2017 Fiscal Year Research-status Report
Relationship between sugar refinery factories' construction and area development in the Japanese administration area before World War II
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17K06754
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 製糖業 / 台湾 / 沖縄 / 北海道 / 台湾日日新報 / 北海タイムス / 大縮尺都市地図 / 火災保険地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,戦前期に日本の影響下にあった全ての地域で営まれた製糖業に着目し,相互の比較を通じて類型化を行い,工場建設と周辺の地域開発との関係を明らかにすることである。1年目である平成29年度は,当初,沖縄と北海道の新聞記事の収集と整理,2年計画で入手を予定している台湾の新聞記事の収集と整理,さらに台湾の行政資料の収集を計画していた。 実際には,まず,平成29年9月と平成30年3月に台湾を訪問して,台湾日日新報の製糖業に関係する記事の収集を行った。その際,研究協力者を通じて,記事の収集の一部を台湾の学生に前倒しで依頼することができた。当初の計画では,2年目である平成30年度に依頼する予定であったが,平成29年度内に一定の分量の記事をデジタルデータで受け取ることができた。 沖縄に関しては,平成29年8月の日本建築学会大会(広島で開催)でこれまでの成果を発表できた。北海道に関しては,北海タイムスのデジタルデータを入手することができ,平成30年2月に札幌を訪問して補足調査を行った。 また,平成29年5月に,神戸女子大学を訪問し,朝鮮における建築史・都市史に詳しい研究協力者から情報提供を受けると共に,助言も得て,朝鮮の製糖工場と社宅街に関する予備調査を開始できた。 さらに,工場と社宅街周辺における地域開発の把握に必要な都市地図に関する調査も進めることができた。特に,台湾と樺太における大縮尺都市地図としての火災保険地図に関する研究を進めることができ,平成29年11月には台湾・台南市で開催された学会での発表(英語)と雲林科技大学での招待講演(英語)を行い,平成30年2月にはH-GIS研究会(京都で開催)での発表を行った。また,平成30年2月から6月までの予定で,研究協力者らと共に復刻出版に取り組んでおり,編集や別冊解題の執筆を担当している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象とする地域の新聞記事と行政資料の収集と整理については,台湾日日新報の記事の収集は予定よりもかなり進めることができ,北海道の新聞記事も入手することができた。しかし,台湾と北海道に関して入手した新聞記事の整理については共に十分には進めることができなかった。また,新聞記事の収集に力を注いだために,特に台湾の行政資料の収集は遅れ気味である。ただし,全体として差し引きを考えると,当初予定していた作業量と同じ程度の作業は進めることができたと判断できる。 また,朝鮮と満洲における製糖工場と社宅街に関する予備調査については,朝鮮に関しては着手することができたが,満洲についてはほとんど進めることができなかった。今後の課題である。 一方で,当初の研究計画ではそれほど大きくは捉えていなかったが,本研究を遂行していく中で,工場と社宅街周辺における地域開発の様相を把握する際に必要不可欠な都市地図に関する研究を予想外に大幅に進めることができた。台湾で開催された国際学会での研究成果の発表だけではなく,戦前期に作製された火災保険地図(火保図,火災保険特殊地図)の復刻出版の作業を進めることができている。戦前期の外地を対象とした火保図はこれまで見出せておらず,復刻出版によって多くの読者に見ていただき,研究史料として活用いただけるようになることは大変重要な成果と考えている。また,編集作業と解題・解説の執筆作業を通じて,大縮尺の都市地図に関する理解も相当程度まで深まり,さらに,様々な地図を入手できた。これらは本研究の今後の進展のために、大変重要な情報であると考えられる。 これらを総合的に判断すれば,研究の進捗状況としてはおおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年4月の本研究の内定時に提出した申請書では,平成30年度には次のような内容の研究を計画していた。すなわち,沖縄と北海道の新聞記事の整理と考察,2年計画で入手を予定している台湾の新聞記事の入手,を継続する予定としていた。また,台湾では行政側の資料の収集も行い,朝鮮と満洲の予備調査も進める予定としていた。 現時点でも,その計画は大筋では変更する必要はなく,着実に研究を進めていけばよいと考えている。台湾の新聞記事については,平成30年度中に,当初予定していた内容についての収集作業を終える目途がついた。ただし,他の地域も含め,これらの記事を再度詳細に閲覧して整理する作業には相当の時間がかかることが予想されるので,今後,鋭意作業を進めたい。また,調査が遅れ気味の行政資料の収集については,今一度,その内容を精査し,遅れを取り戻すべく,鋭意作業を進めたい。 一方,平成29年度からの課題でもある朝鮮と満洲の製糖業に関する調査については,実際に調査を進めてみることが必要だと考えている。その試みの中で課題を見出し,その解決策を検討したい。 なお,平成29年度に,大きく進められた大縮尺の都市地図に関する調査についても引き続き作業を進め,論文を公表するなどして外部に発信したい。なお同時に,他の研究成果についても,学会などでの発表だけではなく,様々な機会を捉えてできる限り外部に発信したいと考えている。
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Causes of Carryover |
北海タイムスの記事のデジタルデータでの購入は,当初は大正7年から昭和20年までを対象としていた。しかし,平成28年秋の本研究の申請時に比べて,平成29年4月の内定時では経費が減額されたために,台湾での調査をはじめその他の研究計画を実施できなくなる可能性が生じた。そのため,経費の支出計画を見直し,大正8年から10年までの北海タイムスの記事は別の費用で購入した。 しかし,結果的には,台湾への資料収集のための出張費用も何とかやりくりができ,また,台湾で開催された国際学会への参加のために,校費で出張した際に同時に調査を行うことができた。したがって,その分,経費がかからなかったため,次年度使用額が生じることになった。 次年度使用額を含めた平成30年度の使用計画(906,708円)は,以下の通りである。 図書・各種資料/史料購入費130,000円。消耗品費(一般文具一式)30,000円。国内旅費(北海道80,000円,沖縄50,000円,成果発表50,000円)。国外旅費(台湾250,000円+170,000円)。謝金(109,660円)。その他(37,048円)。内定時の経費の減額により,調査を諦めていた沖縄での現地調査を実施し,同じく日程の短縮を考えていた台湾での調査期間を平成28年秋の申請時に計画した日程に戻すことを予定している。
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