2018 Fiscal Year Research-status Report
画像解析と生体計測に基づく枯山水庭園の感性評価に関する研究
Project/Area Number |
17K06701
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲上 誠 名古屋大学, 未来社会創造機構, 研究員 (40597803)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 枯山水庭園 / 評価構造 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には、枯山水庭園の評価構造を調べる実験を行う予定であったが、前年度の予備実験のデータが活用できたので、新たな実験は行わなかった。分析には、50種類の庭園についての基礎的印象(開放感、複雑さ、自然さ)と感性評価(美しさ、面白さ、落ち着き、好ましさ)の評定データを用いた。当初の仮説の通り、基礎的印象が美しさ、面白さ、落ち着きを生み出し、それらが好ましさに統合されるというモデルを作成した。その結果、予測精度が低い部分もみられたが、概ね仮説に一致するモデルが得られた。さらに、基礎的印象と対応する環境要因を探すため、庭園の画像の解析を行った。色の三属性(色相、明度、彩度)のエントロピーに加え、エッジのフラクタル次元を算出した結果、それらが複雑さと自然さの予測に有効であることが明らかになった。開放感については、天空の割合と白砂の割合という変量との関係を調べてみたが、十分な予測精度は得られなかった。 上記の結果に加え、分析を進める中で2つの副次的な成果を得ることができた。はじめに、色彩の解析方法の妥当性を検討するため、以前に行った実験のデータを利用し、屋外空間における開放感のモデルを作成した。その結果、環境の色彩による進出・後退効果が開放感に影響することが明らかになった。続いて、庭園の白砂の割合と感性評価の関係を調べたところ、白砂の割合が中程度の時に、感性評価が最も高くなることが分かった。日本画では適度な余白が美を生み出すと言われているが、この結果は、庭園の白砂にも同様の効果があることを示唆している。 以上の成果は、枯山水庭園の魅力という漠然とした感性に対して、定性的ではなく定量的に分析している点において意義があると言える。日本の文化に関わる研究内容でもあるので、国際会議で発表する準備を既に進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
生体反応(脳波、眼球運動など)を計測する実験を行う予定であったが、平成30年度には実施に至らなかった。実験環境を用意して予備的にデータを収集してみたが、データに含まれるノイズの割合が大きく、庭園のデザインの影響をデータから読み取るのは難しいことが分かった。また、実験内容を大幅に変更するために、他の生体指標についても文献調査を行う必要があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
実際に存在する枯山水庭園では、生体反応に顕著な差が表れるほど、デザインの多様性が大きくないと考えられる。その対策として、庭園の画像を加工してデザインを大きく変化させたり、他の環境(日常的な屋外環境など)との生体反応の差異を調べたりして、データに影響が表れるように実験内容を変更する予定である。また、生体反応の分析の目的を、全体的な評価モデルの検証ではなく、特定の理論(覚醒ポテンシャル理論や眺望-隠れ場理論など)の検証に絞ることも検討している。
|
Causes of Carryover |
当該年度に予定していた実験を次年度に実施するので、そのための経費(被験者の謝金など)に使用する。
|
Research Products
(4 results)