2017 Fiscal Year Research-status Report
フラクタル次元を用いた明るさや色彩の変化による夜間の道路交通の安全性に関する研究
Project/Area Number |
17K06596
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高瀬 達夫 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10283235)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 街路照明 / 照度 / 安全・安心 / フラクタル次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は夜間の道路交通や街路空間の形成に大きな影響を与える、道路空間の明るさや色彩の連続性の状態をフラクタル次元を用いて定量的に表現し、道路照明の連続性や誘導性と不定期に出現する横断歩行者用照明や夜間発光型標識等が、夜間の歩行者やドライバーの心理状態に及ぼす影響や交通安全性にどのような影響を与えるのか明らかにすることを目的としている。 本年度は研究開始年度にあたり、まず様々なパターンの道路空間を抽出し、一定の間隔で照度計を用いて道路路面照度および鉛直面照度の計測を行うこととした。はじめに歩行者空間を対象として、歩道の有無や交通量の多少といった状況の異なる歩行空間において2.5m間隔で路面照度と鉛直面(高さ1.5m)照度を測定した。さらに、計測した照度データを用いて、対象空間ごとに均斉度(明るさの均一性を表す指標)やフラクタル次元等を算出した。 続いて、これらの因子が夜間の歩行者の安全・安心等に対してどの程度影響を与えるかを明らかにするために、被験者が実際に分析対象街路を歩き、対象街路ごとに安全・安心や歩きやすさ等の意識について回答を行う形式の歩行実験を実施した。そして、意識調査の結果と道路構造や様々な明るさの指標を用いてモデル分析を行った。モデル分析の結果、路面照度と均斉度が歩行者の安心・安全に特に影響を及ぼしていることがわかった。これらの結果をもとに今後は後述する積雪時の照度の変化に対する検討を行うとともに、夜間のドライバーを対象とした調査・分析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
道路照明の連続性や誘導性と不定期に出現する横断歩行者用照明や夜間発光型標識等が、夜間の歩行者の心理状態に及ぼす影響や交通安全性にどのような影響を与えるのか明らかにするための計測・実験結果から得られた指標を用いてモデル分析を行った。その結果歩行者の意識に影響を与える因子を明らかにすることができた。 しかしながら、研究当初の想定以上に季節や天候による影響、特に積雪時における照度変化は他の季節・天候とは大きく傾向が異なることがわかった。一般的に街路樹は道路照明や月明かりを妨げ照度を低下させる要因であるが、積雪時には街路樹に積もった雪からの反射光が路面照度や鉛直面照度を上げる役割を果たしており、明るさの連続性の変化にも大きく影響を与えることが明らかとなった。このため、本研究を進めていくうえで積雪期間の調査・分析を行う必要があると判断した。ただし、積雪期間は冬季に限られているため、他の期間で行う基本調査に追従して行っていくこととする。以上のような理由から研究発表のためには一般的な状況だけでなく、積雪期間における調査分析結果をあわせる必要があると判断し、学会発表は次年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず前年度で明らかになった課題である、積雪時における路面照度と鉛直面照度の変化が明るさの連続性や各種指標にどのような変化をもたらすのか、街路状況の変化を踏まえてより詳細に明らかにする。 並行して、道路照明の連続性や誘導性と不定期に出現する横断歩行者用照明や夜間発光型標識等が、ドライバーの意識にどのような要因が影響をあたえるのか明らかにするために計測・実験を行う。さらに、ドライバーの心理的状態の変化を計測するため脳波センサーを装着し走行実験を行い、無線対応の脳波測定器を用いて脳波データを計測する。測定された脳波を解析ソフトを介して周波数領域での強度を表わすいわゆるパワースペクトルに変換する。α波は8~13Hz、β波は14~38Hz の周波数帯に位置する脳波である。α波、β波それぞれの出現強度は該当周波数帯でのパワースペクトルの積分値で与えることとし、それぞれの値をα波、β波のパワー値と呼び、これらの値を脳波特性として評価に用いる。
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Causes of Carryover |
研究成果の取りまとめに必要な調査を冬季積雪時に行う必要が生じ、当初予定していた年度末の学会発表の時期を次年度に繰り下げることになったため、学会参加費および旅費を次年度に繰り越すこととした。
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