2019 Fiscal Year Research-status Report
Relationship between sugar refinery factories' construction and area development in the Japanese administration area before World War II
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17K06754
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 製糖業 / 台湾 / 北海道 / 樺太 / 沖縄 / 台湾日日新報 / 花蓮 / 地図集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,戦前期に日本の影響下にあった全ての地域で営まれた製糖業に着目し,相互の比較を通じて類型化を行い,工場建設と周辺の地域開発との関係を明らかにすることである。当初の予定では,3年目である平成31年/令和元年度は,これまでに収集した台湾や北海道に関する資料の精読に比重を移しつつ,朝鮮と満洲を対象とした本調査を進める予定であった。 実際には,05月,06月,09月に台湾を訪問して,台湾日日新報の製糖業に関係する記事やその他の資料収集を行った。なお,12月にも,別の費用(他の科研費の分担金による)で台湾を訪問し,併せて資料収集を行い,台湾側の研究者とも意見交換を行った。また,一部別の費用によった06月の台湾訪問では,『花蓮觀光糖廠日式房舎修復及發想論壇』で「日治時期糖廠聚落調査成果」をテーマに講演し,これまでの研究成果を台湾に還元できた。さらに,12月には,懸案であった『臺灣糖廠與社宅街變遷圖集』(書誌情報上では09月発行)が台湾で発行され,大きな成果を挙げることができた。 これらの台湾訪問に引き続き,03月にも台湾を訪問する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の影響でキャンセルせざるを得なかった。しかし,この期間を利用して,台湾日日新報の記事の整理と精読をさらに進めることができた。 北海道については,07月に札幌を訪問し,樺太の資料も含めて,北海道立文書館と北海道立図書館で資料収集を行った。一方,北海道の製糖業を対象とした新聞記事の整理は,依然としてなかなか進めることができなかった。ただし,戦前期に製糖業を営んでいた企業の後身である日本甜菜製糖の100年史が発行され,研究成果の一部を掲載していただくことができた。 朝鮮と満洲については,10月と11月に東京の糖業協会を訪問し,資料を閲覧したが,研究の遅れを挽回できるほどは進めることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成31年/令和元年度には,平成30年度の遅れを取り戻すために,鋭意努力したつもりである。その甲斐があり,台湾を対象とした研究については,かなり前に進めることができた。台湾日日新報の記事の収集については,完了したとまでは言えず,未だ補足調査も必要ではあるが,研究を進めるためには,まずは十分な量を確保できたと考えている。さらに,これまでに収集してきた個々の記事の整理も進めることができ,取り纏めと考察の際の方針も明らかになってきた。 また,研究実績の概要の項でも触れたが,『臺灣糖廠與社宅街變遷圖集』の発行と『花蓮觀光糖廠日式房舎修復及發想論壇』での講演は大きな成果であった。両者とも,台湾での成果発表であり,これまで様々な資料や情報を提供頂いてきた台湾側に,少しは成果を還元できたと考えている。このように,台湾については,当初の計画よりも研究を前に進めることができていると自己評価している。 しかし,その一方で,他の地域を対象とした研究については,平成30年度と同様に,ほとんど進めることができなかった。本研究では,戦前期に日本の統治下にあった全ての地域で営まれていた唯一の産業である製糖業を対象としているため,研究対象地域が広い。それをカバーするために,当初の計画では,順を追って研究できるよう慎重に計画を立案したが,予想以上に地域による進度に差ができてしまった。満遍なく研究を進めるよりも,一つの地域に注力して研究を進める方が,どうしても効率がよいという事情もある。そうではあっても,最終年度の1年間で,鋭意取り組むべき課題である。 これらを総合的に評価すれば,研究の進捗状況としては,台湾については,「当初の計画以上に進展している」と評価できるが,研究が進んでいない地域もある。そのため,「遅れている。」と評価するほどではないものの,「やや遅れている。」と評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年04月の採択内定時に提出した申請書では,最終年度である令和02年度には,次のような内容を計画していた。すなわち,不測の事態への対応も含め,新規の調査は行わず,台湾,朝鮮,満洲を対象とした補足調査に留め,収集した各種資料/史料の精読,さらに考察と研究のまとめに重点を置くことを予定していた。 本報告書を作成している令和02年05月初旬現在では,新型コロナウイルス感染症の先行きが全く見えず,年度内を通じて,国外での調査だけでなく,国内でも東京などでの調査の実施は非常に困難なことが予想される。そのため,不測の事態への対応も加味して当初の計画を立案できていた点を活かし,まずは,これまでに収集してきた資料の整理,精読ならびに考察に鋭意注力したい。特に,台湾については,現地調査へ赴くことができない期間を利用して,資料のとりまとめと考察を進める。 その一方で,実施が遅れている朝鮮と満洲に関する調査については,まずは,オンライン上での資料収集など,当初想定していた方法とは異なる方法を試みたい。新型コロナウイルス感染症への対応のために遠隔授業などの準備が例年より増加するとは言え,このような時期だからこそ,現地調査が実施できなくとも,何とか研究の進展を図ることに挑戦したい。もしくは,国内での調査だけでも,当初の目的を達成できるよう模索したい。もちろん,国外での調査が可能になった際にはすぐにでも調査に赴けるよう,準備は整えておく。 困難な時期であるからこそ,研究者としては,より一層研究に真摯に取り組み,従来は想定していなかった新しい方法にも挑戦し,少しでもよい成果を挙げることができるよう努力したい。
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Causes of Carryover |
前述のように,新型コロナウイルス感染症のため,令和02年03月に予定していた台湾での調査をキャンセルせざるを得なかった。そのため,この調査のための旅費として予定していた約14.5万円(航空機料金のキャンセル料を除く)の次年度使用額が生じることになった。 次年度使用額を含めた令和2年度の使用計画(645,390円)は,以下の通りに考えている。ただし,旅費の予算執行については,新型コロナウイルス感染症のために,先行きが全くわからない。そのため,当初の目的を達成することを第一に考え,柔軟に使用計画を変更して対応したい。例えば,少し高額になったとしても,資料/史料の購入で対応できる場合は,旅費の一部を資料/史料の購入費用や複写費用に充てるなどの対応が考えられる。また,可能であれば,謝金を利用して,遠隔地の研究補助者に資料収集を依頼することも考えられる。 「図書・各種資料/史料購入費100,000円。消耗品費(一般文具一式)30,000円。国内旅費70,000円(東京)。国外旅費(台湾120,000円+120,000円,韓国120,000円)。謝金(70,000円)。その他(15,390円)。」
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Remarks |
『花蓮觀光糖廠日式房舎修復及發想論壇』(2019.06.20,花蓮觀光糖廠木屋會議室(台湾))で「日治時期糖廠聚落調査成果」をテーマに講演した。 『日比谷カレッジ 企画展示関連講座 古書で紐解く近現代史セミナー 第35回』(2019.11.27,千代田区立日比谷図書文化館)で「戦前期の樺太の街はいかにして建設されたのか-火災保険特殊地図をもとにした現地調査でわかったこと-」をテーマに講演した。
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