれて複雑になる現象を精度よく再現するため,空間解像度の異なる複数の領域に対して同時進行的に計算するネスティング手法が一般的である.しかし,この手法は反射波や散乱波による数値誤差や計算不安定性とともに,大きな計算負荷と計算時間を要する欠点がある.適合格子細分化は,高い空間分解能を必要とする場所だけの格子を細分化するので,計算精度を向上しつつ計算効率を上げ,計算時間を大幅に短縮できる.本研究では,適合格子細分化を用い,津波・高潮の災害外力発生部から氾濫計算まで一括で計算できる,シームレス氾濫モデルを開発し,津波・高潮数値計算における高精度化・高効率化を目指している. 平成29年度の研究計画は数値実験を通し,津波計算における適合格子細分化法の適用性および効率性について,計算結果の精度,計算負荷および計算時間の観点から精査し,纏めた.その成果はIF付き論文2編,国際学会発表論文2編,国際学会発表2回,で発表した. 平成30年度の研究計画は適合格子細分化を適用した,2013年台風Haiyanによる高潮数値実験であり,この数値実験を通し,台風に追従した高解像度領域の適用性,そしてリアルタイムシミュレーションの可能性を検討することであり,計画通り進められ,その研究成果からIF付き論文4編,査読付き論文1編,国際会議発表論文3編,国際会議発表6回,その他(図書)2編,を発表した. 令和元年の研究計画は複雑地形と詳細な構造物を考慮した氾濫計算を通し,氾濫計算における有効性と効率性を検討することであり,その研究成果はIF付き論文6編,査読付き論文1編,国際会議発表論文1編,国際会議発表8回,その他(図書)1編,を発表した. さらに,以上の研究成果から適合格子細分化を利用したリアルタイムシームレス氾濫モデルの可能性を確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は3年計画であり,各年度の研究計画とこれまでの推進状況は以下のようである. 平成29年度は適合格子細分化による沿岸・河口部における津波変化特性に関する数値実験を行うことである.具体的には,円錐形の島における津波遡上数値実験と津波の河川遡上および越流数値実験であり,両方とも計画通り進められ結果を発表した. 平成30年度の研究計画は適合格子細分化を適用した,2013年台風Haiyanによる高潮計算であり,学生さんの卒論として取り組みながら,研究計画通り進められ研究成果を発表した. 令和元年の研究計画は複雑地形と詳細な構造物を考慮した氾濫計算であり,研究協力者が共同で行った水理実験詳細データを利用し数値計算を行い,水理実験測定データと比較することで,適合格子細分化の効率性と有効性検証を計画とおり行った. さらに,以上の研究成果を踏まえ,適合格子細分化を用いリアルタイム高潮・津波のシームレス氾濫モデルとしての可能性を確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題終了後,本研究テーマに関する今後の推進方策は以下の通りである. 1)適合格子細分化を利用した高潮・津波シームレス氾濫モデルをリアルタイムツールとして試みる.特に,高潮や津波に脆弱な湾や閉鎖性海域においてはこのシームレス氾濫モデルが有効なリアルタイムツールとして活用できると想定されるため,対象海域の選定や実運用について研究を推進していく計画である. 2)コンピューター計算環境がまだ十分ではない,アジア発展途上国における高潮と津波に対する防災・減災ツールとして展開していくための研究協力を推進していく計画である.具体的には,気候変動に伴い台風の襲来が危惧されているフィリピンミンダナオ島とベトナム南部地域を対象に研究協力体制を作るとともに,共同研究のための共同研究プロポーザルを準備中である. 以上を踏まえ,開発してきたシームレス氾濫モデルの改善,運用,モデルを介した共同研究へと展開していく方針である.
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Causes of Carryover |
最終年度の研究成果発表のため参加予定をしていた国際学会が中止となり、そのための計上していた予算を執行できなかったためである。 令和2年度において、他の開催予定の国際学会で研究成果発表を試みているが、現在の状況ではほとんどの関連学会の国際会議が中止となっている。もし、国際学会での研究成果発表が混乱な場合は、研究論文出版の際に必要な経費の予算として執行を計画している。
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Research Products
(20 results)