2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on techniques for determining the frontage size of the architecture of temples and shrines in the Middle Ages and early modern times
Project/Area Number |
17K06751
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大上 直樹 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (60411732)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 表の間 / 社寺建築 / 比例 / 枝割制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は中世から近世までの寺社諸堂の規模、特に正面の間口寸法である「表の間」がどのような設計原理に基づいて決定されてきたかを、境内諸堂相互の規模の関係性に着目して解明するものであった。 研究はまず近世木割書に僅かに残る建物相互の関係性についての記述を拾い出して、中・近世の建物相互の関係性の解明の手掛かりとした。そして境内に複数の建造物がある寺社を選定し、主に修理工事報告書を基礎資料として中・近世の社寺建築の図面を収集し、それらの「表の間」の間にどのような関係性があるかを検討したのである。ただそのためには新たな視座が必要で、ひとつは建造物の「表の間」の規模の捉え方である。近世木割書等を参考にすると柱位置は、必ずしも真々(ナカスミ)だけで指定されるのではなく、柱外法寸法(ヲゼ)、内法寸法(ダキ)からなることから、それらを念頭において関係性を検討すること、また相互の関係を整数比などの比例関係に着目する必要があった。さらに研究では境内の建造物相互の関係だけでなく、本堂と厨子や鐘楼と鐘などの規模の関係についても検討をおこなった。 検討の結果は事前の検討を裏付ける結果になった。神社においては、もっとも基本的に認められる本殿と拝殿の関係は1:1である。ただしそれは真々が揃うのではなく本殿外法(ヲゼ)が拝殿内法(ダキ)に一致するという関係である。ちょうど本殿が拝殿にすっぽりと納まる関係である。寺院においては、本堂中央間を基準とする事例が多く認められた。 本研究によって、社寺建築の規模は任意に決められるのではなく、主要な建物と関係性をもった規模で決定されていることを指摘できた。さらに中・近世の社寺建築の規模決定が、まず建物全体を示す「表の間」から決定されている意味は、中世社寺建築の平面が垂木間隔から定めるとする「枝割制」を根本から再考する手がかりになる意義を含んでいると考えられるのである。
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Research Products
(1 results)