2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K06740
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
秋元 一秀 崇城大学, 工学部, 教授 (90299660)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 集落再生 / 公園 / お堂 / 神社 / 墓地 / 運営集団 / 仮設住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
熊本地震で被害の大きかった熊本市南区城南町と富合町、南阿蘇村、西原村、御船町、甲佐町、嘉島町、益城町、宇土市、宇城市の集落を対象として文献及び現地調査を行い、立地場所、並びに、居住域及び集住形態、水系、道路、神社、墓地等の位置及び現状を確認し、それらの構成から集落の特徴を把握した。その空間構成は概ね、その立地場所により分類でき、平地、台地、ふもとなどにより異なる構成を示した。 集落内の共同空間の中で、集会場や広場、公園に対しては、震災直後の使われ方を把握するとともに、仮設住宅が建設された集落に対しては、建設場所、集落上の位置から分類を行った。集落の被害状況にもよるが、広場や公園が整備された集落ではそこが仮設住宅の建設地になっている場合が多く、特に、嘉島町では平成25年頃までに集落ごとに公園が整備され、多くの仮設住宅がそこに建設され、規模は小さいながら集落内の居住者を優先して入居させるなど、集落との関係が保持される仕組みとなっていた。 また、神社及び墓地に対しては、その被災状況を確認するとともに、再建過程の実態を把握した。益城町では、集落もしくはそれより小さい単位で所有・管理されているお堂の存在が顕著で、そこで行われる祭祀や行事が、集落から離れたところで住まわざるを得ない住民の拠り所となっていた。この調査結果に関しては、2018年3月の日本建築学会九州支部研究報告において発表を行った。神社の再建過程においては、神社間の協力や再建費用の捻出方法を現地調査より確認した。一方、墓地に関してはその再建が所有者自身に任される、または、任さざるを得ない面から、再建が滞っている実態を確認できた。そうしたなか、西原村では、所有者が確認できなくなった墓をまとめ、墓地全体の整備を進めている事例が確認できたことから、その過程を今後検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画では、集落の構成要素の配置、共同空間の位置及び被災状況に関する調査を行い、その結果をもとに分類し、分類ごとに詳細調査の対象集落を選定することになっていた。地震による被害の大きかった熊本市南区城南町と富合町、南阿蘇村、西原村、御船町、甲佐町、嘉島町、益城町、宇土市、宇城市の集落を対象として現地調査を行い、再建にかかわる分析の指標とその対象集落を選定できたことから概ね順調に進展していると判断した。 詳細調査では、集落内の共同空間の中で、広場や公園に対しては、それらの整備の有無が仮設住宅の建設位置と関係していることを確認した。ただ、集落との関係性に関する居住者の居住実態等の調査は行えず、今後の課題とした。 神社や墓に対しては、特に、益城町における神社及びお堂に関して現地調査を行い、その中のいくつかに対しては、神主や管理人に氏子範囲、被災への対応、祭礼の内容及び今後の運営に関するヒアリング調査を行い、概ね予定した進捗となった。 また、益城町の下寺中灰塚集落に対しては、震災前後の共同空間の使われ方や再建過程に関する現地調査及び住民へのヒアリング調査を行い、それぞれの共同空間にかかわる運営集団とその活動の実態、並びに、再建における課題を捉えることができ、予定以上の成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
集落構成に関しては、過去に調査を行った阿蘇カルデラ内の集落(南阿蘇村)を対象に同様の調査を行い、比較を通し、この10年間の空間構成上の変容と震災の影響を捉え、変容あるいは影響を受けやすい集落の構成要素の抽出を試みる。 共同空間の中で広場や公園に関しては、仮設住宅及びその居住者と集落との関係を明らかにする。住宅地が集落内の共同空間に建設された場合とそうでない場合、集落における位置、居住者属性などの点を踏まえ、区長及び居住者へのヒアリングまたはアンケート調査を通して、仮設住宅の運営及び居住者と集落との関係性における相違点を把握し、集落との関係保持の仕組みに関する知見を得るとともに、仮設住宅退去後の居住の動向を把握する予定である。 神社や墓地に関しては、まず、特徴的であった益城町の集落におけるお堂を介したコミュニティと集落再生の実態を、お堂の再建の状況と費用、並びに、お堂を介したコミュニティの震災前後の状況を把握する。また、益城町に立地する津森神宮は、周辺町村にも氏子をもつ郷社であり、西原村や菊陽村を含めて行われるオホシ祭りの中心的神社である。オホシ祭りをとり行う団体と運営実態、並びに、震災後の祭りと運営の状況を把握する。一方、墓地に関しては、震災後に再編・再建された事例に着目し、その過程及び運営団体の実態等をヒアリング調査などから把握するとともに、現代における墓地問題を踏まえ、再建の課題とその方策に関する知見を得る予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査での使用を前提としたノート型PCを整備する予定であったが、当該年度の調査においては当初考えていた機動性等は必要とされず保有する機器で対応し、整備を見送った。今後の調査内容を鑑み、あらためてノート型PCを整備する予定であり、それ以外には、調査及び成果発表に係る旅費、並びに、調査データの整理のためのアルバイト費などに使用する。
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Research Products
(2 results)