2018 Fiscal Year Research-status Report
流入下水中ヒトウイルスの選択的メタゲノム解析による新規病原ウイルスの検出
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17K06614
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
風間 しのぶ 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (20749444)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸管系ウイルス / メタゲノム解析 / 下水 |
Outline of Annual Research Achievements |
流入下水には胃腸炎ウイルス感染者が排出する病原ウイルスが集積されるため,感染症発生状況の把握には,流入下水中のヒト腸管系ウイルスを網羅的に検出することが効率的であると考えられる。ウイルスを網羅的に検出する手法の1つとして,第2世代シーケンサーを用いて不特定のウイルスゲノムを網羅的に検出するメタゲノム解析が有用であると考えられるが,流入下水中のウイルスのほとんどが植物ウイルスやバクテリオファージであり,ヒトウイルスの存在比は極めて小さいため,得られるヒトウイルスの配列は限られる。そこで本研究では,多くのヒトウイルスが属する(+)ssRNAウイルスを対象とし,それらを効率的,および網羅的に流入下水試料から検出する選択的メタゲノム解析手法を活用し,新規ウイルスの検出に加えて,病原性の有無について検討し,さらに地域における新規病原ウイルスによる感染症発生状況の把握を目的とする。 新規ウイルスゲノムの可能性を有する配列を得る事を目的とし,6つの流入下水試料を対象に前述の選択的メタゲノム解析を実施し、得た配列をアセンブリしたところ, 遺伝子データベース上のいずれの遺伝子にも類似しない72の配列(コンティグ)を得た。各試料から得たコンティグ中には、2-3試料に共通する7コンティグ(150-2300塩基)が存在した。これら7配列のうち3配列について特異的な検出系を設計し、定量PCR法により流入下水(n=16)中の濃度を測定したところ、3コンティグ中、2コンティグは検出率100%、濃度10^1.9 -2.7 および 10^3.8-6.0 copies/mLで検出され、1コンティグは検出率50%、濃度10^1.8-4.0 copies/mLで検出された。以上のことから、これら3コンティグの配列を有するウイルスの存在が示唆され、比較的高濃度で存在することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新規ウイルスと考えられるゲノムの全塩基長の決定するために,特定ウイルスゲノムの選択的回収技術を最適化して全塩基配列の決定を試みたが、回収率が低いため、回収技術の最適化について継続して検討する必要があることがわかった。しかしながら、新規ウイルスの可能性がある配列(コンティグ)対して,それぞれに特異的な検出系(プライマーおよびプローブ)を設計し、定量PCR法にて流入下水試料から検出することに成功した。また,上記コンティグが検出された流入下水試料以外からも同ゲノムを検出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,予定通り、ヒト便試料に対して新規ウイルスと考えられるゲノムをスクリーニングすることで、ヒトウイルス, および病原ウイルスの可能性を検討を実施する。また、引き続き特定ウイルスゲノムの選択的回収技術の最適化を検討し,全塩基配列の決定を試みる。加えて、昨年度設計した検出系を用いて,新規ウイルスと考えられるゲノムの流入下水試料中濃度を監視する。
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Causes of Carryover |
特定ウイルスゲノムの選択的回収技術の最適化が完了しておらず、当初予定していたシーケンシング試薬や依託費を使用する機会が少なかったため、使用計画額よりも実使用額が少額となった。なお、新規ウイルスゲノムの可能性が考えられる配列候補が複数検出されたため,全塩基長決定に供する対象を増やすことを予定している。差額は,対象増加により使用量が増加する遺伝子解析試薬やシーケンシング試薬の購入に使用する。対象を増やすことで,新規ウイルスゲノム検出の確率が増加することが期待される。
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