2020 Fiscal Year Research-status Report
Relationship between sugar refinery factories' construction and area development in the Japanese administration area before World War II
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17K06754
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市史 / 産業 / 製糖業 / 台湾 / 台湾日日新報 / 濁水渓 / 蘭陽平野 / 製糖工場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,戦前期に日本の影響下にあった全ての地域で営まれた製糖業に着目し,相互の比較を通じて類型化を行い,工場建設と周辺の地域開発との関係を明らかにすることである。当初は,4年目である令和2年度では,不測の事態への対応も含め,台湾・朝鮮・満洲を対象とした補足調査に止め,収集した各種資料/史料の精読,考察と研究のまとめに重点を置く予定であった。しかし,3年目である昨年度の実施状況報告書を提出した段階では,進捗状況と新型コロナウイルス感染症の影響も考え,これまでに収集してきた資料/史料の取り纏めに注力し,実施が遅れている朝鮮と満洲に関する調査についても,当初想定した方法とは異なる調査方法を試みることを考えていた。 新型コロナウイルス感染症の影響で,本年度は図書館や資料館の訪問も含めて,現地調査を実施できなかった。しかし結果的に,これまでに収集した資料/史料の取り纏めに,これまでになく時間を費やすことができた。その結果,台湾の中西部の濁水渓流域における製糖業と地域開発との関係に関する考察を進めることができた。これまであまり注目されておらず,研究も進んでいなかったが,清朝末期から日本統治期へ移行する際の製糖業と地域開発の関係について,特定の地域ではあるが,明らかにできた。まず,台湾人資本による小規模な改良糖■(■は,まだれに部)を建設し,その後に,日本人資本による大規模な新式製糖工場へと集約することによって,地域開発を進めるというものである。また,台湾中西部とは異なる過程を辿った台湾東部の蘭陽平野における地域開発についても考察を進めることができ,両者の特徴や違いも明確にすることができた。 また,これまでの研究成果を,文化人類学を専門とする研究者による研究会と経営史学会関西部会で,それぞれ発表することができ,異なる分野の異なる視点を持つ研究者との意見交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度についても,平成31年/令和元年度までの遅れを取り戻すために,鋭意努力したつもりである。また,当初計画では,4年目である令和2年度には,不測の事態への対応も含めて新しい項目の調査は行なわず,研究の取り纏めに専念するよう計画していた。しかし,新型コロナウイルス感染症の影響によって,遠隔式の講義の準備など,さすがに当初の計画立案時には想定していなかった業務に多くの時間を割かざるを得なかった。特に,年度の前半は,平成30年度と同様に,大学の業務に関連する業務を担うことになった。こちらも新型コロナウイルス感染症の影響で,平成30年度の時とは異なった対応を迫られたこともあり,多くの時間を割くことになった。 また,新型コロナウイルス感染症の影響で,1年間を通じて,国外はもとより熊本県外への出張が全く許可されず,東京の図書館や資料館などへ赴いての資料/史料収集ができなかった。 そのため,これまでに収集してきた資料/史料が多い台湾を対象とした研究に注力することになった。一方で,新型コロナウイスル感染症下だからこそ,新しい研究方法を模索しようと考えた朝鮮や満洲については,依然としてほとんど研究を進めることができなかった。また,これまでに収集した資料/史料を精読することに重点を置いた台湾についても,収集した資料/史料の理解は進んだものの,それに伴って必要が生じた追加の資料/史料の収集は思うように実施できなかった。インターネット上で資料/史料を収集したり,台湾の書店などから直接書籍を取り寄せるなどの努力をした結果,かなりの資料/史料を収集できるようになったものの,やはり実地調査ができないと,最後の部分が詰め切れなかった。 このような事情を勘案して,研究の進捗の遅れには,新型コロナウイルス感染症の影響が大きいと考え,補助事業期間延長を申請して承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の延長は1年間で,再度の延長は認められないので,この1年間で少しでも当初立案した計画の内容を実現できるよう最大限の努力をしたい。昨年度とは異なり,遠隔式の講義の準備なども2回目であるので,より多くの時間を研究に割くことができると考えている。ただし,国内外への出張は依然として難しい状況を考え,発想を転換して,現地調査ができないことを前提に,現在取り組むことができる方法で,最大限の成果が得られるように今後の研究を推進したい。 台湾については,現地で入手するよりもかなり割高ではあるものの,台湾日日新報のデータベースが利用できることはわかっているので,これを利用して補足調査を進めたい。また,台湾への出張ができないことを前提に,早い時期から台湾のインターネット書店などを通じて書籍を購入したい。これは,昨年度は,もしかすると年度後半には出張できるかもしれないとの思いから,対応が遅れた反省による。さらに,現地での調査に時間を割けないことを逆に利用して,これまでに収集してきた資料/史料の整理と精読に,より一層の時間を割いて取り組みたい。 その一方で,実施が遅れている朝鮮と満洲に関する調査については,昨年度提出した実地状況報告書での記述の繰り返しになるが,まずは,オンライン上での資料収集など,当初想定していた方法とは異なる方法を試みたい。昨年度よりも研究時間を確保できると想定できるので,このような時期だからこそ,現地調査が実施できなくとも,何とか研究の進展を図ることに挑戦したい。もしくは,国内での調査だけでも,当初の目的を達成できるよう模索したい。 昨年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症下の困難な時期であるからこそ,研究者としては,より一層研究に真摯に取り組み,発想を転換させ,従来は想定していなかった新しい方法にも挑戦し,少しでもよい成果を挙げることができるよう努力したい。
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Causes of Carryover |
前述のように,新型コロナウイルス感染症の影響で,熊本県外への出張が許可されず,補足調査のための出張旅費を中心に,次年度使用額が生じた。昨年度の実施状況報告書を提出した段階では,台湾や韓国への国外出張は非常に難しいとは考えていたが,国内の出張がこれほど長く許可されない事態は想定できていなかった。 令和3年度度の使用計画(486,353円)は,次のように考えている。ただし,新型コロナウイルス感染症の先行きは依然として不透明なため国外での補足調査は実施できないことを前提に,最も効果があがるような使用を心がけたい。特に,台湾日日新報の記事の補充については,台湾で入手することを諦め,インターネット上で利用できる有償のデーターベースの利用に切り替える。また,図書の購入についても,現地からの直接の取り寄せのほか,国内の書店を通じての取り寄せの可能性も考える。そのため,少し多めに予算を計上した。また,補助事業期間を延長したことを前向きに捉え,査読付き論文にも投稿して成果を公表したい。 台湾日日新報データベース利用料120,000円。図書・各種資料/史料購入費120,000円。消耗品費(一般文具など一式)30,000円。国内旅費70,000円(東京)。論文投稿費93,500円。謝金35,000円。その他(17,853円)。
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Remarks |
『「日本植民地期遺産をめぐる歴史認識の文化人類学的研究-建築物のライフヒストリーから」研究会 』(2020.10.24,オンライン)で「日本植民地期の建築物を対象とした調査の実際と建築・建設活動の地域間比較」をテーマに報告し,意見交換を行った。
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