2017 Fiscal Year Research-status Report
真壁木造の耐久性向上のための雨水浸入の抑制および浸入雨水の挙動制御に関する研究
Project/Area Number |
17K06659
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
輿石 直幸 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00257213)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 小舞壁 / ラスモルタル / 防水 / 雨仕舞 / 吸水 / 毛管上昇高 / 毛管空隙 / 散水 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国における木造住宅の多くは、構造用面材を使用した大壁構法であり、一旦、屋根や外壁の内部に雨水が浸入すると、外部に放散されにくく、築後、早期に軸組や下地材などの木部が腐朽する事故が絶えない。これに対し、伝統的な真壁構法は、軸組が内外に露出しているため、乾燥しやすく、腐朽が生じても発見しやすく、補修もしやすいなど、長期使用の観点で優位な点が多い。しかし、大壁構法とは異なり、外壁面が軸組で分断され、連続した止水面が形成されていない。 平成28年度までに、伝統的な小舞土壁とモルタル真壁について、雨水浸入の弱点となる部分を抽出した要素試験体を多数作製し、典型的な3種類の降雨条件を再現した散水試験を行い、これらの構法に固有の防雨性と付加した種々の雨仕舞の効果をある程度まで把握した。 平成29年度は、主にモルタル真壁を対象とし、壁面を構成する主要な材料である現場調合普通モルタルおよび既調合軽量モルタル、ならびにこれらの仕上げに用いる漆喰について、雨水の浸入や浸入後の挙動に関係する材料物性の測定に取り組んだ。モルタル真壁における雨水浸入のパターンとしては、壁面中央の一般部からの吸水と、壁面四周の軸組との取合い部に生じた隙間からの浸入に大別できる。後者は、さらに、浸入した雨水がモルタル層等の小口から吸水されるが、柱際、土台上部および梁等の横架材下部では、それぞれ重力に対し、直交、下および上と吸水方向が異なる。多孔質材料の吸水問題を数値的に解析した既往研究を調査したうえで、これら吸水現象の解析に必要な吸水速度(吸水量の時間変化)、毛管水位および毛管空隙量を測定した。測定方法に改良が必要な部分も残されているが、およその傾向が把握できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、平成29年度に、これまでに未検討であった雨水浸入の弱点部および雨仕舞について、同様の要素試験体による散水実験を行い、平成30年度に、個々の材料の性質試験を行う予定であった。なお、材料物性の測定値は、これら散水実験結果の数値的な考察に必要なものであり、最終年度に行う予定の検証実験の結果予測にも用いる。 しかし、平成29年度と平成30年度の順番を入れ替えたほうが、散水実験を行う要素試験体の条件を絞り込みが容易と判断し、計画を変更した。平成29年度は、主にモルタル真壁を対象に、壁面を構成する材料の吸水・浸透に関する材料物性を測定したが、重力に対する吸水・浸透の方向を考慮した測定方法の考案に予想外の時間を要してしまった。小舞壁では、壁面を構成する壁土自体が耐水性に劣るため、壁土への適用を考慮したことも、測定方法の考案に時間を要した理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度のできるだけ早期に材料物性の測定方法を改良して材料物性の測定を行い、後半から最終年度にかけ、要素試験体による散水実験を行う。
|
Causes of Carryover |
[理由]平成29年度に計上した予算の大部分は要素試験体による散水実験に関係するもので、試験体の作製費、計測機器およびその他の設備備品などである。前述の通り、平成29年度と平成30年度の実施計画を入れ替えたため、もともと材料物性の測定に要する費用は、ほとんどが材料費であり、少額である。また、平成30年度に計上した予算の相当部分は、最終年度に行う同等の検証実験の試験体作製等を前倒しで準備するための費用が含まれている。以上の理由により、平成29年度の支出は大幅に少額となった。 [使用計画]平成30年度は、当初、平成29年度に予定していた要素試験体による散水実験と最終年度の試験体の準備を行うため、当初予定の29年度と30年度の合計の残額分を使用する予定である。進捗の遅れを解消しきれない場合は、試験体準備の一部は、最終年度にずれ込む可能性もある。
|