2018 Fiscal Year Research-status Report
Fate of clinically important antibiotic-resistant bacteria and genes in water and wastewater systems
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17K06622
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
浦瀬 太郎 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (60272366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 徹 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (90372812)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗生物質耐性菌 / 下水処理 / 公共用水域 / カルバペネム耐性 / ESBL産生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,関東地方の11か所の下水処理場の処理水16サンプルに対して,カルバペネム耐性腸内細菌,および,ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生大腸菌の調査をおこない,それらの選択的培養の方法の検討,耐性菌比率,取得菌株の特徴を調べた。処理水に残留塩素が検出される大腸菌濃度の低い4処理場を除いて,下水処理場の放流水に含まれる大腸菌の濃度範囲は,15 CFU/mL~140 CFU/mLとなった。そのうち,ESBL産生菌を適切に釣菌するうえで,0.25μg/mLのCTX添加濃度は過不足ない濃度であることが確かめられた。下水処理水中に含まれる大腸菌のCTX耐性割合は3.5%~8.9%でその87%にESBL産生能があった。得られたESBL産生菌割合はその流域での健常者を含めた腸内環境の平均値と考えられ,臨床分離株での耐性菌分離比率に比べて低かった。一方,各処理水における37℃48時間培養で得られる腸内細菌のうちカルバペネム耐性菌数は,菌数が少なく定量性の低い4処理場を除いて,0.033%~6.58%であった。ただし,それらには,自然耐性菌であるStenotrophomonas maltophiliaが含まれていると考えられ,実際に腸内細菌特有のrplP遺伝子を保有している株は,カルバペネム耐性菌のうち,44%(37℃培養株)から78%(42℃培養株)の範囲であった。培養温度を37℃から42℃にすることによって、メタロβ-ラクタマーゼ産生菌の分離率が55%~50%にまで減少し,同酵素を保有するStenotrophomonas maltophiliaの生育を抑制することができた。また,CTX耐性菌やMPM耐性菌では,βラクタム以外にフルオロキノロン系やアミノグリコシド系抗生物質に対しても耐性を持つ割合が,感受性菌よりも2~7倍程度多く,多剤耐性菌の割合が高いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は多くの処理場における現場調査が実施できた。これらにより,耐性菌の存在調査および菌株の特徴づけ,臨床分離株との比較ができ,研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに得た基礎情報により,次年度は,水処理(とくに消毒操作)と耐性菌の消長との関連の解析などをすすめることが可能となり,都市基盤整備や下水道の役割と薬剤耐性菌の広がりの関連をより詳細に解析し,土木環境システムの研究課題としての特徴をもった耐性菌研究となると考えられる。また,次年度は公衆衛生分野の基礎的な考え方を提供する意義を研究に持たせるため,遺伝子汚染としての側面の解明など新しい領域へ分子生物学的手法を用いて挑戦していきたい。
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Causes of Carryover |
これまで,ほぼ計画通り予算を執行している。少額の剰余が出た理由は,シャーレ,試薬などの消耗品を節約使用したためと,当該課題発表のための旅費を,別用務もあったため,他経費から支出したためである。2019年度は,最終年度であり,2019年度配分額に2018年度の少額の残額を合わせて,消耗品を中心に,旅費,遺伝子配列シーケンスの外注のための費用などに全額使用する予定である。
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