2018 Fiscal Year Research-status Report
Dwelling system formed by interaction between a street and a house with Japanese traditional colonnade
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17K06699
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80221951)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 雁木 / 町家 / 水路 / 雪処理 / 祭礼 / 保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には通り中央に水路をもつ街路村〈稲田〉について、稲田1丁目の住戸を対象として住居・屋敷・街区をとおした居住システムを把握した。1970年代の資料により通りと水路の変化を把握し、屋敷構えと住居の実測から、河川改修と道路拡幅に伴う屋敷構えや住居の変更点を把握した。水路の利用に供する屋敷構え要素として私設の橋、洗い場、水瓶、井戸、樹木に注目し、その位置と分布を1970年代の配置図に復原した。これら要素は水路や通りに面し、屋敷が並びをなした際に層をなし、公私の利用が異なることを把握した。 蛇行する水路沿いの雁木町家の雁木が台形平面をなし、水路のカミ側に出隅、シモ側に入隅の空間をつくることを実測した。雁木に面するミセの建具と床仕上げ、トオリニワと収納の位置、隣戸壁面の物品、そして雁木での打ち水、野菜干し、洗濯物干し、夕涼み、脱穀といった環境行動が生業(農家か商家か)と対応したことを把握した。 1970年代の空中写真と聞き取りから、建物と空地の形状と用途を把握した。短冊形敷地において前側の通りに主屋を接道し、後ろ側に広く畑と屋敷林を配したこと、敷地のカミ側に排水溝やトオリニワを通しシモ側に付属屋を設けず、カミ・シモの方向性に依拠した屋敷構えと平面型を持ったことを把握した。これが並びをなし、各戸と街区の居住環境が確保される空間的なしくみを把握した。 また、祭礼時の神輿の経路を〈高田〉大町3丁目と〈稲田〉1丁目で配置図上に記録し、設えや礼拝や宿を把握した。通過する神輿を各戸毎に礼拝する〈高田〉に対し、〈稲田〉は辻を中心として通りを神輿が往復した。〈高田〉と〈稲田〉の2010年以降の雁木延長の増減を各戸で把握し、町内ごとの持続の度合いを把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、直線状の雁木通りを持つ城下町〈高田〉については平成29年度に大町3丁目の2戸を選定し配置図と平面図と断面図と立面図を作成でき、通り中央に水路の流れる街路村〈稲田〉については平成30年度に稲田1丁目の1戸を選定し、配置図と住戸平面図を作成できたため。平成30年度に〈高田〉と〈稲田〉の配置図上に祭礼時の神輿の経路と機械化前の雪処理を把握できたため。 平成29年度に実施した〈高田〉と〈稲田〉の全雁木通りの現況調査について、上越市主宰の報告会での発表内容にもとづき、平成30年度4月の建築学会北陸支部Webマガジン、7月の日本建築学会北陸支部大会、9月の日本建築学会大会で発表できた。また、〈高田〉と〈稲田〉の祭礼の経路について、7月の日本建築学会北陸支部大会で発表できた。また、高田と稲田の雁木分布、雪処理の過程、雁木町家の保全動向について、研究結果の一部を平成31年2月に上越市発行の「町家読本 -高田の雁木町家のはなし- 改訂版」として出版できた。とくに高田の機械化前の雪処理における通りと屋敷のシステム的な対応関係については、平成30年9月の日本建築学会大会パネルディスカッションで発表するとともに資料集に寄稿できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当初に予定した3点について、以下の方策で研究を進める。 1. 時間変化による雁木空間の公私領域の重層性と住宅・道路の相互関係との関連 町人町〈高田〉(平成29年度)と街路村〈稲田〉(平成30年度)の平面実測と聞き取りから、それぞれの雁木空間では、利用における公私の境界が季節や日常・非日常の別により変化している様子を部分的に把握できた。そこで通りと屋敷を含む断面図を両者で実測し、機械化前の雪処理と夏季の祭礼に注目し、住人のはたらきかけと空間的な境界位置を記録し分析する。利用の公私境界の時間的変化により住宅と道路の相互作用が生み出されていることを把握する。 2. 連続平面の変容過程からみた〈高田〉と〈稲田〉の居住システムの解明 町人町〈高田〉と街路村〈稲田〉の通りと屋敷を含めた連続平面の変容過程をとおしてみることにより、現在も継承される屋敷と住宅の構成要素を把握する。並びをなす雁木町家の平面を作成し、屋敷が前側と後ろ側それぞれで付属屋配置や境界装置を調整し、通りと屋敷の相互作用と均衡をとっていたことを把握する。1960年代以降の変容過程を比較し、相隣関係を調整する地域慣習や設え、その雁木利用への表れ方を把握する。これにより通りと町家の相互作用と相隣関係とが関連する要因を明らかにする。 3. 柳川の堀割水路との比較による私領域の空間要素が公共性を獲得する根拠の解明 連携研究者は福岡県柳川市の〈宮永町〉と〈京町歩道〉において屋敷構えの変容過程から堀割水路の居住システムを明らかにしている(菊地 日仏景観会議2007)。連携研究者にデータの開示を依頼し、〈高田〉と〈稲田〉で把握した雁木通りの居住システムと比較検討する。これにより伝統的な街路・水路空間において、私領域に属する屋敷構えの装置が都市空間の構成要素として公共性を獲得する根拠を把握する。
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Causes of Carryover |
購入予定としていたCADソフトウエアとホームページ作成用ソフトウエアの購入を繰り延べたため。CADソフトウエアのアップグレードは次年度に行われるとわかった。また、ホームページ作成用ソフトウエアのクラウド版を購入できるとわかった。このためアップグレード版とクラウド版の販売開始を待ち、その後に購入する計画とした。
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Research Products
(8 results)