2018 Fiscal Year Research-status Report
酸化グラフェン界面還元過程の顕微観察下制御による新奇原子層物性の探索
Project/Area Number |
17K06769
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
藤川 安仁 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70312642)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グラフェン / 走査トンネル顕微鏡 / 光電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究においては,白金表面上の酸化グラフェン(GO)還元実験において,試料の回転速度制御などの方法により実験操作由来の炭素不純物を可能な限り減らす試みを行った上で,炭素を予めC60の蒸着により供給する試みを行った。その結果,C60の蒸着量が多い試料については,多層GO部の分解が周囲のエピタキシャルグラフェンの分解と連動するなどの現象が観察された上で,安定な還元酸化グラフェン(rGO)を960℃程度で得ることが出来た。しかし,C60の蒸着量が少ない試料については,多層GOの分解がより低い温度で観察された上で,GOの還元が完全に進まないまま周囲のエピタキシャルグラフェンより早く分解してしまう現象が観察された。上記の結果から,深く酸化が進んだGOを完全に還元するには,白金上に存在する炭素による置換反応が必須であることが判明した。また,平均的に炭素供給量が不足している試料表面上においても,炭素のパーティクルによって局所的に供給量が増加している部分についてはGOの還元が完全に進む上,折り重なった多層GOについても完全に還元が起こることが判明し,GOの還元により多層rGOを作成できる可能性が示唆された。 一方で,白金表面上におけるrGOの形成領域において,真空準位近傍で特異的な電子準位の形成が走査トンネル顕微鏡観察によって確認された。この結果は当該表面からの電界放出確率の増大や,白金の触媒活性の理解などにつながるものとして注目している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究において,GOの還元過程におけるGO/金属界面への炭素注入の重要性が示され,GO還元による良質なグラフェン/金属界面作成に関する指針が確立されるとともに,還元された酸化グラフェン領域において,特異的な電子物性の存在の可能性が示されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により,白金表面上に生成した酸化グラフェン由来の単層グラフェンにおいて,変調構造の存在を示すモアレパターンがSTMにより観察され,さらに界面に対する炭素の供給によってその還元過程の進行が左右されることが明らかとなってきた。今後は引き続きC60、ペンタセンなど研究代表者が研究経験を有している芳香族系分子性化合物を界面に対して炭素供給源として作用させる試みを強化し,還元されたグラフェンシートに対する炭素の補給によるネットワーク強度の強化,および基板の結晶方位と酸化グラフェンの結晶方位の関係をそのまま反映したエピタキシャルグラフェンと還元グラフェンの積層構造の作成などを試み,変調グラフェン構造の作成制御を進めていく予定である。さらに,本研究によって見出されたグラフェン・白金間に生じる真空準位近傍の電子状態についてもその生成メカニズムの解明に取り組んでいく。
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Research Products
(1 results)