2017 Fiscal Year Research-status Report
長時間の多数回繰返しによるダンパー性能の低下を考慮した制振構造の設計手法の確立
Project/Area Number |
17K06634
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 大樹 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 研究員 (40447561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 和浩 名城大学, 理工学部, 准教授 (80567397)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 制振構造 / 粘性ダンパー / 粘弾性ダンパー / 長周期地震動 / 性能低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
大都市の超高層建物は都市機能の中枢を担い,かつ数千人規模の人間が建物内部で社会活動をしているため,地震時には,建物の構造を無損傷にするだけでなく,建物機能を維持し地震直後から社会活動を再開することが強く望まれている。その解決策の一つとして建物内部に地震エネルギーを吸収する制振装置(ダンパー)を設置する制振構造が採用されている例が多い。これまでの設計用の地震動であれば,建物は数秒間揺れる程度であったため,制振ダンパーの性能が低下する心配は無かった。近年,高い確率で発生が予測されている南海トラフ地震によって,大都市である東京,大阪,名古屋の超高層建物が大きくそして長時間揺れることが明らかとなってきている。2011年の東日本大震災においては,震源から数100km離れた新宿での超高層ビルが10分以上も揺れ続け得たことは記憶に新しい。つまり,大きな振幅で長時間の多数回繰返しを受ける影響を考慮して建物の耐震安全性を評価しなければならない。本研究は長周期地震動をうける超高層制振建物の多数回繰返しによるダンパーの性能低下を考慮した設計手法の提案を最終目的する。 今年度は粘性ダンパーについて長時間の繰返しによるダンパー性能の低下を再現できる解析モデルを提案した。さらにその解析モデルを時刻歴応答解析に実装し,粘性ダンパーを設置した超高層建物に長周期地震動が作用した場合における,粘性ダンパーの性能低下による応答増大を明らかにした。また,粘性ダンパーの長時間繰返しによる性能低下を表現できる解析モデルが無い場合においても,建物応答を安全側に評価できる簡易応答評価手法を開発した。一方,粘弾性ダンパーについては,ダンパー形状がダンパー性能の低下に与える影響について確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,粘性ダンパーにおいて,長時間の繰返しによる性能低下を再現できる,時刻歴応答解析用の解析モデルを構築できた。解析結果は実験結果を精度良く再現できている。また,解析モデルを時刻歴応答解析ソフトに実装し,時刻歴応答解析によりダンパーの性能低下による応答が増大することを明らかにした。また長時間の繰返しによる性能低下を再現できる解析モデルが無い場合においても,通常の時刻歴応答解析で繰返しによる性能低下を考慮できる簡易応答評価手法を構築した。一方,粘弾性ダンパーにおいては熱伝導解析と構造解析を連動さえた解析手法を用いて長時間の繰返しによるダンパーの温度上昇およびそれに伴う性能低下を高精度に再現できることを示した。 以上,当初の予定通り,順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
粘性ダンパーについは,H29年度に開発した繰返しによる粘性ダンパーの性能低下を考慮した時刻歴解析手法を用いて,主架構が塑性化した場合についても同様に検討を行う。またこれまでは主に層間変形に着目して応答評価を行ってきたが,加速度やせん断力についても応答評価を行う。同時に,主架構が塑性化した場合での簡易評価手法の適用範囲についても検討を進める。粘弾性ダンパーについては,ダンパー形状および材料特性の異なる粘弾性ダンパーについて,同じ手法を適用し実験のシミュレーションを実施する。そこで,振動数や振幅の違いがダンパー内部の温度上昇および性能低下に及ぼす影響について詳細に検討する。さらに風応答波によるランダム振動時における検討も進める。
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Causes of Carryover |
研究は当初の計画とおり概ね順調に進展している。ただし,当初は任意形状立体フレームの弾塑性解析ソフトを初年度に購入することを計画していたが,今年度はダンパーのモデル化に集中したため,簡便なせん断モデルを用いた。今年度に任意形状立体フレームの弾塑性解析ソフトを購入することも出来たが,維持費が無駄となってしまうため,購入を次年度に行なうことにした。そのため,次年度使用金額が生じた。
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