2017 Fiscal Year Research-status Report
中世及び近世における寺社諸堂の規模決定技法に関する研究
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17K06751
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大上 直樹 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (60411732)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 寺社建築 / 技術史 / 文化財 / 表の間 / 規模 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度であることから研究に必要な資料の収集・整理を重点的におこないつつ、社寺諸堂の表の間の決定技法の検討をはじめた。 具体的に資料収集をおこなったものとしては、群馬県立図書館蔵大工文書、福島県田村市の横田家大工文書、奈良国立文化財研究所蔵木奥家文書、香川県丸亀市塩飽大工文書について現地に赴き複写等資料を収集したことがあげられる。 また実際の歴史的建造物については、金剛寺、春日大社、法隆寺のほか、尾道市で現在修復中の重要文化財常称寺本堂現場の調査をおこない同市の西国寺山門も実測調査を実施した。さらに高知市の重要文化財土佐神社の社殿と楼門の規模の関係を探るために楼門の実測をおこなった。その他高知県内の山間部で幕末から明治期に盛んに建立された所謂長州大工による社寺建築についても調査をおこなった。また福島県会津地方に集中して残る三間堂12棟や社殿が5棟横に並ぶという特異な社殿配置である秋田市赤神神社五社堂も研究資料に資するため現地調査をおこなった。 その他、調査結果の検討と研究協力者等との情報交換のため4年前から立ち上げている技術史研究会の勉強会を大阪市立大学において3回開催した。今年度の初回(通算13回目)は7月に「教王護国寺御影堂の概要と小屋組みについて」(京都府文化財保護課技師)、「日本建築の五原則」(大上)というテーマでおこない、第2回(通算14回目)は9月に「我が国における鋸の文明史」(渡邉晶)、「1枝寸法と垂木の関係について」(大上)というテーマでおこなった。第3回(通算15回目)は12月に「佐渡の近世社寺建築にみられる組物の架構技法について」(赤石憲祐)、「法隆寺建築の設計技法」(大上)というテーマでおこなった。毎回10数名の参加者があり研究課題にとどまらず幅広く日本建築技術史について熱心な議論が交わされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は基礎資料である大工文書の収集に努めたがまだ十分ではなく今後も埋もれた資料を発掘する努力が必要である。また文化財建造物の図面についてはかなりの枚数を収集したがこれも継続する必要がある。なお公式の図面のない建造物については現地調査が必要であるが十分おこなわれなかった。 他方これまで収集した資料を基に順次図面を作成し建物規模の相互の関係性について検討をはじめているが、今年度は特に古代寺院である法隆寺の諸堂の関係を検討した結果、比例関係は中世より古代のほうが支配的である可能性が高いことがわかってきたので、本研究の意義はより高くなったのではないかと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
大工文書や図面の収集、現地調査は継続して実施するが、それら資料の分析や検討を研究の中心課題としなければならず、そのため多くの作図が今後は必要である。また表の間という平面的な関係に着目してきたが、高低差という高さの関係についても重要である可能性が出てきたためそれを研究のなかでどのように反映するかが目下の課題である。 現在までの考察で法隆寺諸堂についての論文はすでにできているが推敲を進めて近日中に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究初年度である今年は全体に資料収集を中心におこなったが、図面資料は購入ではなくできるだけ複写をしたことにより物品費が節約できたためであり、旅費は資料収集のための調査出張を選別したことにより減が生じた。これらは次年度に研究協力者の協力を得て執行する予定である。人件費・謝金は特に社寺建築図面のCAD入力を依頼できる方が確保できなかったためで、次年度は確保できる見通しであり作図が進む予定である。その他は論文投稿料等を見込んでおり次年度に執行する予定である。
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