2017 Fiscal Year Research-status Report
経路検索システムのログデータを用いたバス運行計画の評価・立案手法の開発
Project/Area Number |
17K06600
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
桑野 将司 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (70432680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福山 敬 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (30273882)
谷本 圭志 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (20304199)
菅原 一孔 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (90149948)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経路検索システム / ログデータ / 起終点 / ビッグデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
経路検索システムとは,目的地や出発地,利用したい時間帯を入力すると,バスや鉄道などの経路や運賃,所要時間などが提示されるwebサービスある.この経路検索システムには,検索者が入力した情報がログデータとして蓄積されている.このログデータはバスや鉄道の時刻表にとらわれずに,その検索者がどこから,どこへ,いつ移動したいかという移動に関する希望を含んだデータであり,利用者のニーズに応じた交通計画の立案に寄与すると期待されている. 本研究は,鳥取県に導入されている経路検索サービス「バスネット」に蓄積された利用者の検索行動から対象地域の交通特性を明らかにすることを目的としている.初年度は,主に,以下の研究を行った. (1)経路検索システムに蓄積されているログデータを統計分析できるように加工するためのアルゴリズムの開発を行った.特に,経路検索サービスでは希望した経路が表示されなかった場合,指定時刻を変更し繰り返し検索を実行する検索行動が見られる.しかし,ログデータからは検索者個人を特定することはできない.そこで,同じ検索者が複数回検索していることを判定するための方法について検討した. (2)取得したログデータから,出発地や目的地,曜日,出発時刻,到着時刻などのシステム利用時に指定された項目,利用時に使用したアクセス端末,検索を実行した時刻などから検索行動の特性把握を行った.その結果,出発地と目的地では指定される地点に異なる傾向があること,アクセス端末により検索内容が異なることなどが明らかとなった. (3)出発地,目的地,指定曜日,指定時刻を考慮した検索パターンの抽出を試みた.非負値テンソル因子分解による分析の結果,例えば鳥取市中心部の通勤・通学に関する検索パターンなど,複数の組み合わせパターンから特徴的な検索パターンの抽出に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成29年度は,経路検索システムに蓄積されているログデータを統計分析できるように加工するためのアルゴリズムを構築し,分析のための準備を整えた.そして,非負値テンソル因子分析を用いて,出発地,目的地,曜日,指定時刻を同時に考慮した検索パターンを抽出し,対象地域における検索行動の特性把握を行った.これら分析は,当初の計画通りであり,順調に進んでいる. 一方,計画当初は,経路検索システムにおける検索行動と実際の交通行動との関係性を比較するために,交通行動調査を実施する予定であった.しかし,対象地域においてバス運行計画の見直しが検討されており,別途小規模調査が実施されたため,調査時期を見直すこととした. 交通行動調査の実施を見送った分,ログデータ解析に注力したため,事前検索時間の分析やシステムに入力された指定時刻とシステムで出力された最短経路との乖離の分析など,次年度以降に予定していたログデータ解析に着手できた. 以上を総合的に判断すると,本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
地方都市では,公共交通の路線数や便数等のサービス水準が低い.そのため地方都市で公共交通の利用を検討する場合,代替交通手段や経路が多い都市圏に比べて,目的地までの経路や出発時刻などを事前に検索する人の割合が高いと考えられる.さらに,都市圏よりも地方都市のほうが,経路検索システムで表示される経路案内の結果によって,代替交通手段の検討,目的地や外出時間帯の変更,あるいは外出そのものを取りやめるなど交通行動が変化する可能性が高いと考えられる. 公共交通利用の直前ではなく,外出の計画段階で経路検索システムを利用しているのであれば,単なる経路案内だけでなく,利用者のニーズに合致した情報,例えば周辺の観光地情報や観光地周遊プランなどの情報を付加し提供することによって,観光誘発等につながると考えられる.平成30年度は,当初の予定通り,検索者が公共交通を利用する何分前に検索を行ったかを表す指定時刻と検索実行時刻の差に着目し,事前検索時間の長短に影響を及ぼす要因の分析を行い,それら結果から地方都市における経路検索システムの付加的な情報提供について検討する.
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Causes of Carryover |
分析対象地域において,バス運行計画の見直しが検討されている.運行計画の再編が行われた場合,経路検索サービスにおける検索行動と実際の交通行動の双方において大きな変化が生じると考えられる.そのため,初年度に予定していた検索行動と実交通行動との関係を明らかにするための交通行動調査について,調査時期を繰り下げることとした.調査を実施するための準備は既に整っており,検索行動と実交通行動を比較するのに適した状況になれば,すぐに調査を実施する予定である.
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