2017 Fiscal Year Research-status Report
水銀廃棄物の埋立処分における水銀収支と埋立処分手法の提案
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17K06623
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
柳瀬 龍二 福岡大学, 環境保全センター, 教授 (20131849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 彰 福岡大学, 工学部, 助教 (90432070)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水銀廃棄物 / 埋立処分 / 水銀流出特性 / 水銀廃棄物の埋立手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年10月に採択された「水銀に関する水俣条約」に伴い、水銀や水銀含有製品の中間処理法やその処理物の最終処分方法など、水銀廃棄物の処理・処分に関する国内法が整備・強化されている。しかし、水銀廃棄物の埋立処分の前提条件が法的に規制される中、中間処理された水銀廃棄物の埋立処分に伴う埋立特性は十分に把握されていない。本研究は中間処理された水銀廃棄物の埋立処分を想定した埋立実験槽を作成し、水銀の埋立地系外への流出(浸出水への流出や水銀の待機拡散)や埋立地における水銀収支等について長期に亘る埋立特性を検討する。また、水銀廃棄物自体の基礎実験から水銀特性(溶出特性や気化特性)を把握し、長期に亘る埋立実験と合わせて、水銀廃棄物の埋立処分における水銀の流出特性と抑制手法を総合的に提案する。 本研究は(1:埋立実験)埋立実験槽を用いた水銀廃棄物の長期的な埋立特性の把握と、(2:基礎実験)水銀廃棄物の特性を把握するための基礎実験から構成した。(1)は3種類の水銀廃棄物(黒色硫化水銀やその固化物)を埋立処分した場合、埋立構造(準好気性と嫌気性)の違いや、埋立廃棄物(燃え殻単独又は燃え殻と汚泥の混合廃棄物)の違いなどの諸条件下で、浸出水への水銀の流出特性や埋立実験槽上から水銀の気化特性など把握し、水銀の排水基準や環境基準等の法規制等と比較検討し、水銀廃棄物の適切な埋立手法を検討する。 (2)は水銀廃棄物を埋立処分するための前提条件を把握するため、水銀廃棄物自体の基礎実験を行い、水銀廃棄物からの水銀流出に与える種々の影響因子を検討し、埋立処分における水銀リスクを低減させるための手法を把握する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)埋立実験(水銀廃棄物の長期的な埋立特性):本埋立実験は埋立実験槽12基を用いて、埋立5年間に亘る長期的な水銀廃棄物の埋立特性を検討し、本年度は埋立4年目となる。埋立40ヶ月間の実験結果をまとめた。①黒色硫化水銀と廃棄物を完全混合した埋立では、埋立構造に関係なく排水基準を超える高い濃度で長期間浸出水に流出し埋立不適ある。②黒色硫化水銀を埋立実験槽の中央部に一塊で埋立てた場合は、準好気性は埋立初期の対応次第で埋立地の上層域に埋立可能である。嫌気性の場合は長期に亘って環境基準を超えることから埋立不適である。③黒色硫化水銀のセメント固化物を実験槽中央部に埋立処分した場合は、嫌気性が埋立初期の対応方法で埋立可能である。準好気性の場合は埋立手法として適していた。④埋立実験槽上部から気化水銀として大気拡散するケースは、黒色硫化水銀と廃棄物の完全混合した場合のみであり、廃棄物中に水銀廃棄物が存在する場合は廃棄物によって大気拡散が抑制される傾向にある。⑤埋立40ヶ月間に埋立地系外へ流出した水銀流出率は最大でも0.01%以下であり、水銀廃棄物中の大部分の水銀が埋立地内に残存していることが確認できた。 (2)基礎実験(水銀廃棄物の基本特性):埋立廃棄物との接触を想定し、黒色硫化水銀やそのセメント固化物自体の溶出(pHや、陽イオン・陰イオン及び酸化剤の影響)や埋立処分の前段で水銀廃棄物の前処理(洗浄前後)の効果等を検討した。①酷暑硫化水銀単体は高アルカリ領域や酸化剤(FeCl3)が存在すると水銀が溶出する傾向にあるが、陽イオン(Na+、K+、Ca2+)や陰イオン(Cl-、SO42-、NO3-)の影響は小さい。②セメント固化物は高濃度の酸化剤が存在すると水銀が溶出するがその他の条件では水銀が溶出しなかった。③水銀廃棄物からの水銀気化は洗浄することで発生濃度を低下できることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究計画は長期に亘ると水銀廃棄物の埋立実験の継続と、前年度実施した水銀廃棄物の基礎実験の補足実験及び新たに廃棄物処理法施行令で新たに追加された中間処理方法に対応するための基礎実験を実施する。 (1)埋立実験(水銀廃棄物の長期的な埋立特性):水銀廃棄物の埋立実験は平成31年8月の終了(解体)まで5年間に亘って実施し、埋立実験槽内の水銀の挙動や水銀収支など、埋立地における水銀廃棄物の特性を把握する計画である。平成30年度は実験開始から5年目にあたり、これまでに継続して実施してきた浸出水の水質や発生ガス質及び水銀関連の調査(浸出水への水銀流出とメチル水銀の挙動、気化した水銀の発生特性など)を実施する。 (2)基礎実験(水銀廃棄物の基本特性):水銀廃棄物の基礎調査は水銀の中間処理物①黒色硫化水銀(硫黄による硫化物)、②黒色硫化水銀のセメント固化物について、水銀の溶出とその影響因子や水銀の気化特性について基礎実験を実施した。平成30年度は新たに規制強化された中間処理法(③黒色硫化水銀を改質硫黄による固化物)についても、同じ基礎実験を実施する。また、固型化された水銀廃棄物の洗浄や破砕等の物理的影響を受けた場合の水銀特性についても検討する。 水銀廃棄物の基礎実験を通して、埋立処分された場合や地上保管された場合を想定した水銀廃棄物の管理手法等を提案する
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Research Products
(2 results)