2020 Fiscal Year Research-status Report
遺構および造営史料からみる数寄空間の地域性と大工・造園技術の伝播に関する調査研究
Project/Area Number |
17K06746
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 善太郎 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (90314301)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大工 / 庭師 / 数寄空間 / 茶室 / 煎茶 / 和風 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である数寄空間の地域性と多様性の実態把握とともに、それらの成立の根本的な要因となる生産体制、すなわち造営にあたった大工や庭師といった職人の動向や技術における地域性の実態を明らかにするため、当該年度ではコロナ禍による遠方および緊急事態宣言発令地域に出向いての調査自粛要請のもと、研究代表者の所在地の近辺において以下の調査を行った。 京都市東山区白川畔にある八木邸の造営史料について整理し概要分析した。図面や仕様書など造営に関わる多くの史料類で、大工の履歴などを解明するに良質な史料であることを確認した。詳細な分析は次年度に行う予定である。京都市左京区にある住友有芳園について、住友史料館所蔵の建築および造園関連史料の調査を行った。図面や仕様書ほか茶会記や昭和大礼時の皇族宿舎として提供された際の家具配置など建築と庭の使用例の解明も可能な一級史料であることを確認した。次年度まで調査を継続し、分析を行う予定である。 彦根市にある玄宮楽々園八景亭について、彦根市役所文化財課で収集された造営史料類について分析を行い、創建時以後の移築・増築の経緯を明らかにした。島根県津和野町にある永明寺本堂及び庫裏の建築造営に関する史料類を整理した。造営過程など解明は次年度に行う予定である。大阪府松原市にある来迎寺三門の造営について、地元河内地域のだんじり造営に関わる大工の関与を示す史料を入手した。整理分析は次年度に行う予定である。京都府立図書館および京都工芸繊維大学附属図書館所蔵の近代和風建築に関する調査報告書を閲覧し、造営に関わった大工のデータを整理した。 これまで収集整理したデータ類のデータベース化及び研究報告書作成のための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究環境を整え、遅れていた収集資料の整理を補助員を使わずに行うことができた。 コロナ感染防止対策による他府県への移動自粛など、実地調査が困難な状態が続いたが、移動可能な近隣地域で良質な史料が入手でき、地元の図書館などを有効利用することで、年度当初の研究目標をおおむね達成することができた。 追加調査を実施したことにより、あらたな知見を得ることができ、より充実した研究成果をあげることができたが、新出の資料整理に少々遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度予定していた国立国会図書館および建築学会図書館、根津美術館など遠隔地での文献および遺構調査を早急に実施し、これまでの研究成果と合わせ総括を行い、報告書を刊行する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染防止対策による出張の自粛要請を受け、予定していた遠隔地での実地調査および文献調査が実施できなかったことにより、研究の総括が未完の状態であり、研究成果を公表するための報告書の作成ができなかった。次年度は早急に調査を実施し、研究の総括後、報告書を作成する。
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