2019 Fiscal Year Research-status Report
瀬戸内海の島嶼部における木造建築生産の20世紀以降の変化とそのメカニズム
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17K06706
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
角倉 英明 広島大学, 工学研究科, 准教授 (50512654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤澤 彰 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (10190026)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 瀬戸内海 / 島嶼部 / 木造建築 / 技術 / 生産システム / 工務店 / 伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、瀬戸内海の島嶼部における木造建築に目して、地方における地域の建築生産の変化とそれを促した要因を、現地での実態調査から明らかにするものである。その中でも特に、瀬戸内海の島嶼部において20世紀以降に建設された木造建築を対象にして、そこで採用された建築材料と構工法、及び建設に携わった生産組織の特徴について詳細に収集・整理した上で、それぞれがどのような変化の過程を辿ってきたかを解明することを主たる目的とし、平成29年度から平成31年度の3年間で調査研究を実施する。 この研究で対象とする島嶼部は、四方を海で囲まれた環海性という地理的環境にあり、外部からヒト・モノ等の生産資源が地域内に広く移動・定着・普及することを一定程度制限する。そのため、これらの地域内では、特別・特殊な場面において外部の生産資源が持ち込まれることはあっても、一般的な建築物を生産する場面では不要な変化が生じにくく、島嶼部で木造建築生産に変化が生じる裏側では地域の環境条件に重大な変化が生じたと考えられる。そこで、架橋型と独立型の島嶼部に分けて実態を把握することにしている。 平成30年度までの調査結果を踏まえて、令和元年度は、瀬戸内海における架橋型の島嶼(大崎下島、因島)と独立型である小豆島に加えて、比較対象として離島(隠岐)と本州側(広島県)において、地域の大工・工務店などの小規模な住宅生産者を中心にヒアリングと資料収集ともに紙面調査を実施した。加えて、過疎地域での木造建築の生産にかかる工数に関する調査も実施した。こうした調査から島嶼部内において成立しなくなった専門工事については、本州側から調達する事業者が各地に存在していること、多能工的な組織編成がなされていることが明らかになった。すなわち、過疎地域での木造建築技術の形成には他地域との協力関係や職種の統合によって成り立っていく可能性が高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今般発生した、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、最終年度の2月・3月に実施予定であった、本研究で得られた調査結果を他の過疎地域で比較し、結果の妥当性や残された課題の検証だけでなく、国際会議での成果報告を実施できない状況になった。そのため、補助事業期間を延長して、これらに対応することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの拡大の影響により残された作業である、検証作業と国際会議等での成果報告を、状況が整い次第可能な限り速やかに実施したい。 なお、本研究で明らかになってきた、島嶼部に見られる多能的な職方の存在については、これからさらに進展する職人減少の課題を緩和・解消する上で重要な知見である。したがって、このことを足掛かりに人口減少社会における職人の技能・能力形成の方策を提示する研究課題を立ち上げていく重要性が高い。
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Causes of Carryover |
今般発生した新型コロナウィルスの国内での感染拡大を受けて、2~3月中下旬に実施する予定であった、成果の検証及び発表・共有の場が延期となったため、当初の計画を遅延する必要性が生じた。次年度使用額については、日本建築学会への論文投稿や国際学会での発表にかかる費用に充てる計画である。
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Research Products
(7 results)