2017 Fiscal Year Research-status Report
Institutional design of historic district designation using empirical evidence of causal effects and the heterogeneity
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17K06704
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大庭 哲治 京都大学, 工学研究科, 助教 (80464197)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歴史地区登録制度 / 因果効果 / 異質性 / 制度設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度,以下の2つの研究内容について取り組んだ. A)歴史地区登録の実態把握及び分析データセットの構築 歴史都市として知られる日本の京都,米国のフィラデルフィアとアトランタを分析対象都市として取り上げ,米国の対象都市については,連邦政府の制定による国家歴史登録財と地方政府の制定による歴史的資産登録制度を対象に,歴史的建造物/歴史地区に関する最新の情報資料を収集/調査した.一方,日本の対象都市については,文化財保護法における重要伝統的建造物群保存地区の登録制度や歴史まちづくり法に基づき独自に登録している歴史的建造物/歴史地区に関する情報資料などを収集/調査した.そして,各制度の沿革や概要,歴史地区の登録状況,歴史的環境の諸特性などの実態を詳細に把握した.なお,収集する情報資料として,これまでの先行研究において未活用であった,歴史地区内における現状変更行為の申請許可データも含めた.また,これらの情報資料を独自に地理的空間データ化するとともに,別途,収集・作成する各種統計データも含めて,GISで操作可能な分析データセットを構築した. B)不動産価格/現状変更行為に及ぼす因果効果に関する計測方法論の開発 本来は把握することが難しいと思われてきた登録制度の因果効果とそのメカニズムについて,反実仮想的発想に基づく統計的因果推論を応用することで選択バイアスを制御した計測方法論を開発した.なお,2つの異なる視点から因果効果を実証的に解明するため,A)で作成した分析データセットの活用にあたり,従来用いられてきた不動産取引価格データのみならず,現状変更行為(増改築/修繕/除却など)の申請許可データにも適用可能な計測方法論を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GISで操作可能な分析データセットについては,日米の対象都市ともに,ほぼ完成の目途がたっている.また,計測方法論については,検討結果として,幾つかの克服すべき課題はあるものの,その課題を克服する幾つかのアイデアを整理している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,2018年度に以下の2つの研究内容について取り組む予定である.
■因果効果の異質性に関する評価フレームの構築 因果効果について,対象都市における歴史地区間/歴史地区内での空間的差異や時間的差異,あるいは不動産物件の集団的/個別的差異とその具体的要因を明らかにする評価フレームを,B)で開発した方法論を基礎にして構築する.同質性仮定の緩和により,共通性と異質性を区別して因果効果を解明することで,柔軟な制度設計や政策立案に貢献することが可能になる.なお,歴史的環境を対象に,わが国で初めて地理的加重回帰モデルを用いて,空間データの特性を明示的に取り込みつつ,近隣外部効果を計測した申請者らの着想や研究成果(大庭(2006))を基礎として,混合地理的加重回帰モデルや空間分位点回帰モデルをはじめとする空間統計モデリングや,関連分野における異質性を明示的に考慮した統計モデリングを応用することで,評価フレームを構築する.
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