2018 Fiscal Year Research-status Report
近現代産業遺産としての住宅ストックとその再社会化に関する研究
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17K06713
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小山 雄資 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80529826)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 住宅政策 / 居住資源 / 給与住宅 / 住宅金融公庫 / 雇用促進事業団 / 産業労働者住宅 / 織工アパート |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度も前年度に引き続き、奄美市名瀬の織工アパート群を対象として研究を進めた。今年度は登記簿上の所有者を対象とした質問紙調査(郵送)と面談調査(訪問)を新たに実施し、織工アパートの居住状況、家賃、間取り、管理形態に関する情報を収集した。得られた情報を整理し、民間賃貸住宅の面積および家賃額と比較することで、奄美市の住宅市場における織工アパートの位置づけを検討した。 織工アパートの住戸面積は28㎡(1DK)から61㎡(3DK)まで幅があり、平均すると約40㎡である。月額の家賃は給与住宅として提供されている0円から最高4.5万円まで幅があるものの、平均すると3.25万円である。これらについて、2013年の住宅土地統計調査による奄美市の民間賃貸住宅(非木造)の平均値と比較すると、住戸面積(43㎡)はほぼ同じであり、家賃額(4万円/月)はやや下回っている。また、実際に不動産市場で募集中となっている賃貸共同住宅の面積、家賃の情報を収集した上で、その分布と比較した。その結果、織工アパートは比較的手ごろな賃貸住宅として位置づけられることがわかった。 今回調査することができた9棟122戸のうち、織工さんが居住している住戸は1戸のみであり、空き住戸は6戸であった。建設当初は給与住宅であった織工アパートが、現在は一般の賃貸住宅として活用されている。 アパートの運営管理(入居者の管理・仲介や共同部分の清掃・管理)については、管理会社に委託しているところは少なく、アパート所有者が直接おこなっているところが多い。運営上の課題としては設備の老朽化がもっとも多く、次いで耐震性の問題が挙げられている。今後の意向として、改善の意向はあるもののまだ検討中という状況がもっとも多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例的な考察にとどまっているものの、織工アパートの居住と管理の概況は把握できつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
民間賃貸住宅との比較考察を進めるために、不動産仲介のデータを継続して収集する。また、現況の公営住宅との比較にも着手する。これらの調査をもとに居住資源(ストック)としての織工アパートの位置づけを包括的に考察する。その際、市街地における空間的な分布に注目することで、織工アパートが市街地に点在していることの意義について考察する。
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Causes of Carryover |
現地調査の実施回数および人数が当初の計画から減ったことにより、旅費の支出が少なかったため。当初予定していた現地調査のうち未実施の内容は次年度におこなう。
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