2019 Fiscal Year Research-status Report
The role a model school in school architecture achieved after the war
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17K06762
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Research Institution | Kyoto Kacho University |
Principal Investigator |
川島 智生 京都華頂大学, 現代家政学部現代家政学科, 教授 (60534360)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 校舎 / 小学校 / 中学校 / 標準設計 / モダンデザイン / モデルスクール / 1950年代 / 文部省営繕組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多くの点で空白のままにある戦後の学校建築の全体像について、建築史学の観点からの解明をおこない、歴史的な位置付けを試みるものである。本年度は前年度に引き続いて、1950年代文部省の肝いりで各都道府県に建設されたモデルスクールをキーワードとして、その解析をおこなった。 調査としては文献調査と現地調査の2つを実施している。文献調査としては竣工年度別の全国のモデルスクールの正確なピックアップを行ない、現存の有無を確認した。また1950年代の建築専門雑誌や新聞等から校舎の拾出作業を実施した。さらに都道府県や市町村教育委員会施設課でのヒヤリング等の調査をおこなった。現地調査については、取毀しが迫っており、緊急性の高いものを中心に優先的に実施した。 具体的な内容としては、昭和23年~29年までに建設された文部省モデルスクールについて、全小学校・全中学校をピックアップし、現地調査・資料調査(設計図の収集)・設計者などへの聞取り調査を実施し、その建築的な解明をおこなった。その際の評価軸は成立経緯・建築特徴・標準設計・建設主体・地域との関係の5点を設定している。解体済の校舎では現存校と同様に現地に赴き調査を行なった。 現在全国の小中学校校舎は老朽化・耐震の問題もあり、十分な建築的解明がないまま次々と解体されている。また少子化による統廃合もあり、取毀しが加速されている。とりわけ築50年から60年が経過した1950年代から60年代にかけて建設された校舎は取毀しの嵐にある。そのような意味では実物の校舎建築を調査できる最後のチャンスであり、現地調査する意義は高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている点は次の4点が原因にある。 1点目は扱う範囲が全国の市町村に及ぶために、まとまった日数の現地調査ならびに文献調査が必要であるが、本務校での教育業務の多忙さなどが原因して、研究に費やす時間が十分にとれずに、その結果全体の計画に遅れが生じている。同様な理由で、海外での調査が一切実施できておらず、この点に関しては大幅に計画が遅れている。とりわけ2020年2月から3月にかけての海外調査が新型コロナウィルスの影響で実施できていない。 2点目はモデルスクールの校舎をすでに取毀した学校が多く、その際に設計図などの建築系資料が失われており、戦後の建築にもかかわらず詳細な内容が解明できないことである。 3点目は各学校ともに統廃合が進展しており、学校自体が消滅し、その時に資料が廃棄されたケースである。 4点目は該当校の管理者ならびに教育委員会に十分な協力が得られなかったケースである。戦後の無味乾燥化した簡素な鉄筋コンクリートの箱的な校舎に建築的な価値が求めにくいといったことが背景にある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度中に完成しなかった文献調査や聞取り調査を実施し、完成につとめる。年度別の全国のモデルスクールの正確なピックアップを行ない、現存の有無を確認する。モデルスクール以降の先駆的な校舎については、その特定ならびに建築内容把握のために、建築系雑誌や新聞、公文書などからの拾出作業を実施する。 戦後の鉄筋コンクリート造校舎の全体像を把握するため、都道府県や市町村教育委員会施設課でのヒヤリング等を行なう。同時に設計者でもあった都道府県・市町村営繕組織の建築技術者を拾い出す。とりわけ文部省営繕組織の元建築技術者や東大吉武研究室の門下生の建築学者や建築家を中心として調査をおこなう。 全国各地のモデルスクール等の先駆的校舎への現地調査に出向き、設計図と実物との比較をおこなう。現在取毀し中のものや取毀しが予定されているものについては、実物の校舎が存在するまでの間に現地調査を実施できる計画つくりをおこなう。取毀しが迫っており、緊急性の高いものについては優先的に現地調査をおこなう。既に取毀されて存在しない校舎については設計図や竣工写真に加えて、建設経緯を学校史や市町村史・市町村議事録・新聞記事などから収集する。設計者や施工者の特定をおこない、当事者やその遺族等の関係者に聞取調査を実施する。 この年度中に現存の有無を問わず、すべてのモデルスクールの現地調査を終える。日本の新制中学校のモデルの一つとなったイギリスのワーキングハム中学校 などの現地調査を実施して、比較検証をおこなう。 研究成果として、2019年度は2本の論文としてまとめたが、本年度は4本の論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
補助事業期間延長の申請をおこない、了承されている。以下そのふたつの理由をあげる。 [研究遂行に想定以上に時間を要したもの]モデルスクールが全国各地に点在するため、当初想定した以上に現地調査に手間取り、1年間延長をおこない、調査ができていない学校に対して、2020年度の実施する。 [渡航先の外国機関との再調整が必要となったもの] 具体的には2018年度はイギリス・ワーキングハム中学校など、2019年度はデンマーク・ムンケゴー小学校など海外の学校建築の現地調査を2年にわたって実施する計画であったが、対象校が改修工事や休暇中で責任者が不在などを理由に受け入れを困難としたため、1年間延長をおこない、2020年度の実施する予定である。
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Research Products
(2 results)