2021 Fiscal Year Research-status Report
Dwelling system formed by interaction between a street and a house with Japanese traditional colonnade
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17K06699
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
黒野 弘靖 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80221951)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 雁木 / 町家 / 祭礼 / 雪処理 / 保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度当初に予定したとおり、「雁木空間の公私領域の時間変化と町家・通りの相互関係」を把握した。すなわち、城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉において通りと屋敷を含む配置図と断面図を縮尺を揃えて作成し、夏季に直江津祇園社の神輿が巡幸した際の迎え・礼拝・送りおける、雁木のしつらえと町内住人の行動との対応関係を記入した。同じ直江津祇園社の神輿の巡幸が、城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉それぞれにおいて、町家と道路の相互作用を生み出し、各戸の自立を相互確認する場がつくられていく過程を把握した。また、城下町〈高田〉の直江八幡宮の春季と秋季の祭礼における町家・雁木・通りの場所と住人相互の機会を氏子町内全域の平面図と断面図に記録し、湊町〈直江津〉の祭礼で町ごとに運営される屋台について町家・雁木・通りの場所と住民相互の機会を3町内の平面図と断面図に記録した。城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉に共通して神輿巡幸時につくりだされる機会・場所を町内独自の祭礼での機会・場所と比較し、城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉それぞれの町内独自の祭礼にもとづき、夏季の神輿巡幸時の共通したしつらえと行動が生まれていることを把握した。併せて、私有地である雁木と公有地であるアーケードにおいて、雁木へのしつらえと町内住人の行動が異なる状況を記録した。 さらに城下町〈高田〉と街路村〈稲田〉について、実測した通りの両側の雁木町家の連続平面図と断面図に機械化前と機械化後の雪処理過程を聞き取りにより記入した。両者を比較し、街路幅員の比較的小さい城下町〈高田〉の両側雁木町家の雪処理過程と、商家と農家が街路・水路をはさんで向かい合う〈稲田〉の雁木町家の雪処理過程それぞれにおいて、通り両側町家の相互作用が通り沿い並びの相隣関係へ展開する空間上の要因を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、雁木空間の公私領域の時間変化と町家・通りの相互関係として、城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉の両方において通りと屋敷を含む配置図と断面図を実測し、令和元(2019)年度夏季の直江津祇園社祭礼における、住人のしつらえによる雁木空間と、神輿の迎え・礼拝・送りの活動との空間的な対応関係を示すことができたことによる。同一の神輿の巡幸が、城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉のそれぞれの雁木通りにおいて、町家と道路の相互作用を生み出し、各戸の自立を町内住人相互で確認する場がつくられていく共通の過程を把握することができた。また、私有地である雁木と公有地であるアーケードにおける、雁木へのしつらえと町内住人の行動が異なる状況を把握できた。さらに街路幅員の比較的小さい城下町〈高田〉の両側雁木町家の雪処理過程と、商家と農家が街路・水路をはさんで向かい合う〈稲田〉の雁木町家の雪処理過程それぞれにおいて、通り両側町家の相互作用が通り沿い並びの相隣関係へ展開する空間構成上の要因を把握できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当初に予定した2点について、以下の方策で研究を進める。 1. 通り両側町家の相互作用が通り沿い並びの相隣関係へ展開する要因の把握 城下町〈高田〉と湊町〈直江津〉においては夏季祭礼において、城下町〈高田〉と街路村〈稲田〉については冬季雪処理において、通り両側町家の相互作用が通り沿い並びの相隣関係へ展開する過程を連続平面図と通り断面図に記録する。夏季祭礼と冬季雪処理を比較することにより、私領域に属する雁木が公共性を獲得する根拠を解明する。 2. 柳川の堀割水路との比較による私領域の空間要素が公共性を獲得する根拠の解明 連携研究者の菊地は福岡県柳川市の〈宮永町〉と〈京町歩道〉において、屋敷構えの変容過程の分析から堀割水路の居住システムと雁木通りの形成過程を明らかにしている(菊地:日仏景観会議, 2007)。連携研究者にデータの開示を依頼し、上越市〈高田〉と〈直江津〉と〈稲田〉で図化した雁木通りの居住システムと比較検討する。これにより日本における伝統的な街路・水路空間において、私領域に属する屋敷構えの要素が都市空間の構成要素として公共性を獲得する根拠を把握する。
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Causes of Carryover |
福岡県柳川の堀割水路および京町歩道との比較検討については、新型コロナウイルスの感染状況が好転しなかったため、連携研究者の作成した資料の現地確認を延期した。このため調査旅費を次年度に繰り越した。令和4(2022)年度には、連携研究者とのオンラインによる連絡を継続するため、モバイル対応のデータ通信機器を購し、連携研究者による調査資料の補足と研究打合せを確実に実施する計画とした。
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Research Products
(3 results)