2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Civic Memorial Spaces in Post-War Japan
Project/Area Number |
17K06758
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
戸田 穣 昭和女子大学, 環境デザイン学部, 講師 (00588345)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦後建築 / 慰霊 / 記念 / 建築資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度には、昨年度資料整理・調査を行った結果をもとに『国立近現代建築資料館紀要』第2巻(2022)に「国立近現代建築資料館が所蔵する菊竹清訓設計の日本政府建立戦没者慰霊碑の図面群について」を資料紹介として寄稿した。本資料は、故菊竹清訓氏が設計した11基の慰霊碑のうち10基の図面群であり、資料点数は355点である。西太平洋戦没者の碑(パラオ共和国ペリリュー州、1985)の資料は含まれていなかった。慰霊碑ごとに資料点数についてはばらつきがある。政府建立慰霊碑11基以外にはフィリピン・クラーク地区における計画案が含まれているが、その実施については確認できていない。 また過年度において調査対象としていた相田武文氏設計東京都戦没者霊苑・硫黄島鎮魂の丘について、東京都公文書館において資料調査を行った。本計画以前の当該敷地の状況を示す資料などに基づいて、慰霊空間の再整理計画としての現計画の読み直しを進めた。 研究期間全体を通じては、従来、空間デザインの観点から考察されることの少なかった建築家のてがけた慰霊空間について、(1)主要な慰霊空間のリスト化と、(2)上項にもとづいた慰霊空間のデザイン上の類型化によって、一定の傾向を見だすことができた。本研究の重要性は、対象とする公的な慰霊空間の重要性によるものであるが、とくに日本政府ならびに東京都による戦没者慰霊にかかる公的な事業について、一次資料に基づいて慰霊空間の成立を具体的に明らかにしたことに意義が認められる。他方で、当初研究対象にあげていた個別事例については(コロナ禍という状況下において)管理者への聞き取りと刊行資料に基づいた調査にとどまったものもあり、国内外の遠隔地への現地調査、ならびにシンポジウムの開催については実施できなかったところもあり経費に未使用額が生じている。
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