2018 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災からの復興における復興まちづくり移行期の地域マネジメントに関する研究
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17K06693
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
三宅 諭 岩手大学, 農学部, 准教授 (60308260)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 復興 / まちづくり / マネジメント / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、基盤整備がほとんど終了したI町、M市、R市、Y町において、主な復興事業、空間整備に伴う主体間の合意形成プロセス、取り入れた計画技術、移転後の跡地利用やまちづくりに向けた取り組みについてヒアリング調査を行った。その結果、被災前からもつ地域コミュニティが計画策定や推進、関係住民の合意形成に大きく影響を与えていることが明らかになった。特にR市では移転先選定を部落に任せ、地権者交渉を自治体とコミュニティ推進協議会が担うことで円滑な復興まちづくりが進められており、地域コミュニティを中心としたマネジメントの重要性が明らかになった。 次に、復興事業後を見据えたまちづくりに関しては、漁業を中心として被災前から6次産業化に取り組んでいた地域やコミュニティが自主性を持つ地域で積極的な取り組みが見られた。一方で、小規模漁村が複数で地区を形成している場合には、集落よりは地区単位で取り組んでいくことが求められるため、個別の活動が展開していないこともわかり、マネジメントの主体をどのように育成するかが重要であることが明らかになった。 一方で、被災直後から移転後の跡地の公園整備に関して小学校、中学校、高校と協力して取り組んできたN村では、整備された公園の維持管理活動に村民が積極的に参加していること、小中学校では復興教育への展開が図られていること、高校生も公園の清掃活動に参加していることが明らかとなり、復興事業への住民参画がその後のまちづくり活動へ展開することが明らかになった。 また、K市とY町では、移転先住宅地の当初計画と住民意向調査後の計画、実施された計画についてデータ収集とヒアリングを行った。住民意向調査後の計画から実施計画への変更は少ないものの、住宅戸数の多い地区では空き区画等が発生する傾向にあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
住宅地計画に関して、自治体によっては詳細なデータ収集に協力いただけない場合もあり、網羅的なデータ収集は難しいが、都市と漁村に分かれる自治体と都市と漁村がまとまっている自治体でデータ収集とヒアリング調査を行うことができたので、代表事例について調査することができた。 また、複数自治体の復興プロセスと現在の取り組みについて調査する中で、被災前からのコミュニティが機能している地域では、6次産業化など復興事業後のまちづくりを視野に入れた取り組みが積極的に行われていることも確認でき、仮説の妥当性を確認することができた。 2019年度は引き続きデータ分析を進めるとともに、エリアマネジメント主体として期待されるまちづくり会社に調査を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
移転先団地計画の変化および住民意向変化の関連性について引き続き分析を進める。 一方で、復興拠点整備事業により中心市街地の再建を図った地域では、まちづくり会社を設立してマネジメントに取り組んでいる地域が多い。陸前高田市、大船渡市、山田町を対象にまちづくり会社へのヒアリング調査を行い、設立および運営体制を整理、比較し、特徴と課題を把握する。その上で行政および商業者へのヒアリング調査も行い、エリアマネジメントの現状と今後の展開に向けた知見を明らかにする。また、既に地域住民による活動が始まっている野田村を対象に、これまでの住民による維持管理活動の状況をヒアリングし、コミュニティによる地域マネジメントに向けた課題とその対策を明らかにする。 次に、復旧から復興までの一連のプロセスの中で、外部からの支援が不可欠であったことを踏まえ、マネジメントとしての内陸支援との協力体制に注目する。特に、盛岡市、遠野市、北上市が行った内陸支援の内容とその変化について資料収集およびヒアリング調査を行い、プロセスに応じて分析し、外部とのマネジメントする効果と内陸支援のあり方を明らかにする。 加えて、東日本大震災の1ヶ月前に被災し、既に仮設店舗も完全に撤去した事例や、ハリケーンによる洪水被害から復興を進めている事例を対象に、復興事業後の人口、産業の変化、まちづくりの課題を整理する。
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Causes of Carryover |
前年度未使用額は設備備品費を見送った分である。2018年度の謝金が減った分、少し次年度使用額が増えているが、2019年度に国際学会がボストンで開催(予定)になったため、その旅費を見込んでいる。
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