2019 Fiscal Year Research-status Report
住空間における視聴覚環境による共在性の構築とその生理心理的効果の検討
Project/Area Number |
17K06678
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
佐野 奈緒子 東京電機大学, 未来科学部, 研究員 (80376508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋田 剛 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (40318168)
土田 義郎 金沢工業大学, 建築学部, 教授 (20227424)
古賀 誉章 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 准教授 (40514328)
宗方 淳 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80323517)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共在性 / 共在感覚 / 引き込み / ソーシャルディスタンス / インタラクション / 視聴覚 / ネットワーク / テレイグジスタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、遠隔会議システムを用いて在宅勤務など離れた空間を繋いで仕事をする、また離れた場所に暮らす家族の見守りを行うなど、物理的に離れていながら交流する、また環境情報を共有するニーズが高まっている。通信環境における情報の高精度・高速伝達性能が発展しているその一方で、視聴覚情報を高精度に伝達する場合の情報通信量の増大、遠隔コミュニケーションや見守りにおけるプライバシーの確保などの課題も見出される。そのため伝達される情報量を制御しながらお互いの交流を促進し、一緒にいる感覚を保持するシステムの構築は、離れていながら繋がる、新たな住環境の構築手法を検討する上で重要である。 今年度は実験システム『擬似窓』により、通信環境下における二者間の『共在感覚』および『共在性』についての検討を行った。その結果、第一に、コミュニケーションをとる場合も、二者が個別に作業を行なっている場合においても、『擬似窓』越しに体動の引き込みが認められた。通信ネットワーク環境下においても、物理的に互いの体動が視聴覚情報を介して引き込んでいることが今年度の結果から示された。これは相手がヒトであること、相手がインタラクティブに応答する存在であることが影響していると考えられる。前年度に視聴覚刺激の周期性に着目し、周期性を備えた視聴覚刺激視聴時の体動と刺激間の引き込みについて検討したが、モノに対する場合、体動の引き込みは弱かった。第二に、主観的な『共在感覚』は、顔の大きさの見えを基準とした擬似的対人距離1mにおける、モニタ・スピーカを介した『擬似窓』越しのコミュニケーションと、実環境での二者間のコミュニケーション時の4mの対人距離での評価とが同程度である結果が得られた。第三に、片側からの1秒間の時間遅延を施したところ、システム越しの2者間の『共在感覚』は遅延なしの場合と差が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は研究計画に従い、ヒトーヒト間について、テレイグジスタンス技術を介した環境における『共在感覚』及び物理的『共在性』の生成について検討した。その結果、ヒト間の情報伝達における『共在性』の媒体として、体動の周期性が介在する可能性が示された。 実験により、ヒトに対面する場合、対面する二者間に体動の引き込みが認められ、主観的な『共在感覚』とともに、物理的にも互いの体動が引き込む共在状態にあることがわかった。互いに独立に作業している場合にもその傾向が認められることから、体動周期に近い帯域の周期性情報が視聴覚的に伝達されることが『共在性』の物理的構成要因であることが示唆された。一方、実空間とテレイグジスタンス環境においては、実空間と視覚的距離感が異なり、実空間の対人距離1mに相当する視覚的見えの大きさにおいて、モニタ映像・スピーカ音声越しでは対人距離4m時相当と、Hallの示す社会的距離以遠の距離感において『共在感覚』が認知されていることがわかった。時間的には、二者間での片方向のみ1秒程度のシステム遅延は『共在感覚』においては影響がないことが示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果発表のため、次年度使用額を繰り越している。今後はこれらの研究の成果報告を行う。 また新型コロナウイルス対策として、新たな生活様式が模索される現在の環境下における『共在感覚』について、補足的な検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
実験に基づくモデル構築のために、当初予定にはなかった新たな分析手法を導入している。次年度使用額は、このモデル構築に伴う追加のアンケート調査及び検討のための学会大会参加費用、成果発表のための論文投稿に使用する。
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