2017 Fiscal Year Research-status Report
近現代産業遺産としての住宅ストックとその再社会化に関する研究
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17K06713
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小山 雄資 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80529826)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 住宅政策 / 居住資源 / 給与住宅 / 住宅金融公庫 / 雇用促進事業団 / 織工アパート |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、奄美大島の伝統的な地場産業である大島紬の織工向けの給与住宅として1960~70年代を中心に建設された共同住宅(織工アパート)群を対象に、基礎データを収集した。これまでの調査で所在が明らかとなっている織工アパートについて、その土地・建物登記簿を収集し、建設時の資金融資の状況と建築的属性を把握した。 登記情報を入手した28棟の織工アパートのうち、土地・建物を担保として資金融資を受けていた建物は24棟であった。そのうち、民間の金融機関からの資金融資は戸数ベース、金額ベースともに全体の約1割に過ぎず、残りは政府系金融機関からの融資であった。戸数ベースでみると約5割が住宅金融公庫、約3割が雇用促進事業団からの融資であった。住宅金融公庫と雇用促進事業団は当時、給与住宅の建設に対する融資を制度化しており、織工アパートの多くは、それらを活用して建設されたものであることを明らかにした。 また、織工アパートの再評価と活用にむけた関心を喚起することを目的として、主に建築関係者を対象とした会合でこれまでの研究成果を紹介した。鹿児島県建築士会の建築技術講習会(2017年11月28日、奄美市内で開催)と日本建築家協会九州支部鹿児島地域会の例会(2018年1月16日、鹿児島市内で開催)において、それぞれ「名瀬のまちと住まいと大島紬」、「鹿児島の前現代の住まい」と題した報告をおこない、関係者から研究内容に対する助言をいただくことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた調査のうち、織工アパートの経営状況に関する調査については登記情報の整理に時間を要した。そのため、基礎情報を整理した段階にとどまっており、詳細調査・分析を次年度に持ち越すことになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度に作成した一覧表をもとに所有者に対する聞き取り調査と質問紙調査を実施する。また、住宅市場における織工アパートの位置付けを検討するために、地域内における民間賃貸住宅と公営住宅に関する情報を収集し、次年度以降の比較分析の項目を整理する。
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Causes of Carryover |
29年度に予定していた聞き取り調査、質問紙調査に係る物品費と旅費に相当する金額を持ち越したため。当該費用は30年度に執行予定である。
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