2017 Fiscal Year Research-status Report
トルコにおけるアンリ・プロストの都市計画とミュゼ・ソシアルの役割に関する研究
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17K06752
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三田村 哲哉 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70381457)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イスタンブール / アンカラ / アタテュルク / 都市・農村衛生部会 / フランス都市計画家協会 / ヘルマン・ヤンセン / レオン・ジョスリー / ビザンティン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は次の3点に大別される。第1は、パリの20世紀建築資料センターの建築図面と書類、書簡、ローマのフランス・アカデミー古文書館の書類と書簡、イスタンブールの考古学博物館附属図書館の全6巻からなるスケッチ集を照合することによって、アンリ・プロストが手がけたハギア・ソフィア大聖堂の修復案について、ローマ賞受賞後の渡伊以前から抱いていたビザンティン建築への関心、内部を中心に写真撮影を行った当時の大聖堂の実態、現地入りしたプロストの興味・関心の対象、調査に至るトルコ政府との手続きに関する史実と、精緻な形状と寸法の把握に基づいた大聖堂の全体像と修復案、パリにおける本案の紹介によるビザンティン教会堂に対する興味・関心の向上を明らかにした。この研究成果は2018年度日本建築学会大会学術講演で発表する予定である。第2は近代トルコ都市計画の専門家で中東工科大学建築学部教授ジャーナ・ビルセルとの学術情報の交換である。具体的な内容はプロストによるモロッコ15都市、ヴァール県コート・ダジュール、パリ、メスに関する知見の提供と、イスタンブール、イズミールおよびブルサの都市計画の実態、イスタンブールのアタトゥルク図書館を中心とした資料の保管場所とその状況、トルコ共和国初代大統領アタトゥルクによる近代都市建設の意図と現実、プロスト以後のトルコ人都市計画家の育成と役割、プロスト以外の建築家・都市計画家の活動と実績に関する学術情報を取得である。第3はアタトゥルクがイスタンブールの都市計画と同時期に遂行したアンカラの新首都計画に関してである。フランスの建築家・都市計画家レオン・ジョスリー、ドイツのヘルマン・ヤンセン、ジョゼフ・ブリックスによる3案と実地調査の成果を照合し、歴史と地理を尊重した保全と道路網を中心とした開発の両立を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、夏季と春季の休業期間中にそれぞれトルコとフランスを訪問する予定であったが、春季の休業期間中に両国を訪問し、資料収集、実地調査、学術交流の3点を実施した。具体的な内容は、アンリ・プロストによるイスタンブールの都市計画案「ヨーロッパ側基本計画」(1937)に関する資料の収集、および図面と報告書に基づいた考察、中東工科大学建築学部教授ジャーナ・ビルセルとの学術交流、アンカラの都市計画に関する資料収集と実地調査の3点であった。初年度の実績は、第1にアンリ・プロストが手がけたイスタンブールのハギア・ソフィア大聖堂修復案に関する具体的な史実の解明、プロストが描いた図面の内容および意図の解読、同修復案のパリにおける評価とその後の教会堂の形式に与えた影響の把握である。「同基本計画」(1937)に関する資料収集はおおかた完了しているが、アタトゥルク図書館における資料調査が必要で、「同基本計画」(1937)に関する考察がやや遅れている。第2は学術交流で、初年度に実施し、アンリ・プロストの都市計画に関する意義ある成果が得られたばかりでなく、トルコ近代都市計画全般に渡る知見が得られ、当初の予定以上の成果であった。第3のアンカラの都市計画に関する調査も順調に進むとともに、アルフレッド・アガシュやエルネスト・エブラールらのプロスト以外のミュゼ・ソシアルに所属する建築家・都市計画家たちについての調査も実施した。本年度の研究実績は以上の通りである。「同基本計画」(1937)に関する調査には若干の遅れが見られるものの、複数の新たな研究成果が導き出されたという点で、初年度の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、次年度の主な考察の対象は「アナトリア側基本計画」(1937)とブルサの都市計画(1938-44)に定めていた。また最終年度の研究内容は「ボスポラス海岸計画案」(1939-48)に関する考察と、全3年度間の研究全体の取りまとめとしていた。初年度の研究実績を鑑みると、現在これらの一連の考察の対象と研究推進の方策に変更はない。初年度に実施する予定であった「ヨーロッパ側基本計画」(1937)に関する研究にやや遅れが見られるため、まず第一にそちらを挽回する。上記の通り、初年度の研究実績のうち、ハギア・ソフィア大聖堂修復案に関する主な研究成果の1つに、アンリ・プロストが描いた、同大聖堂が建設された地域、その後「考古学公園」と称されるようになる一帯の古代都市の復元案に関する考察がある。また初年度、学術交流においてプロストによる都市計画ばかりでなく、トルコ近代都市計画全般に関わる知見を得るにとどまらず、ヘルマン・ヤンセンによる比較考察の対象である、アンカラの都市計画に関する研究の成果や、プロスト以外のフランスの建築家・都市計画家を踏まえた上で、プロストが手がけた一連のイスタンブールの都市計画に注力する。そのため、当初の計画よりも研究成果の深化が期待できる。モロッコ、フランス、トルコの都市計画は「保護領の分離政策と文化財の保護政策」、「都市拡張を推進するための都市計画法の制定」、「近代国家樹立を象徴する都市建設の方針」という背景がまったく異なり、こうした相違が都市計画にどのような形で現れたのか、こうした課題に対する回答が最終目標であることに変わりない。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、夏季と春季の休業期間中にそれぞれフランスとトルコを訪問して、パリ、イスタンブール、アンカラにおいて資料収集、実地調査、学術交流を実施する予定であった。初年度に実施した外国出張は、上記3点の研究活動を遂行するための春季のトルコとフランスの訪問であった。直接経費のうち、当初の予算計画の額よりも支出額が少なく、次年度使用額が生じた最大の理由は、夏季と春季に予定していた外国出張を春季のみ実施したためである。次年度使用額の使用計画は次の通りである。第1に、次年度には資料収集と実地調査のためにフランスとトルコへの外国出張が予定されており、外国出張の期間を当初よりも延長して旅費の増額に充てる予定である。初年度に実施した学術交流の成果に基づいて、イスタンブールのアタトゥルク図書館における資料調査が当初の計画よりもさらに必要になったためである。第2の使用計画は図書費の増額である。初年度の研究成果に基づいて、ミュゼ・ソシアルの役割を総合的かつ精緻に解明するためには、プロストばかりでなくそのほかの建築家・都市計画家たちについても調査を実施する必要が生じた。図書費の増額は特に、ミュゼ・ソシアルの都市・農村衛生部会に所属した建築家・都市計画家に関する調査費に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)