2017 Fiscal Year Research-status Report
建物の機能維持を目指した慣性質量効果を有する制振機構の実建物への適用に関する検証
Project/Area Number |
17K06652
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
船木 尚己 東北工業大学, 工学部, 教授 (70347897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 智己 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (10552458)
飯藤 將之 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (40198940)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 制振構造 / ダンパー / 慣性質量 / 機能維持 / 内圧抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、地震による建物の損傷軽減に加え、機能維持を可能にする新たな制振機構を提案することにある。2011年東北地方太平洋沖地震や2016年熊本地震など、これまでに経験してきた大規模地震では、建物の構造躯体に被害がない場合でも、建物内部の設備機器や天井材の落下などの被害により建物の機能が失われ、地震後の継続使用が困難となった事例が多数確認された。これらの被害をなくすためには、地震エネルギーの吸収能力のみに依存した従来の制振機構では十分でなく、建物の周期特性を積極的に調整して、建物に入力される地震エネルギーを低減させることが有効である。本研究は、液流による内圧抵抗および慣性質量効果を利用し、建物の応答低減と周期特性を容易に調整できる簡便な装置を考案し、実験と解析の両面から実建物への適用の可能性について検証するものである。 本申請の初年度である平成29年度は、提案したダンパーの抵抗力特性について、ダンパー単体による加振試験を実施して得られた結果に基づき、加振条件や、液流の流路形状の違いがダンパーの発揮する慣性質量効果とエネルギー吸収能力に与える影響を確認した。その結果、液体の流速が増加するにつれて、エネルギー吸収能力は非線形的に増大することを明らかにした。また、慣性質量効果はピストンと流路形状の断面積の比に依存し、液体の実質量に対し数百倍の質量効果を発揮することを確認した。ここで得られた結果に基づき、本ダンパーの抵抗力特性を忠実に再現できる力学モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請の初年度である平成29年度は、提案したダンパーの抵抗力特性を把握することを目的として、ダンパー単体による加振試験を実施した。加振試験は、振動数および振幅を変化させた正弦波を入力し、加振条件の違いがダンパーの発揮する抵抗力と慣性質量効果に与える影響について詳細に分析した。また、一対のシリンダーを結ぶ連結間の長さや内径の違いは、その中を流れる液流の運動状態を変化させ、結果的に慣性質量効果の大きさに影響をおよぼす。これについても、形状の異なる3種類の連結管を用いた加振試験を実施した。一連の試験により得られた結果に基づき、ダンパーの抵抗力特性を忠実に再現できる力学モデルを構築することができた。また、本ダンパーが組み込まれた骨組の振動応答特性を確認するため、1層の縮小骨組試験体による振動台加振試験を行った。入力は正弦波と観測地震波を計画していたものの、途中で振動台の加力システムの不具合が発生し、今年度は正弦波のみの試験で終了している。システムはすでに復旧しており、近日中に地震波による試験を再開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究の進捗状況を鑑みると、本研究課題について今後の研究計画に大幅な変更はないものと考えている。今年度は、中断していた地震波による振動台加振試験を再開することを最優先とする。ここで得られた結果に基づき、入力波の振動特性がダンパーが組み込まれた建物の振動応答におよぼす影響を確認する。また、ダンパーの力学モデルを組み込んだ時刻歴応答解析プログラムを作成し、解析による結果を実験結果と比較することにより、ここで構築した解析手法の妥当性を検証する。さらに、縮小骨組を3層に拡張した試験体を用いて、1層骨組と同様の振動台加振試験を行う。
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Causes of Carryover |
新規で製作を予定していたダンパー試験体と骨組試験体の一部が製作できなかったことが次年度使用額が生じた理由である。今年度は、3層骨組に組み込むダンパーの製作に加え、骨組試験体の改修費や液体の圧力センサー等の設備機器を購入する。
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Research Products
(3 results)