2017 Fiscal Year Research-status Report
逓信建築にみる我が国の国際建築様式(インターナショナルスタイル)の受容について
Project/Area Number |
17K06756
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Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
大宮司 勝弘 東京家政学院大学, 現代生活学部, 助教 (00398778)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代建築調査 / 国際建築様式 / 逓信建築 / 昭和初期 / 現況調査 / 設計図面 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨーロッパから始まった国際建築様式は昭和初期に郵便局、電話局などの逓信建築にも導入され、我々が現在認識している都市風景の端緒ともなっているものである。しかし近年、解体されるものが多く、これらの記録が急がれるところである。 本研究の骨子になるのは、現存している貴重な逓信建築の記録調査と設計図面の分析作業である。今現在も徐々に解体が進んでいく中で、本研究応募時に最初に予定していた旧天下茶屋電話局は採択時直前に解体されてしまっており、それだけ急がれる研究であるといえる。一方、平成29年の旧熊本逓信病院や旧熊本地方貯金支局の解体にはぎりぎり間に合った形になり、所有者の許可も得られたため解体現場に立ち入り建築記録調査を行った。解体は残念であるものの、本研究による最後の記録が今後活きていくことになろう。また建築の解体現場ではそれまで見えなかった機構部分が明らかになることも多く、大きな収穫があった。 次に全国各地に残されている昭和初期の10件の逓信建築の現況を実地調査した。建築の外観だけでなく、所有者から許可されたものに関しては内部まで現況調査を行った。そして地元の図書館、公文書館、郷土資料館、法務局で文献や写真資料、公文書から建物の履歴調査も併せて行っている。 東海大学学園史資料センターには逓信省技官だった山田守が持ち込んだ93件の逓信建築の貴重な設計図面(青図)があるが、非常に劣化が進んでいた。そこで本研究に必要な前段の作業として内8件の文化財資料専門業者による電子データ化を行った。 それらの成果については研究論文として日本建築学会での口頭発表、市民向けの講演も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧熊本逓信病院と旧熊本地方貯金支局の2件に関しては解体現場における記録調査を終了した。 また日本各地に現存する逓信建築のうち、1.旧下関電信局電話課(現:下関市立近代先人顕彰館)、2.旧門司電報電話局(現:門司電気通信レトロ館)、3.旧別府電報電話局(現:別府市児童館)、4.旧大分電報電話局(現:NTT西日本大分支店別館)、5.旧山田郵便局電話分室(現:レストラン 「ボン・ヴィヴァン」)、6.旧和歌山郵便局電話分室(現:京橋会館付属棟)、7.旧逓信省芦屋別館(現:芦屋モノリス)、8.旧吹田電話局電話分室(現:NTT西日本吹田ビル別棟)、9.広島逓信病院旧外来棟(現:被爆資料室)、10.旧姫路電話局(現:姫路モノリス)の10件については現況調査及び履歴調査を行った。 東海大学学園史資料センター所蔵の逓信建築図面に関しては特徴的な8件を選んで文化財資料専門業者による電子データ化を行った。その中で現存が確認された旧和歌山郵便局電話分室、旧吹田電話局電話分室の2件については所有者の許可も得られ、現況との比較調査も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査によって得られた資料を分析し、学術論文や報告書にまとめていくことになる。すでに、解体現場に入っての旧熊本逓信病院の調査報告に関しては平成29年度日本建築学会関東支部研究発表会で一部を報告したが、今後更に調査報告書とまとめる予定である。旧熊本地方貯金支局に関してはすでに伊藤重剛らによって報告書がまとめられているが、解体現場で判ったことについては触れられていないので補足していきたい。他の現況建築、設計図面に関しても分析を進め、報告していきたいと考えている。最終的には逓信建築における国際建築様式の導入過程に関して包括的な見解が出せるものと考えている。
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Causes of Carryover |
図面データ化およびデジタルデータ化は図面劣化対策で前倒しを行った。今後2年は建築現地調査・学会発表費80×5(千円)、報告書作成費用200(千円)などを想定している。
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