2017 Fiscal Year Research-status Report
Damage Assessment of Urban High-Rise Buildings Considering Repair Cost
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17K06631
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岡野 創 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40416863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 正行 東京理科大学, 理工学部建築学科, 教授 (60416865)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 部材フラジリティ / 修復費 / 性能評価 / 経済的被害 / RC造柱梁十字架構 / 耐震壁 / S造柱梁接合部 / ベイズ確率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地震時の都市の高層ビル群の被害を経済的指標を用いて評価することを目的としているが、高層ビルについては被害事例が少ないことから,被害事例の多い木造住宅やRC造・S造の中低層建物のように経験的な被害関数を用いて被害推定を行うことができない。したがって,応答解析に基づいて,部材の損傷を評価し修復費を積み上げることにより,修復費を評価する方法を構築する必要がある。 応答解析に基づいて細部の積み上げにより修復費を評価するためには,基本的データとして,部材のフラジリティとその修復費のデータベースが必要になる。本年度は,部材のフラジリティ評価と修復費の評価に注力した。部材のフラジリティとしては,RC造の柱梁十字架構のデータを収集し,楠原・塩原(2010)の接合部曲げ強度理論に基づいてランク分けしてフラジリティの検討を行った。また,耐震壁の実験データを収集し,低アスペクト比と低アスペクト比の耐震壁のフラジリティ検討を行った。修復費については,RC造の耐震壁と純ラーメン構造の損傷度毎の修復費を見積もった。修復費については,施工会社数社へのアンケートも実施し,比較検証を行った。 S造の柱梁接合部については,Manson Coffin型の疲労則を用い,振幅と繰り返し数を考慮して線形累加則で損傷度Dfを求めて破断判定を行う手法が主流となっているが,一般には応答解析から損傷度Dfが出力されないという問題がある。そこで,一般の応答解析プログラムから出力される塑性率と累積塑性率を用いて損傷度Dfを推定するための理論的な研究を行い,減衰のない完全弾塑性系についての評価法を取りまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,①部材フラジリティと修復費の検討とデータベース整備,②骨組み応答解析のモンテカルロシミュレーションによる修復費算定ツールの構築,③経済指標を用いた都市の高層ビル群の被害評価,の3段階で進める予定であり,初年度は部材フラジリティと修復費の検討に注力した。 RC造ラーメン構造については,柱梁十字架構の実験データ(270体程度)を収集し,楠原・塩原(2010)の接合部曲げ強度理論を用いてランク分けし,フラジリティの分析を行った。しかし,2割程度の実験データの整理が未了となっている。耐震壁については,国内の実験データを網羅的に収集し,高アスペクト比耐震壁についてはFEMA P-58の背景資料を辿って海外文献も収集した。フラジリティはせん断余裕度,側柱拘束度,軸力比などをパラメータにして検討したが,外部発表を行う前に,データの扱い等につて確認精査が必要と考えている。 修復費については,RC造の耐震壁とラーメン構造について,修復作業工程を想定した修復費の見積もりを行った。施工業者へのアンケートも実施した上,先行研究であるFEMA P-58の評価との比較も行っており,貴重な検討事例になっていると考える。 S造ラーメン構造については,Manson Coffin型の疲労則を用い,振幅と繰り返し数を考慮して損傷度Dfを求めて梁端の破断判定を行う方法が主流になっていることから, Dfによってフラジリティを設定する方向で検討中である。一方,Dfは一般の応答解析プログラムから出力されないという問題があることから,塑性率と累積塑性率からDfを推定する方法を理論的に検討した。その結果,減衰のない完全弾塑性系について,履歴中心の移動からDfの算出に必要なピーク振幅が推定可能であり,履歴中心の移動はガンマ分布と良く合致することが見いだされた。この成果については,査読論文に投稿し採用された。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる次年度は,①部材フラジリティや修復費の検討結果の精査と対外発表と,②骨組み応答解析のモンテカルロシミュレーションによる修復費算定ツールの構築,に注力する。 ①のうち,修復費の検討は貴重な検討事例になっていると思われることから,査読論文誌に投稿する方針である。部材フラジリティについては,検討内容の充実度を勘案して投稿先を判断する。 ②については,一般に比較的広く用いられている骨組み応答解析プログラムを選定購入し,その応答解析プログラムを前提に関連プログラムを作成し,システムとして構築する予定である。 この他に,塑性率と累積塑性率からDfを推定する方法については,減衰のある場合にも拡張できる見込みが得られつつあることから,査読誌に投稿する方向で準備中である。また,実験データに測定限界による欠測がある場合のフラジリティ評価について,ベイズ手法を用いることで欠測を含む全データを活用した評価が可能であることが明らかになったので順次,論文化を進めたい。 さらに,フラジリティや修復費の評価はデータの取り扱いの客観性が重要であることから,使用データや処理の詳細を背景資料として公開する方向で検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
PCの購入台数が,予定より1台減らしたため。 次年度の,応答解析プログラム購入にあてる予定である。
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Research Products
(4 results)