2018 Fiscal Year Research-status Report
長周期地震動に対する免震建物の構造計算法-応答スペクトル法の再構築-
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17K06658
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小林 正人 明治大学, 理工学部, 専任教授 (50373022)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 建築構造 / 免震 / 構造設計 / 長周期地震動 / 応答スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,時刻歴応答解析によらない長周期地震動対応の免震建物の構造計算法(応答スペクトル法)の開発を目的としている。平成30年度は,応答スペクトル法による地震応答予測に関連する各種評価式の更なる合理化を図るとともに,地震動の長周期成分による免震層の過大変位と繰返し変形による免震部材の特性変化の影響評価の方法について検討した。 1.免震層の最大変位: 免震層の最大変位の評価に大きく影響する減衰補正式について,設計用地震応答スペクトルの周期特性を考慮した新たな提案式を作成した。さらに,履歴系ダンパーと流体系ダンパーを有する免震建物を想定した1質点系モデルによる時刻歴応答解析との比較から提案式の適用性を検証した。 2.上部構造の層せん断力係数分布: 告示波を対象に提案された層せん断力係数分布の評価式に基づき,長周期地震動を対象とした場合の各種構造特性が,層せん断力係数分布に及ぼす影響について把握した。また,最上層の応答層せん断力係数のばらつきについて分析し,長周期地震動を対象とした新たなばらつき補正式を提案した。 3.免震層の過大変位: 極めて稀に発生する地震動における設計クライテリアに基づき設計した基礎免震構造に対し,入力を漸増させた時刻歴応答解析を行うことにより,積層ゴムのハードニングや上部構造の塑性化を考慮した免震構造の余裕度を把握した。免震層に大きな変形を許容することができれば,連層耐震壁など建物全体に耐震要素をバランス良く配置することで余裕度と冗長性を向上させることが可能となることを把握した。 4.免震部材の特性変化: 時刻歴応答解析を用いた簡易応答評価法との比較から,応答スペクトル法に繰返し変形による免震部材の特性変化の影響を取り入れた地震応答予測法の適用性について検討した。免震層への入力エネルギーの算定手順によって応答の予測値が変化することが把握された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設計用地震応答スペクトルの周期特性を考慮した新たな減衰補正式の提案ならびに層せん断力係数分布の提案式の適用性の確認から,長周期地震動に対する応答スペクトル法の合理化が図られた。しかしながら,繰返し変形による免震部材の特性変化の影響を取り入れた応答スペクトル法は,その適用に関して課題があるため,引き続き改善に向けた検討を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は,平成30年度までの分析結果を考慮して,応答スペクトル法に関する検討項目を再検証する。長周期地震動の影響とその対策の効果を評価できる工夫を施し,長周期地震動対応の応答スペクトル法を開発する。これにより時刻歴応答解析によらず海溝型巨大地震に起因する長周期地震動の影響を評価できる免震建物の構造計算法を提案する。
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Causes of Carryover |
論文投稿が予定より遅れたため、論文掲載料の支出が次年度に持ち越しとなった。 翌年度分として請求した助成金と合わせて、論文掲載料として使用する計画である。
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